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⑳⑪ 家出


 旅行は早々と切り上げ、お兄さんと共に家に帰って来た。私は母親に挨拶を済ませてそのまま荷物をまとめる。元々一人で生きていける場所を確保しており。夏休み中に私は……私で一人立ちを覚悟した。


「あなた、何を準備しているの?」


「一人暮らしを予定してます」


 まだ赤子な妹を抱いた母親が部屋にやってくる。お兄さんも後ろに控えていた。


「一人暮らし? 唐突にどうして?」


「いい機会です。一人暮らしをしようと思います」


「……まぁ確かにいい機会です。でも大丈夫なの?」


「大丈夫でない理由を。男を誘うならこの家は嫌です」


「………もう。咲き乱れて……恥ずかしいわね」


「腕の妹を見て言ってください」


「これは仕方ないの。油断したら……ね?」


 私は荷物をまとめた鞄を数個用意する。出るのは家を見つけてからだ。もちろん、既に宛はある。


「……それでどこのお屋敷に行くの」


「ガルガンチュア家でメイドをします」


「ぶっ!? ま、まちなさい。王家じゃない!!」


「お友達の使用人になれました」


「そ、それはどうなの!? あなた!! ガルガンチュア家の王子と仲がいいそうだけど!!」


「そんなことないです。全然仲良くないです」

 

 そう、子供妊娠して子育てしながら愛を貯めていくほど仲良くはない。


「……嘘の顔じゃないわね」


「それよりもお兄さんを問いだした方がいいですよ。私の監視中にナナリと接触してましたから」


「………………本当に?」


 私は鬼の形相をする母親に満面の笑みで兄を売った。母親の危険を感じた兄は既に屋敷を脱出し、逃げており。母親は部屋を去る。そして、私はお願いしていた運送屋に部屋の物を出してもらい引っ越しの準備を進めるのだった。






 私はいつものメンバーにナナリだけいない状態で私は彼女らと会い報告する。


「家出しました」


「「ぶぅ!?」」


「自由恋愛史上主義なのに、王族以外なのが許せません。なので脱出です」


「おいおいおい……いきなり帰ろう言って次に家出だぁ!? どこに行くんだよ」


「ガルガンチュア家でメイドとして入ります。良くありますよね。花嫁修業で」


「え、いつの間に話したんだ?」


「一緒の部屋で私の体を売って」


「げほげほ……トルお姉さん!?」


「リリィちゃん。世の中綺麗事では無理なの。覚悟しなさい。処女を散らすその時を」


「お姉さん!?」


 二人は驚いた顔で見てくる。私はそれに笑みを浮かべて答える。


「私はドリアードの異端として処刑されるわ」


「ま、まってくれ!! いきなり帰ってそれは……ひえ」


「リディア姉貴……頭が追い付いてませんね。あのぉ、処刑って……」


「簡単に言えば『隠蔽ドリアード派』が刺客を送ってくる。情報を流して『魔法使いドリアード欲しい勢力』も来ると思う。私は『禁忌』を犯した。私は彼と結ばれるため『種族を裏切った』のよ」


「………そんなに重いことなんか?」


「重い。私たちは表へと出ないためにずっと潜んでた。故に今は種の危機と言えるわ」


「それは……ゼロ様は知ってるのか?」


「私は『繋がってる』からわかると思うわ。スッゴク頭を抑えてたけどね。いい気味よ。軽い気持ちで抱くからこうなる。『責任を取る』て重いのよ」


「………お姉さん。お姉さんはもう学園来れないのですか?」


「来れるわよ? 隠れない。私を殺そうとするなら一人になった所を狙うでしょうね」


 なので私は陽を歩く。女神の守護を、禁術を。


「………トル。俺に出来る事は?」


「一緒に居ること。狙いは私だけ」


「強制的に離そうとしたらわかるな。無理やり個人にして襲うのか?」


「ええ、そして……人質を取るかもね。また白昼堂々と攻めてもくるでしょう」


「………人質も?」


「クラスの同級生は皆が人質になりえる。だけど……見捨てるわ。全員殺されるまでの間に私はあなたたちを鍛える必要がある」


「いやぁ怖い怖い。なぁ……見分け方ってある?」


「簡単よ。雰囲気を読むの……ながれ。または魔力探知。ドリアードは根っ子の足から魔力を練り上げて頭から放出する」


「分かりやすいですね。頭が輝いたら怪しいんですね」


「そうそう」


「俺っちに見分けられるか?」


「かっこよく。『お前の正体わかってるぜ』と言えばいいんじゃないですか?」


「それカッケェなぁ~採用。ふふふ、俺は一目でわかる」


「「……」」


 私は「それはそれとして」と言い話を戻す。


「なので、今からゼロ様のおうちに行きます」


「来なくていい。迎えに来たぞ。メイド修行なぞ要らないだろうお前」


「あら、いつのまに? 腕を上げました?」


「そんな短時間で上がらない。杖としての役目が備わってるからか、トルの根の範囲内では一つ二つ上の魔法が即興で唱えられる。記憶を消すことさえ出来そうだ」


「精神を操る術が王家に『ある』と言うことですね」


「そうだろうね。人心掌握や、政敵排除も行って……来ただろうね。例えば……婚約者を操り、けしかける。トラウマと人間不審の出来上がりだ。反吐が出る」


「出ますけど。それをしなければ王にはなれない時代が多かったのでしょう。王が変われば全員抹殺です。王が憎ければ姫まで憎い」


「ああ、そうだな。君の種族のような滅亡……聞けばこの国ではない遠い国での出来事だろう。調べはついた」


「勝手に私の頭から抜き取らないでください」


「知を貰ってるだけだよ。で、二人は協力してくれるんだよね?」


「もちろんです。私も……その知を知りたいです」


「実をあげるわ。リディアは?」


「俺はぁ~強い奴と戦えるならそれでいい」


「ゼロ様、政敵倒してくれるんですって」


「暗殺者にする気かよ!? 俺は無理だぞ!!」


「ははははは、トル。二人の手を血塗れになんかするな。これは……家族の問題だ」


 私は後ろから肩に置かれる手に触れて頷く。


「そうですね」


 そして、笑みを溢してそのまま彼の手を掴み噛みつく。「つっ!」と言う彼の手から出る紅を唇に私は塗る。


「青い薔薇にはトゲがあるんですよ……王子」


「全くそうだな。本当に……手遅れだよ」


 ゼロ様は疲れた顔をしながら毒が回った表情を見せる。私は犯された。「愛欲」という毒が全身に回って……致命傷を負うのだ。






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