広報
あの騒動から数日後。私は学園に一冊の本を持ってくる。内容は『学園の闇』と言うタイトルと共に暴露された様々な情報が入っていた。それを茶会でお披露目する。
私は彼等の暴行だけをお願いしていたが。どうやら、あれやこれやと情報を持っていたらしく。それを全て暴露した感じらしい。慌てた学園がそれは嘘であると公式見解を示すがガルガンチュア家の令嬢は確かに病院に行った事と、当主の耳に入っている事で事態は大事として広まった。それが事実であり、あれやこれや。嘘も全てが証明書付きになってしまう。
そして面白い事にガルガンチュア家の令嬢は妬まれて苛められている。ゼロ・ガルガンチュアは苛められて第二王立学園に編入になったなど。全く事実と異なる噂まで広まって行った。王家親衛隊にも飛び火し、話が大変な事になる。
当事者はその嘘、噂に呆れるが所詮はこんなものである。問題は……噂の加害者側である。ナナリはそれを聞き続ける。リディアとリリィは興味を持たずトランプで遊んでいた。二人だけでポーカーを嗜む。
「トル、その本の内容本当? 脅して部屋に連れ込んでとか……お金で苛めたとか」
「本当でしょう。数十人で集まって数の力で苛めて問題になったでしょうね。元々そう言う世界です。思想、考えの違いで忌み嫌い、戦い、先導する。空気が読めない者を排除し、手段を選ばないとこうなります」
「こわいわねぇ力って。殴られたら一発で恐くなって縮んじゃう」
「おうおう、なんか戯れ言を言ってるなぁ。ナナリが」
「わ、私から見れば……姉貴さんもお姉さんもお姉さまも全員が……その……こ、恐いです。睨まないでください。魔法で吹き飛ばしますよ」
「おっ、言うじゃん。偉いぞ~」
「わ、私の価値観がおかしくなってしまいます……」
本当にこのクラスはおかしい。まぁ、今は皆が勉強に明け暮れて期末試験に向けて努力している。あれ、待てよ。
「リディア……期末試験大丈夫?」
「…………」
「リディア?」
「…………」
私はナナリとリリィにアイコンタクトを取った。3人でトライアングルの囲いが出来る。
「お、お前ら。囲むなよ!!」
「リディア……今から、これから勉強会します」
「お、おれ別に成績悪くても」
「わたくしの友達がそんな成績では恥ずかしいですわ」
「姉貴さん……教えるから頑張ろう?」
「皆、追試と補習が夏休み削るの知らなすぎ」
「いやあああああああああああ。頼む!! 助けてくれ!!」
私たちはクスクスと笑いながら、彼女に勉強を教える事になるのだった。なお、テストの内容は既に私には分かっていた。過去のお母さんの記憶から推測し、テストのパターンさえ覚えがある。きっと大丈夫と信じている。
*
「ゼロ様も勉強に参加するとは思いませんでした」
「『素晴らしい先生が居る』と聞いていてね。よろしく、先生」
「ナナリに聞いたのですね。わかりました……私の知恵の実あげるので帰ってください」
「そんなズルはしたくないけど。興味ある。美味しい?」
「うっ。あげるのもちょっと何でしょうか……嫌になりました」
茶会とは別に空き個室を先生にお願いし借りて勉強会を行う。先生も流石に勉強に使うのならとすぐに鍵を貸してくれた。もちろん、鍵はただの使用するための証拠である。魔法で開けられるが、一応と言うことだ。とにかく今は勉強が大切だ。リディアの理解度を知り、ゆっくりと難しさを上げる方式にした。
流石にギリギリの学力はあるので教えは難しくない。記憶力が乏しいだけであり、その記憶力を良くすればいいので。薬で無理矢理覚醒させる。
「おえ、まずぅ。苦いぃ」
「私の根っ子を粉にした薬ですからね」
「本当に万能薬ね。あなたの体」
「ですから。殺されやすいんです。知ってる方にとっては生きたマンドラゴラです。きゃ~」
「犬、嫌いそうね」
「大丈夫ですけどね」
犬をマンドラゴラの匂いのついた玩具で遊ばせて、マンドラゴラを抜かせて、マンドラゴラの叫びで絶命する身代わりとするのは良くある方法だ。ただ今は可哀想と言うことで耳栓と魔法で防御して引き抜くのが基本である。
「姉貴さん、覚えが早いですね」
「本当に薬すげぇ……これは癖になる」
効果がしっかりと効いてくれてるので私たちは楽が出来た。リディアはリリィに任せ、私はナナリと問題を解き合う。ゼロ様も同様に解きながら私は思う。
「ゼロ様、友達居ないんです?」
「……残念ながらまだ」
「お兄さま、私に出来てなんで出来ないのですか?」
「いや、なんか。恐れが多いと思われてる。近付くと離れるんだ」
「おっ、俺の婚約者呼んでみようか? 紹介するぜ」
リディアが立ち上がり駆け出す。私は勉強中でしょと廊下に叫ぶが……彼女の姿はもうない。
「……私はまだ何も言ってないのに」
「リディアはあんな子なんです。自慢したいんでしょ婚約者を」
数分後、リディアが帰って来た。そして、ぜぇはぁと息を荒らげる彼の婚約者が顔を出す。
「実はこいつもボッチでさ。『ちょうどいいか』と思ったんだ」
「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ」
汗をハンカチで拭き。デカイ体を落ちつかせて頭を下げる。べつにボッチと言うわけではないだろう彼を無理やり連れてきたのだろう。
「はぁはぁ、ヴェル・プルナです。こんにちは」
「ゼロ・ガルガンチュアだ。こんにちは……大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です。走るのが苦手なんですよ。体がデカクて……」
体型的に確かに走るのは不得意だろう。だが、それは走るのが苦手なだけだ。リディアからは武芸に秀でていると聞いている。あの、リディアが褒めているのだ。相当なやり手なのだろう。
「でも、走れてるね」
「まぁ、鍛えてますから。落ち着きました。リディアお嬢様が迷惑しかかけてません。すいません」
「迷惑かけてねぇよ!!」
リディアが彼のお腹をベシベシと殴る。しかし、彼は痛みがらずに笑顔を見せた。余裕の表情にナナリが反応する。
「私も殴っていい? 気になるのよねぇ……何かその体が」
「やめないかナナリ。ごめん、こんな妹で」
「はははは、リディアお嬢様のお友達らしいですねぇ。そんな事より僕にも勉強教えてほしいなぁ。それで一発……お腹にどうぞ」
ニタニタした余裕の笑いにナナリは不敵な笑みで返す。この何とも言えない武道派連中の勉強会に新たな仲間が増える。そして……彼が避けられた理由を私は聞く。友達いないのが不思議でしょうがない。
「なんで友達出来なかったんですか?」
「男グループにまじらなかった事と、同じ商家のライバルの影響力です。干されたんです。まぁ、裏で繋がってますけどね」
「男グループって渦中の男たちですか?」
「そそ、今の事件の関係者。いやぁあいつらが罰を受けるのは飯がうまいうまい」
なるほど、私が思うよりもっと大きいグループだったのだろう。そして何となく察する事もあった。
「ナナリの婚約者が裏に手を回して同じ商家のライバルの縁を破壊しに来てるのかも」
「でしょうね。わたくしもそう思うわ~そういえばあの婚約者どうなったんでしょ?」
「ああ、僕は知ってますよ。お休み中らしいですね」
「なるほどねぇ。わたくし、お見舞いに行きますわ」
「「「……」」」
私はゼロ様とリリィ、リディアと共に肩を落とし、首を振る。
「皆さんも来るでしょう?」
「「「行かない」」」
「ご、ごめんなさい……行きません、お姉さま」
「……リリィまで。わかった。一人で行ってきまーす」
ナナリが帰宅準備をし私たちは止めず。婚約者に同情する。
「ゼロ様、どう思います?」
「うん、止めを刺しに行ったかな」
「ですよねぇ~」
私はゼロ様と同じ意見であり考えないようにするのだった。
「「殺される!?」」
そして私達は彼女を捕まえる。最悪な結果にならないように考えての行動でゼロ様と結託した。
*
俺は婚約者に声をかける。帰宅する家が近いからこそ一緒に帰れる。
「なぁ、今日はありがとうな。無理矢理付き合わせてさ」
「いいよ。べつに……それよりも……ずっと『俺』って言うの?」
「あん? そりゃ……言うよ。忘れたりしねぇ。絶対に」
「そうだな。忘れたりできないよな」
「ああ、絶対に俺は忘れるもんか……お兄ちゃんの事を……」
婚約者は大きい手で私の頭を撫でる。撫でながら、懐かしく苦しい想いになり。「恥ずかしいからやめろ」と照れ隠しを装って手を叩く。
そう、手を叩く。自分を叩くように。思い出を叩き出すように。




