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④運命は変わる


 学園には婚約者と顔を見合わせる行事がある。夜会と言う夜だけに集まる場を大人達が設けてくれるのだ。


 家が会わされば御の字。仲間が増えればいい。故に婚約者とのふれあいを強制するのが当たり前だ。そんな中で私は一人で「婚約者の居ない娘はどうすればいいか?」と言うと。


「こいつが俺の婚約者だ」


「口調をもう少し大人しく出来ませんこと?」


「仕方ないわ。そういう子よ。諦めましょう。ふーん……」


 婚約者を紹介してもらうのについていくのだ。あわよくば誰かを探す。そして……メモをする。私はそんな事をする。


「あっあの……リディアお嬢」


「なんだ? ちょっとは痩せたなおめぇ」


「あっはい」


 少し、オドオドしている恰幅のいい青年。太いのはよく食べている故に金持ちだろう事がうかがえる。いい体だ。


「いい婚約者じゃない」


「そう? 良かったな褒められて」


「あ、ああ」


「ちょっとはオドオド直ればいいのにな」


「それはだな、お前が……まぁいいよ。お二人方は?」


「トルです」


「ナナリです」


「俺の友達な、こいつはヴェル・プルナ。商家のもんだ」


「ああそれで……恰幅と衣装も金持ちそうなんですね」


「あまり、そこんところは気にしないで欲しいな。で、リディアお嬢が珍しく参加してるのは?」


「この二人に見せろ言われてさ。お二人に自慢しに来た。婚約者を」


「自慢できるほど僕は立派じゃ……」


「なぁに情けない事を、これからだろが、お前」


「まぁそうだけどな。見とけよリディア。これからだ」


「おう、見てる見てる」


 私にはわかる。古い仲だこの二人は、仲がいい。幼馴染み感が漂う。それに私はこの大きい太った体が何か鍛えてる匂いがする。わかるのは巨体を生かした何かをするのだろう。


「仲がいいけど……昔から?」


「おう、昔からな。武器商品を買うときにいつもここから買ってるんだ。幼馴染みとしてよくつるんだ」


「わ、わたくしよりも一歩も二歩も進んでますね」


 ナナリがショックを受けているが、私もショックだ。一番男に興味が無さそうな友達が一番進んでいるのだ。


「リディア……婚約者として思う所ないのですの?」


「別に、知らない仲じゃないし……こいつ。俺の事を女だと最近まで知らなかったらしいからな。逆に『おもしれぇ』と思ったよ」


「最低ですわね」


「最低ですね」


 ナナリと私はコソコソと婚約者を見ながら言う。


「待ってくれ。弁明を!! リディアお嬢様!!」


「ははは、いい顔。またな~俺、お腹減ってるの」


「ああ、リディア……はぁ」


「また、明日。遊びに行くから待ってろって」


「いや。そうじゃなくてフォローを頼むよ」


「わかってる。わかってる」


 私はわかる。全くフォローする気は無いこと。しかし、二人だけの関係性に憧れる私もいる。羨ましいとさえ思える仲の良さだ。


「いいですね。そういう幼馴染みって言うの」


「なかなか面白かったわ……」


「な、婚約者は変だったろ? 次はナナリ教えてよ」


「ああ、私……ですか。わかりました。ですが一言も喋らないでください」


 二人で頷く。きっとこれはあまり仲のいい感じではないのだろう。なので二人で遠くから眺めると言う結果になった。向かう先は多くの令嬢を侍らせている男で、人気者な事が伺い知れた。


 素直にナナリは令嬢の教育はしっかりしており、作法も悪くない。だが、相手を見ていると相手も作法で挨拶したあとにナナリを無視して他の子に話をする。これは妾を重要視しているだけの政略結婚のような気がする。


 大人の都合で決まった結婚のような感じだ。


「どうでしたか? あれがわたくしの婚約者です。名前は別にいいですわね」


「ああ、その。大変だなぁ……家が大きいと名前を偽装して。好きでもない奴と結婚して」


「リディア……それが普通ですわ。ですが……少しはわたくしを気にする素振りも見せて欲しいです……ええ、たとえ政略結婚でも……」


 確かにあれでは自尊心を傷付ける。だが私は仕方ない事だとも思う。


「ナナリ、私的にはああいう男に気に入られるのもあまり幸せとは言いきれませんよ。逆にナナリが気になった男と付き合えませんから。それに……私はナナリの綺麗な顔で興味を持たないのは損とも思います」


「ありがとう、あなた……本当に同級生かしら。お姉さんみたいね」


「えっと……精神年齢がちょっと変かもしれません」


 変どころか、異常である。なぜなら他人の人生経験も噛んでいるのだから。


「でも、自分で頭を撫でるのは子供ぽい」


「それは……いいじゃないですか。兄さんもお母さんも『出来て当たり前』て言ってたので褒めてくれるのがお父さんと私だけですの。妹は素直に空気を読んでくださいますのに」


「なるほど……でもトル。恥ずかしいから人前ではしないでね」


「全力でおでこ擦ってやりますわ」ゴシゴシ


 私は二人の前で頭を撫でる。二人はそれに苦笑いをするが、別に止めたりはしなかった。そして染々と拳を握る。


「これが青春ですわぁ~」


 実感できる私だけの学園生活に友達だ。


「なに? 青春したかったの?」


「なら、俺は決闘したいな」


「決闘なんて物騒な」


「おめぇ見てないからあれだろ? 一回見てみろよ……面白いぜ。競技化された決闘は」


「ナナリ、一見はしかずですから見てみればいいと思います」


「まぁ、そこまで言うなら見てあげない事はないわ」


 私も決闘はたまに見る。非常に面白い事は知っている。そんな事を思っていると一人の男性が声をかけてくる。


「君たち……婚約者の元へは行かないのかい?」


 優しい、いい声で令嬢達を侍らしている男性。これは令嬢があえて着いてきているのを見るに名家でも格が違うのだろう。ピリッとした表情をナナリが見せて私は察する。


「どちら様ですか?」


「ゼロ・ガルガンチュア」


「ガルガンチュア……王族。それも下院ではない上院側のですね」


 ナナリの反応を探るように聞く。彼から匂う。ナナリと同じ匂いを。


「下院上院と言う言い方は古いね。右院、左院のがいいと思うよ。今はあまり変わらないからね」


「王族ですよね……」


「ああ、王族家だ。右院側の王後継者でもあるね」


 なぜ、こんな場所に居るんだと私は怪しく感じる。嘘かもしれないので距離を置こうとし二人に私は離れる旨を伝える。


「トル、俺も行くよ」


「トル……私も行きます」


「あれ、君たち帰るの?」


「ごめんなさい。王族家とは確執があるのです」


「そうか……わかった。名前を聞いてもいいのかな?」


 私は首を振る。そしてそのまま逃げるようにその場を後にした。夜会の外で私はナナリに話を振る。


「ナナリは知ってたようだけど……もしかしてガルガンチュアの家。あなた」


「えっマジで?」


「それならどうするの。あなた王族と関わるの嫌なんでしょう?」


 正解らしい。だから匂いが似ていたのだ。


「婚約者がダメなだけです。ああ、彼もナナリの顔をチラッと見てたのでやはり同じ家なんですね。あれ……心配で声をかけただけですね。どうやら」


「腹違いの……兄よ。妾の子……私は正妻の子」


「それってあれか? くそ面倒な奴か?」


「男の子が生まれないのなら仕方ないです。男の子を正妻が生むつもりならあれですけど……」


「お母様はもう諦めた……と言うよりお父様が満足したのよ」


「まぁ、今更……後継者生んで問題を起こすよりいいんでしょうね。それよりも隠してない理由は……後継者だから? そしてあなたは『紹介してほしい』と寄ってくるのを嫌がったというところかしら?」


「いいえ……たぶん。あれは妾を探してる。お兄さまに婚約者は居る筈だから。わからないけど」


「よかった、逃げて来て。それよりも、気分がスッキリしないし……私の家に来る? 着替えも用意するわ」


「……でも、私は一応王族で」


「護衛はそこに居ますので……一緒にどうですか?」


「……気付いてましたか」


 一人、学園で使用人だろうと思っていた女性が顔を出す。名前はわからない。


「お泊まりでしたら私からお伝えしておきます。フランベルジュ家にお泊まりすると」


「いいのかしら?」


「はい、きっと大丈夫です」


 それはある意味で「要らない」と言われているような気もする。だけど……逆に自由が生まれる。


「ショックは受けないわ。わかった自由にする。トル、つまらないようなら帰るわよ」


「はい、ナナリお嬢様」


「へっ……強がって。俺も泊まるけど、なんかあんの?」


「歴史的な決闘の記録があるよ。リディアの家のも」


「えっまじで。兄貴のがある」


 使用人は私の顔を見て頭を下げ、姿を消す。そして私は笑みを溢してナナリと関わって行くことに決めた。そして、その夜。私は過ちを犯した。





「やったりますよ、そこ!!」


「兄貴!? なんでそこ狙わないんだ!!」


「もう寝ましょう……決闘の記録書は明日も見れますから」


「いや、いいところよ」


「ああ、これは面白いぜ」


 私は二人の夜更かしに付き合い、3人共に起きた時間はお昼過ぎになっていたのだった。






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