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⑳⑨山奥の荒事


 次の日、私はお兄さんと二人で密会する。


「すまないが私は君と約束しよう。『母上に報告をするのは仲がいい』と言う話だけにする」


「嘘は言ってませんわね。それよりもなんで……そんな融和な態度に?」


「ナナリお嬢と話した結果だよ。いつか第一学園来るときがあれば学園内を案内する約束をした」


「………お兄さん。雄しべが生えてます」


 「ブチィ」と男を立てて兄は頭から生えている触手のような枝を千切った。私はそれを見ながら納得する。


「何処に魅力を感じましたの? 驚愕ですわ。見た目ですの? 見た目だけですの? 見た目ですね」


「親友じゃないのかい? ひどい言われよう」


「親友だからこそ、中身に魅力があると思えませんわ。血ですか?」


「そんな事を言ったら君だってなんで彼なんだい? 血か?」


「いっぱい理由はあります。思った以上に愛を持って接してくれてます。体の相性はヤドリギドリアードなので合わせるのでしょうが合わせる必要がないほど相性が良かったです。また、逞しい体をしてまして。雄しべも立派ですわ。男としてはこれ以上ない上玉です。血筋も良く、良家でモテる理由は多岐に及びます」


「ぞっこんだね。なるほど、それならお断り難いね」


「ええ」


 それに襲ってやらかしたのは私の方だ。逆に私は魔法をいただいた。


「それに親友を薬漬けにするのは良くないだろう」


「良くないわけではないですわ。彼女が選んだ道ですわ」


「………副作用も含めてかい?」


「私が親友を操るために種子を植えるなんてしませんわ。それはつまらない事です」


「うーん。信じられないね。次から私が薬を用意しよう。詳しく伝えるために」


「そんな危ない薬なんて処方しましたっけ?」


 私は疑問に思う。危ない薬は一切作ってない。


「危ないのは過度に使用させて依存させる事だ。あげるだけではダメ。期間を決めないといけない」


「ああ、親友なら大丈夫ですわ」


「それがダメなんだよ。全く……しっかりしてそうでガサツなんだから。わかったね。あげる場合も管理しなくちゃ」


「はい、わかりました」


 私はそんなキツイお薬を出していない。しかし、それでも危ないと言うのだから私の知らない「知識」をお兄さんは受け継いでいるのだろう。たとえば深層心理の奥深くにこっそり媚薬毒を仕込み、私に慕うような作用を起こしているのかもしれない。母上は私に全てを「受け継かせていない」と察した。いい方法だ。優位に立てるのだから、母上が。


「私が、軽率でしたわ。確かに薬の効果は上部しか知りませんわ」


「毒素を抜く、副作用を弱くする薬も一緒に処方した方がいい。これをあげるよ」


 私はお兄さんから知恵の実を貰う。クルミのような実で私はそれを噛み砕き咀嚼して知識を貰って納得する。確かに私の薬は毒素を入れられるようになっていた。だが、なんとか大丈夫らしい。


「危ない薬は処方してないわ。知識もあんまり変わんないわね」


「良かった。ナナリお嬢を人形にするのはいけないからね。母上は思った以上に甘いんだね」


「………甘いですね。知識を与えすぎてる」


 何が理由があるのだろう。きっと、私が思う以上に。


「それよりも、お薬はナナリにお渡しになるんですの?」


「同じ物を用意するぐらいなら別に君でいいよね」


「……ナナリにはお兄さんが処方してください。気になるのでしょ」


「………」


「その縁、根を斬るには早いです。まぁあの令嬢を落とせるとは思いませんけどね。ふふふ、私からもお断りですよ」


 私は「面白いけど危ないなぁ」と思うのだった。





 何故か私は皆に気を使われて知らぬ間にゼロ様と二人きりになる。驚くほど皆が私たちをくっ付けようとする意思に唸ってしまう。部屋の畳が気持ちいい。


「別に……二人きりにならなくてもよろしいでしょうに。ゼロ様もそう思いませんか?」


「露骨だよなぁ。まぁ、そういうお気持ちは拾う事にしてるから問題ないけどね。で、お兄さんと何か?」


「少しナナリが気になるぐらいで、あんまり変化と言う変化はなかった。ナナリにしてはやさしい」


「そうだよなぁ。ナナリにしては怖いぐらいにおとなしい」


「噴火する前に休火山と言うのがあって……」


「ビビらせるなよ。同じ家に居るんだから」


「骨は拾ってあげるわ。安心して、子孫はいる」


「……………え?」


「いつ、実をつけるかは自由なのよ。気に入らない場合はそのまま捨てる。イカも実はそうなのよ。気にいらない場合はそのまま食べるのよ。あと少し短命になった私は。これも理由があるけど……まぁ気にしないでいいよ」


「短命って……」


「人と同じように死ぬだけよ」


「はぁ、ちょっと考えさせてくれ……」


 私はその頭を抱えて悩む姿に笑みを溢した。


「気にしなくていいのに……別に」


「いや、その……いきなり言われると……」


「実を結ぶのはずっと後だから安心してね」


「わ、わかった」


 私は机の饅頭を食べながら考える。


「秋頃、婚約者候補の試験どうするつもり?」


「ああ、えっと……どうしようか?」


「それはあなたが決めなさい」


「わかった。君が勝てる競技にするよ」


「負ける競技でいいですわ。妾で十分」


「そう言って本気でやるのが見えてる」


「……まぁ遊びです」


 ちょっとむず痒い時間が流れる。


「そういえばずっと見られてるのゼロは知ってる? 親衛隊の方々ですね」


「………………」


「良かったね。襲わなくて」


「すっごく悪意ある言い方だな」


「ここでは女性は最強よ。それも嫌々だったらね」


「……親衛隊は何を報告をするんだろうか?」


「さぁ」


 私はこのまま彼と付き合って「無事で居られるのだろうか」と思うのだった。


「ねぇ、親衛隊が『ずっと見ている』のは落ち着きませんね。ここはいい場所ですが、退屈ですね」


「トル、ああ。なるほど。でも俺はご褒美がないと乗らないぞ」


「………秘湯に行きたいです」


「乗った。秘湯だな」


「荷物は手提げです」


「用意する」


「現地で合流でいいですね」


「いいな」


「では、ドアを開けた瞬間で」


「Ok」


 私は準備をして、窓を開けて窓からゼロ様が駆け出す。本当に王家とは思えないやんちゃぶりに私は笑みを向ける。


「スケベめ」


 本当に男って生き物は。











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