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82話 ルーク一行、闘技場へ




―――ノア 「カイルの宿」  8:00



「カイル様は確かに宿泊されておりますが、昨晩から帰っておりません」


「そうですか……。わかりました。少し待たせて下さい」


「はい。ゆっくりして行って下さい」



 早朝に目を覚ました俺はロイとの約束の時間よりも早く行動に移した。


 なんとも言えない不安が心を渦巻き、何も手につかなかったからだ。


「ロイ先生、アランはどうなりましたか?」


「ああ。ダンジョン内での『殺人』は一切認めていない。街中での殺人と殺人未遂。ギルド訓練場での殺人未遂については、証拠や目撃証言があるので、問題はないが、やはりダンジョン内での事は罪に問うのは難しいだろう……」


「そうですか……。アンやジャック、……カイルはどうなりそうですか?」


「今のままであれば、憲兵が動く事はない」


「そうですか……」


 無表情ながら、ロイは白藍しらあいの瞳を輝かせる。


「ただ、『かなり信用できる者達』から、カイル・アレンドロが複数の罪を犯しているとの情報もある。私、個人的にではあるが、監視は進めていくつもりだ」


「カイル、どこに消えたんでしょうか……?」


 ロイは俺の問いかけに、フルフルと首を振った。


(ダンジョンに潜っているのか……? アランが捕まった事で『カタル』に向かったのかもしれない)


 俺が思考を進めるが、一向にカイルは戻って来ない。


(どこにいるんだよ? カイル……)


 何かに追われるような感覚が俺を包み込む。それ相応の覚悟を持ち、宿に来た。すぐに会えると思っていただけに、時間を追うごとに緊張感が高まる。



「ルーク様。外の空気でも吸いにいきましょう」


「そうだよ! ずっとここにいても仕方ないよ!」


 ルシファーとアシュリーの言葉にロイに視線を移すと、


「そうだな。朝食は済ませたのか? よければ、私がご馳走しよう」


 と席を立ち入り口へと向かって行く。


「マスター。ロイって人はずっと怒ってるのかな?」


 アシュリーは俺の服の裾を摘み小声で呟く。いつもとあまり変わらないアシュリーに少しホッとしながらも、(初めて会った時は、俺もそう思ったなぁー)と何だか懐かしい気持ちになった。


「ロイ先生は、無表情に見えるけど、よく見ればちゃんと表情が動いているよ? 全然、怒ってないから大丈夫!!」


「……ルーク様の観察眼でもない限り、『豹人』の表情を察する事などできませんよ?」


「『ロイさん』でいいと思う!! 俺の格闘術の先生だから仲良くするんだよ?」


「「……はい」」


 入り口に立っているロイが声を上げる。


「何をしている。早く行くぞ!!」


「あっ。ごめんなさい!!」


 慌てて駆け寄ると、ロイの頬が少し赤らんでいる事に気づく。


(どうしたんだろう?)


 と首を傾げるが、何だか少し照れているように見えて、失礼かもしれないけど、可愛いと思ってしまった。



 宿の様子が見えるところの店に入ると、店内はざわつき始める。



「ロイ様だ……。本日も麗しい……」

「誰だ? あの3人……」

「まさか『男』なのか!?」

「もしかして、あの男の前ではロイ様も笑顔を……?」



 確かに、ロイだけがフードを被っていないため、やけに人目につく。もちろん憲兵団、団長として、顔が広まっているのだろうけど……。その原因は整った容姿にもあるような気もする。


 ロイは全く気にする事なく、食事を注文しており、


(確かにかっこよくて、とっても綺麗だし、慣れてるのかな?)


 と思っていると、また微かに照れているような表情に、思わず笑みを溢し、少し軽くなった心に感謝しながらも、窓からカイルの宿を見つめた。




―――




 太陽は高い位置に昇っている。


 カイルは一向に宿に戻る気配はなく、俺達はギルドや「月光の宴」などにも情報を求めたが、カイルは来ていないようだったが、思わず首を傾げたくなる話を耳に挟んだ。



「冒険者vs闘技者」



 街中はその話で溢れていた。


「一体、どっちが強ぇんだ!!??」

「冒険者の方が格上だろ? どうせ、『二刀流』の圧勝だ!」

「キラってヤツは相当な物らしいぞ?」

「こんな好カード、見ないと一生後悔するぜ!!」



 最短記録でSランク冒険者になった『二刀流』のカイルと、S級闘技者、序列3位、『飛斬撃』のキラという闘技者が、今夜闘技場にて激突するという物だ。


(何でカイルが闘技場に……?)


 カイルは冒険者である事にこだわりを持っていた。どういう意図があるのかはわからないが、その事に違和感を抱く。


 俺は戦闘の参考にしようと何度か足を運んだ事があるが、自分こそが至高であるという自負を持つカイルは、他者など全く気にしないはずなのだ。


 首を傾げながらも、この対戦カードに沸き立つ街の人達の気持ちもわからなくはない。


 一対一の強者同士の対決に需要があるのはよくわかるし、自分の『力』一つで駆け上がるなんて、なかなかロマンがある。


 ルシファーは首を傾げながら口を開く。


「ルーク様。闘技場と言うのは……?」


「あそこに見える大きな建物だよ。知性ある人達が、『力』を競い合い、高め合う場所」


「あそこにカイル・アレンドロが……?」


「みたいだね……」


 遠くに聳える闘技場を見つめ、深く息を吐きながら、腰に装備していた「村正宗」をグッと握る。


 聞いた話では、キラもかなりの短時間で『序列』を駆け上がった強者のようだ。不思議な感覚だが、自分が闘うわけでもないのに少しばかり緊張する。


「マスター。今日はやめておくの?」


「いや、行ってみよう。試合が終われば、ゆっくり話しをする時間もあるかもしれないし」



 俺の脳内にはカイルの姿が現れる。


「ルーク! ボサボサするな! 行くぞ?」


 それは「追放」された時の記憶ではなく、余裕綽々の笑みを浮かべ、自信満々に歩みを進める、俺に対して『演技』をしているカイルの姿だった。


 ルシファーとアシュリーはそっと俺の手を取る。2人を確認すると、やっぱり綺麗に笑っていたので俺もつられて笑みを溢した。


「……行こうか!」


「はい!」

「うん!」


 2人の笑顔を確認し、ロイに視線を向けると、コクンッと頷いてくれた。



 俺達はゆっくりと闘技場へと歩き始めた。


 

 


次話「カイル、闘技場に立つ」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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― 新着の感想 ―
[一言] 頭お花畑が満開で、力も得て、美女も得て、なーんも考えてなさそうで羨ましいな
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