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古木よき時代


 部屋に帰って来たとき、ゼロ様は唐突に妹の首を掴む。


「ナナリ、今から山賊の頭に挨拶行くぞ」


「……え、お兄様だけでいってくださいよ」


「後援者なんだ。挨拶しなくちゃいけない。わかるな? ゆう」


「わかりませんわ。ですが、顔は出します」


「ん、案外すんなりだな?」


「決闘士として活躍を聞いていましたもの。ご挨拶ぐらいはしなくてはいけませんね」


「……理由が家の事じゃないのがあれだがよかったよ。トルはどうする? 挨拶するか?」


「お兄様、それじゃまるでトルが『婚約者です』と紹介しに行くようなものじゃない……そうですけど」


「どっちでもいいよトル」


「婚約者じゃないです」


「それじゃぁ俺は君を襲った最悪な男になるけど?」


「そうですよね?」


「襲ったの君だよね? あの状況をこの石に封じている。わかるね?」


「それは脅しですわ。あの状況で魔法なんて唱えられない」


「では、確認しよう。皆さん『ご静聴』お願いします。音だけですがね」


「ま、まった。わかった。行けばいいんでしょ!! 知りませんよ……変なことになっても」


「トル、物分かりのいい子は好きだよ」


「くぅこの妹にこの兄ね」


「そうね。私はお兄様を『勘違い』していました。最近、凄く強い血の繋がりを感じるわ」


 私は脅される。弱味を知られ脅されるが、私はほとんど諦めに近い感情を持っている。では、何故……断りたいかと言うと。知り合いだからである。それもいい意味でない。悪い意味でだ。


「私は知りませんからね」


 そして、釘を刺しておく。





 山賊頭と言うが、ここの賊と言うのは国家を乱す者、不忠不孝の者、謀反人、他人の財物をぬすみとる。武器で危害を加える者であった。傭兵のような働き方から、平時では豊かな自然と野畑を護る者へと『知恵』を授けて変わり、いつしかここら一帯の貴族となった者だ。


 なので賊とは言うが。正直な所は観光名所の名前程度であり、既に賊らしい事をしていないただの一般人である。なお、参政権もあり。議席保有者でもある。


 だからこそ、ガルガンチュア家とは密接なのだ。私たちは山の上に設けられた社にダンゴムシ運搬で向かう。社の鳥居など観光地らしくお客でごった煮のように集まり、大きい神木の周りに集まり、そして近くにダンゴムシの像と騎乗用ダンゴムシが鎮座している。帰り用の騎乗用ダンゴムシと他の観光地へ向かうダンゴムシである。馬では流石に山々は厳しいのだ。餌として雑食なのもいいらしい。昔は死体を食わせてたらしい。


「じゃぁ、ナナリとトリと俺で挨拶行ってくるから」


 ゼロ様に導かれるまま。そして、そんな社の裏側の家に私たちはお邪魔する。木戸を叩き。要件を伝え……導かれたのは神を奉る社だ。そこに一人の女性が座り、悪意を向けて私を睨み付ける。殺意の満たされた場所に私たちは用意された座布団に座った。


「こんにちは山賊頭のグルーヴィーさん。ゼロ・ガルガンチュアです。若輩者ですが何卒……よろしくお願いします」


「こんにちはですわ。同じくナナリ・ガルガンチュアです。名のある拳闘士とお聞きしております」


「……」


 私は黙る。そして、そんな私に頭は睨んだ。


「くおおおおおおらあああああああ。てめぇ黙ってねぇで何か言え!! どの面下げて我々の前に顔を出した!! 言え!!」


「人違いです。トル・フランベルジュです。同胞者」


「同胞者あああああ!? お前らは敵だぁ!! お前らがしたことを我々は忘れない!!」


「いや、あの……その……えっと………………はい。忘れないでください」


 私は敵意の意味を知っているが、それは何とも彼らの自爆と言えばいいのだが。最初の最初の祖先は私たちの種族が確かに悪い事をしてるので沈黙する。


「くぅ、はぁ……はぁ」


 怒りを沈めて唇を噛む彼女に私は唇を結んで何も言わない。因縁深い種族同士、もうその溝は埋められない。呪詛を弾いた私にゼロ様が説明を求めた。彼は魔法で調べ、私に確認で聞いてくる。


「もしや、同じドリアードなのか?」


「流石、ガルガンチュア家の長男だ我の姿を見破るか。次世代も安泰だな。だが、こいつを紹介しに来たのなら『大反対』だ」


「それは何故ですか?」


「そやつは忌み子の子孫だからだ。我らが正当なドリアードの種族であってそやつは真似事の偽物だ」


「トル、彼女の言うことは真実なのか?」


「ええ、真似事なのも偽物『だった』事も確かです」


「だった? 彼女達と何が違うんだ?」


「彼女達は土に根を張るドリアードでした。私たちはその木に寄生するヤドリギが祖先です。時にドリアードが気に入った人間を取り入れていく中で私たちも少なからず影響を受けて、そして体を手にしました。そこで私たち祖先は人間に寄生を思いつきます。お気に入りの男たちを解放し、ドリアードに似せた姿で現れて人里に連れて行ってもらい。人間から必要な遺伝子を手にしました。胎生なのはその遺伝子が多くなって行ったからですね。昔は種子でした」


「じゃぁ、ドリアードは?」


「ドリアードが人里に現れたのは私たち祖先の雄がドリアードに捕まって木に入った結果、私たちと同じ子を生むようになったからです。後発なんですよ。それに地域密着型で遠くへ行けません。木が本体なので、根を下ろしたらそこで一生です。だいたいそこで地主や神様扱いになってます。また強い反ヤドリギドリアード派が多いのも特徴です。寝取られ、根取られたので」


「それで敵視してるのか……」


「また、私たちは密接に人間と関わっており。人間のために共生するため動きますが。彼女らは寄生ではないので色々と嫌われた歴史があったんです。私たちをバカにして邪魔したり、罵声浴びせたりで……人間から目の敵になったりもしました」


「……自業自得では?」


「言い分は『最初に寝取ったお前たちが悪い』と言いますので『正義は私たち』と思ってるんです。確かにヤドリギとして最初に寄生して、人間を寝取ってるのですけどね」


 私は説明をすると目の前の女性は座る。そのまま私を睨み付けて文句言い、ふんぞりかえる。


「せや、わいらはお前らの種族によって追いやられたんだ」


「そうですね。正直、『邪魔』だったのもあるんですよね。同種族だからこそ。人間の取り合いです」


「……なら、そのガルガンチュア家の長男を狙ってたんやな」


「狙われたのは私の方です」


「……お主らはいっつも雄が来るな」


「美麗、美声、美女。私たちはそういう進化をしてきたのでそうですね」


 彼女は大きくため息を吐き、腕を組んで悩んだ。


「なかなか我が一族もうまく取り入るべきなのじゃがなぁ……」


 私は鼻を掻く。正直、彼女たちは魅力的でないのだ。密着型ドリアードは『人間に寄生する必要がない』のが理由である。私たちヤドリギ族は人間の食文化があって初めて生きれるのだ。


「正直、地域密着型ドリアードは人間と仲良くせずとも生きられるのが強みでしょう? 私たちはもう人間に頼らないと子供さえ出来ませんからね。ドリアード同士で子を成せるのはやっと最近の事なんですよ」


「じゃが、お主らは世界中におるじゃろ?」


「人間が生活できる場所だけです。ヤドリギだけドリアードも結局、人間の居ない場所で生活は無理なんですよ。生殖が味気なくなること。そして私たちはやはりヤドリギなんですよ」


 私は頭の彼女とあれこれ愚痴を言い合う。話し込み、時間を見てゼロ様が手を叩きお開きになった。時刻はもう遅く。私たちは帰る支度をする。


「……ふむ。せっかくじゃ。宿まで送ってやろう。ガルガンチュア家の当主もたまに顔出せ言っておけよ」


「ありがとうございます。伝えておきます」


 彼女が扇を出し、複雑な魔法を唱えて私たちを宿に送る。方法は木の根の竜脈の流れに体を入れてそこから追い出す方法であり、私は気が付いたら宿の前にいた。これだけの事を簡単にやってのけるのが土地密着型ドリアードの強さだ。


「ふぅ、夕飯ですね」


「トル、あなたあれだけ喰ってまだ食べるの?」


「私たちは燃費が悪いんです」


「本当に飯喰い虫ね」


「飯喰い木ですけどね。人間側に寄生した理由ですよ。不労飯です」


「お兄様、この開き直った令嬢。燃やしません?」


「すまない、既に彼女には王家の庇護がある」


「お兄様!? それはやって行けませんわ!! 強くなってしまいます!! 私はそれでも彼女に勝ててないのに何してくれますの!!」


「あら、私は強いんですか? ふふふ」


「安心してくれ。俺には絶対服従らしいから」


「私はもしかして、弱体化されてませんこと?」


「お兄様、トル無力化して。私が勝てるように」


「後でね」


「ぶっ飛ばすわよ、ナナリ」


 ヤケクソの私に怖い物はあんまりない。あんまり。













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