領主は大変だよ
北聖領にて
白狼様が山を破壊してから数日経過した。
地下ダンジョン内に取り残されていた人達の救出は無事終えた。
S級、A級冒険者達には、引き続きダンジョン奥地にて魔獣討伐に専念してもらう。
魔獣は魔素に満たされているダンジョン内で次々と生まれてくるので、放置していたら増殖し続ける。
外に溢れ出てきてしまわないよう、数を減らし続けないといけない。
騎士団員、冒険者の中で身体強化を使える者は、崩落したダンジョン入口の岩を運び出す作業をしてもらう。
しかし、地下ダンジョンの岩盤には魔素が多量に含まれており、普通の岩の数十倍頑丈で重い。屈強な者達でも苦労している。
何でそんなに頑丈なものを壊したのだろう。あの聖獣は馬鹿なのか。
その馬鹿な聖獣こと白狼様には、ひたすらなぎ倒した木々を運ばせている。
大きな姿で運ばせる予定だったが、酔って暴れた時に多量の聖気を使ってしまったらしく、精々三メートル程にしかなれないそうだ。
それも短時間しか持たないと言うではないか。
使えないにも程があるが、いないよりはマシなので、とにかくコキ使うことにする。
運ばせた木は加工し、他領に売る。
木を運び終えたところは、地面を整え新たに木を植える予定だ。
山頂はまず地割れと陥没をどうにかしないといけない。ここは山で一番聖なる気に満ちている場所なので、早く整えて薬草を育てたい。
採れなくなった薬草は他領から仕入れ、薬士にポーションに加工してもらっている。
冒険者が少なくなり需要が減った分は、こちらで買い取っている。
売り上げが落ちた武器店には、木を切り出す道具や岩を運びだす道具、農具などを作ってもらい、こちらで買い取る。
薬草や山菜の採取で生計を立てていた者達には、田畑を与えた。もちろん生計が成り立つようになるまでは援助が必要だ。
さて、白狼様は働いているだろうか。
日向ぼっこが必要だと言いすぐにサボり、気づいたら昼寝をしていて、目の前を蝶々が通り過ぎたら夢中で追いかけだしたりする。
なんだあれは。ただの犬ではないか。
私はストレスと怒りで地割れを増やしてしまうことがしばしば。そして、自分で修復している日々。
いないよりはマシだと思っていたが、あの犬は必要ない気がする。
領地の復興作業はまだまだ続く。