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80話 久しぶりの我が家



―――ノア サウス通り 西門周辺 0:15



 久しぶりの我が家を前に、バクバクと心臓が落ち着かない。


(い、いざ帰ってくると、こんな可愛い女の子2人が俺の家で暮らすんだなぁ……)


 受付嬢のラミルや看板娘のターナは、


「私が1人で寂しいので一緒に食事しませんか?」


 などと、おそらく1人で寂しい俺を気遣ってか、よく遊びに来てくれていたが、「ただ2人と一緒に居たい」という理由で、連れ帰ってしまった……。



「こ、ここなんだけど、どうかな? 見た目はあんまり良くないけど、中は綺麗にしてあるからさ」


 2人は我が家を見つめて固まっている。


(ボ、ボロくてごめんね!! でも、中は綺麗なんだよ? お風呂なんて、この外観からは想像できないくらいデカイんだよ!!)


 心の中で必死に我が家の魅力を伝えるが、2人は未だ固まったままだ。徐々に不安が襲ってくる。




―――


 

 ルシファーは目の前の建物にひどく感動していた。


(なんて神々しい住宅……。遠くからでも一目瞭然の神聖魔力の塊……。こんな家に自分が住まう事ができるなんて……)


 心の中で呟きながら、アシュリーに同情すると同時に嬉々とする。


(アシュリーにはこの家は相当な負担なはず。これはルーク様との2人きりでの生活ができるはずだわ!!)


 ここはもうダンジョンではない。ルークの寵愛を半ば確信しながら、唇を噛み締め、甘い生活への期待に胸を高鳴らせた。


「ルーク様!! なんて素敵なお宅なのでしょう!!!! 私、……私、心から感動致しました!!!!」


「よかった!! しばらく黙ってたから気に入って貰えなかったのかと思ったよ。ここは父さん達が残してくれたお金で買った家で、とても大事な場所だからね!」


「素晴らしいです!!」


 ルークはルシファーの屈託のない笑顔に心から安堵しながら、


(……アシュリーはどうしたんだろう? とっても難しい顔してるけど……)


 と未だ苦い顔をしているアシュリーの様子を伺った。




 アシュリーはかなり不味い状況になっている事に少し泣きそうになっていた。


(うぅ……。ただでさえ、ルシファーの方がマスターに好かれてるようにみえるのに、こんなのあんまりだよ……)


 いま目の前にある家は明らかに自分に『毒』である。ただでさえルークと居るだけでも身体に負荷がかかっているのだ。


 目の前の建物はルークとの共同生活ができない事を示している。


「アシュリー? 大丈夫?」


 ルークの心から心配そうな表情と声色に、アシュリーは堪えている物が溢れてしまいそうになる。


「マスタ〜……うぅ……」


「ど、どうしたの!!?? 大丈夫? どこか痛むの!?」


「この家、……と、とっても素敵だけど、僕はここで暮らすのは難しいよ……」


「……? どうして?」


「僕は『魔物』だから……。ここはマスターの『力』に包まれてて、暮らしてるだけで僕の身体には相当な負荷がかかっちゃうんだ……。うぅ……マスター……」


 ポロポロと涙を流すアシュリーにルークはどうすればいいかわからず、そっとアシュリーを抱きしめる事しか出来ない。


「ルーク様……。……こ、このお宅は……神聖魔力に包まれております……。『神聖魔力』を『洗濯』して頂けたら……、ア、アシュリーも暮らせるかと……」



 アシュリーの涙にルークまで泣きそうになってしまっている事に、ルシファーは耐えられなかった。


(あ、あくまでルーク様のためです! け、決してアシュリーのためではありません!!)


 ルシファーは誰に言うわけでもなく、心の中で絶叫し、少し泣きそうになりながらも、ルークとの『2人きりの生活』という夢を諦める。


 ルークはびっくりしたように目を見開くと、ルシファーを抱きしめ、声を上げる。


「ルシファー! ありがとう!! アシュリー!! ルシファーのおかげで、みんなで暮らせそうだよ!!」


 ルシファーは本当に嬉しそうなルークの声と熱い抱擁に、


(言ってよかった……)


 とルークの背中に手を回しながら心から思った。珍しく何も言ってこないアシュリーを不思議に思い、ルシファーはアシュリーに目をやると、アシュリーはうるうるの瞳でルシファーを見つめ、口を開いた。



「ありがとう……ルシファーー!! 本当にありがとう!! 僕、僕……」


「な、何を。ルーク様が困っておられたので、少しばかり助言させて頂いただけです!!」


「ルシファーは照れ屋さんで、可愛いね」


「ル、ルーク様まで……」


「優しくて偉いよ?」


 ルークはルシファーの頭を撫でてから、我が家に触れる。


「『魔力洗濯マナ・ウォッシュ』……」


 すっかり静まり返ったノア西門付近に眩い光が舞う。


 ルークはその光を見つめた。ふわりと溶け込んだ光の粒子、その儚くも美しい光に、ルークはこれから先の生活が順風満帆であることを願った。


 久しぶりの我が家には、少し緊張している2人の異性。長い長い一日が終わりを告げた事と慣れ親しんだ我が家にルークはすっかり緊張の糸が切れてしまった。


「ルーク様。本当に素敵な住まいですね!」

「マスター! ルシファー! 本当にありがとう!! 僕、とっても嬉しいよ!」


 2人の言葉に深く安堵しながらも、家の中を案内した。1人で住むには広すぎる家。ルークは楽しそうな2人の笑顔にキュンとしながらも、風呂に向かった2人を見送った。



 初めは、(2人がウチのお風呂に……)とドキドキしながらも、疲労に抗う事ができず、自身を『洗濯』し、ふかふかのベッドにダイブすると、すぐに眠りに落ちてしまった。



 ルシファーとアシュリーは2人で仲良く『お風呂』というところに入り、身を清めていたが、


「どちらが先にルークからの寵愛を受けるのか?」


 について揉めていた。結論が出ず、「ルークに判断を委ねよう」と風呂から上がると、そこには「村正宗」を抱きしめて眠っているルークの姿があった。


 2人は自然と頬を緩め、ルークを起こさないよう、ベッドに潜り込み、3人仲良く眠りに着いた。



次話「カイルの動向」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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