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試験後


 なんとか試験を終えたクラスの雰囲気は既に夏休みへの話で持ち切りだった。婚約者と友達と……色んなグループがある中で領地持ちや観光業に精通している令嬢が有利になる世界。私たちは2分化し議論していた。もちろん令嬢たちがパンフレットを持ってくる。


 そのパンフレットを持ちながら私達は海側と山側で争う。海側はリディアとナナリ。リリィと私は山側だ。


「海側の良さは何と言ってもガルガンチュアの商用浜辺ですわ。繁盛した海の賑やかさとレジャースポーツが面白いですわ。それに泳げますし、私が別荘を用意します。山側なんて暑くて敵わないわ」


 ナナリが良いところを上げる。それにリリィが思いつく良いところはと言うと。


「魔法で希少なキノコ……格安で手に入る。あと海は日差しがキツいです」


 ナナリはそれに反論。


「日焼け止めの魔法がありますわ。それに海の幸がありますわね。釣りもいいですわ」


 リリィは私の服を掴む。頼みますと言うように……そんなに欲しいかマツタケが。


「山にも旬の物がございます。また、美味しい料理をご用意出来ますわ。お肉、野菜等々。また泳ぐなら川、地熱で暖められた温泉地もございます。避暑地として有名な場所です。それ以外にも出店もあり……宿もある場所なのでそんな悪い事はないですよ。あとはアユが旬ですね」


「ま、マツタケも『魔法使いマツタケ使わず』って言うぐらいに美味しんだから」


「あらら、旬は後半のマツタケ?」


 そう、変な話でマツタケが今は取れているのだ。


「実はね。夏マツタケと言うのがございまして……今年は珍しく豊作でたくさん成っているらしいです。成熟するマツタケが既にたくさん取れているという事ですね。逆に変な現象です。もっと後半にならないといけないのに……変ですね」


「今年の夏は涼しいからなのかなぁ?」


 多くの魔法使いはそう考えている。あと、ことわざの魔法使いが使わない理由は美味しいため、魔法の材料にするには勿体ないと言う事だからだ。誘惑する媚薬の原料、食材を美味しくする調味料的な薬になる。


「異常事態ですが。逆に今は安く食べられるチャンスなんです」


「ですです」


 ナナリが腕を組み「ぐぬぬ」と言う。リディアは何も言わず上の空で何かを考えていた。なので私は……ずっと静観しているゼロ様に問う。


「山と海どちらがいいですか?」


「山。海は人が多く護衛がしにくい。ガルガンチュア家としては護衛のしやすい山がいい。ただ、死体を隠すなら両方いい方法があるし、山は分断されやすい。一長一短だ」


「護衛を雇いますか?」


「たぶん、雇われる。行かないが一番だが……俺は既に父親に許しを得ている。『妹と二人でどっかに行け』とな」


 その話にナナリは首を傾げる。どうやら珍しい反応のようだ。


「あらあら、邪険に扱いますの? お父様は」


「静かに奥様と一緒にいるそうだ。ちょっと怖いよね。あんなにも興味なかったのに」


 「母親と父親が一緒に」と言うのは珍しいのだろうか。私の家では気をつけないとすぐトラウマな事件が起きるだろう。私は見たくない母上が父上の上に乗ってる所なんて。


「そういえば、トル君のお兄さんは何処かへ行くのかい?」


「誘われているようで、海に行くそうです」


 知っているのは令嬢たちに誘われてほいほいついていっている。ゼロ様のように逃げずに受け止めているからお兄さんは女好きなんだろう。ドリアードらしい人好きだ。


「ついて行かないのか?」


「行きません。第一王立学園の令嬢なんかと話は合いませんわ。きっとね」


 嘘である。第一王立学園でもこちらよりも綺麗な人は多いし、性格も優しい人も居る。お兄さんはそういう令嬢と遊びに行き恋愛をするんだ。「悔しいので見たくない」と言うのが本音である。令嬢たちなんて嘘で本命がいるはずだ。


「そっか、なら山がいいんじゃないか? 令嬢だけで行くのは感心しないのでついていくけどね」


「ゼロ様……家の柱に結んでさしあげますわ」


「残念だけどそんな趣味はない。それとも家に来てくれるのかい?」


 魔力の火花がバチと音を立てながら輝く。


「一回君と……私……いや、俺で魔法の決闘してみたいね」


「全勝ですわ。こちらは積み重なった年輪が違いますもの」


「では、挑戦者として挑むのか。俺はそれはそれで好きだよ」


 ガルガンチュア家のこの戦いが好きな遺伝はしっかりと彼に引き継がれてる。気を付けないと強者に挑戦し続けて死ぬぐらいに戦好きだ。


「ゼロ様、気を付けてください。その向上心から多くのガルガンチュアの親族が死んだと言うことを」


「肝に命じるよ。ありがとう、心配してくれて」


「ナナリにも注意はしていることですので」


 私はそっぽ向く。向いた先でナナリとリディアとリリィがじっくりと肩を並べて見ていた。


「なによ」


「お兄さんと仲いいね」


「つぅう!!」


 私は「逃げよう」と考えを読まれる。ダメだ、この3人面白がってる。ゼロはそのまま椅子を用意し私の前に座る。私は狙われており、拘束魔力3人分は厄介で解けるまで時間がかかる。


「君たち、彼女に聞きたい事を言えば俺が質問するが?」


「では、お兄さん。トルはお兄さんのことをどう思ってるか聞いてください」


「俺の事はどう思ってる?」


「私に自害を迫ってる人……くぅ」


「あらあら、お兄さん好感度最悪ですわね。ほーほほ」


「好感度最悪なら睨み付けてもいいと思うけどなぁ……顔を向けないのは恥ずかしいから?」


「わかりました。顔を真っ直ぐ見てやりましょう!!」


 私は顔を背けず睨み付ける。いい顔しやがって。このイケメンめ。


「……ごめん、俺がダメだったわ。トル、やっぱ綺麗な顔してるぞ」


 そう言いながら顔を背ける。勝った気持ちより余計に恥ずかしくなる。このイケメンをここで叩き割りたい。


「そ、それはそうです。ドリアードはその年で一番モテそうな顔に変わりますので」


「俺に合わせてくれたの?」


「ち、違います。普遍的な皆が思う綺麗な女性。男性版です!!」


「そうなのか? なら、他の男性にも綺麗と言われるんじゃないか? なんで照れたんだよ?」


「ああああああああああああ。あなたのその反応が苛つきますぅうううううう。鈍感!! ゼロの反応が初々しいから恥ずかしくなるんです!! わかれくそバカ!!」


「おお、おう……」


 ゼロが少し、バツが悪そうに鼻を掻く。そして、その頬にナナリがビンタする。私も含め全員が『え?』と言う言葉を溢した。


「妹よ、なんで?」


「むず痒いから落ち着くために叩いたのですわ。いつの間に仲良くなってますの!! 呼び捨てですし!! 知りませんでしたわそういえば!!」


「あっそっか……呼び捨てされたね」


 叩かれた頬を撫でながら、ゼロはニコニコする。


「あああああああああ、お兄さんが初々しくて共感性羞恥心で苦しいですわ!! ああああああ」


「……助けてリディア。リリィちゃん」


「お姉ちゃん……ごめん。私、ちょっとワクワクしてる」


「お、俺は大丈夫。いやぁ暑いわ……ちょっと脱いでいいか?」


「あっ、拘束解けた」


 私は自由になった手で拳を作る。もちろん3人に向けて見せながら。


「リリィちゃん、リディア、ナナリ」


「よし、リリィ逃げるぞ」


「わ、私は……大丈夫ですよね?」


「リリィはお尻叩きの刑。生で」


「ひぅ!?」


 3人は勢いよく教室を抜け出して走り出し、私は追いかける。足の根っ子が地面を擦り熱と燃えたような臭いを出しながら追いかける。


「ちょっと!? トル!? あなた何処にそんな力を!?」


「怒りパワー100%です!!」


 獣狩りのお時間だ。







「俺だけ残ったけど、どうしよう……」


「あのぉガルガンチュア様」


「ああ、君が護衛役の使用人」


「お嬢様を山に誘導ありがとうございました。嘘で海に旅行と言いふらします」


「うん、ありがとう。シャドウちゃん」


 今日もやっぱり、彼女たちは面白い。本当に……面白い。


「それと、なんでこんなところに居るのですか?」


「……匿ってくれ」


「……………すぅ……はぁ……ゼロ様がここに逃げ込んでるぅううううううう」


「シャドウ!? お前もか!?」



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