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74話 『2人の死』 ②


8年前



―――50階層主 ケロベロスvs『鬼姫』『獣ロ組』



「何て凶暴そうな犬だよ! 三つも顔がついてるじゃねぇか!!」


「バカ!! その前にデカさだろ!! それぞれが違う属性の魔法を使うぞ!! 右から『炎』、『重力』、『氷』だ!! 気を抜くなよ! マイン!!」


 マインの緊張感のなさにロウは声を荒げる。ロイは身体強化を行い、「氷の顔」を翻弄しており、「重力の顔」をマイン、「炎の顔」をロアナとロウが相手している。


「みんな! 避けて!! 『爆風刃』!!」


 ローラの巨大な風の刃が三つの顔に迫るが、ケロベロスは高く跳躍する。


「ローラ!! 俺を上に連れてけ!! 首を叩き落とす!!」


「はい! マインさん!」


 風に巻き上げられ空を飛ぶマイン、充分な加速を確認し、『時掛け』にて0.5秒時間を止め、一番弱っている「炎の顔」を叩き斬る。


 一同は知らぬ間に首が斬られている事に驚く事なく、冷静に思考を進める。


 ローラはマインの着地に合わせ、風の絨毯を。

 ロアナは即座に「氷の顔」にクナイで牽制。

 ロイはそれに合わせて急襲し、ロウは首を落とされたケロベロスに変化がないか『鑑定』。

 ルーナは「時掛け」の直後、3秒動けないマインに防御結界を張る。



「首が落ちた事で、他の首は強化していない!!」


 ロウが叫ぶと同時に、『雷斬』で「氷の顔」の首に刃を食い込ませる。



ガゥアガゥアウッ!!



 ケロベロスの咆哮と共に、「重力の顔」が黒い球の塊を生成。ルーナがそれを結界で包みサポートし、マインが結界ごと黒い球を刀で斬る。


「氷のヤツは任せたぞ!!」


「うおぉおおおお!!」


 ロウは叫びながら更に『雷斬』を首に食い込ませ、ロイは強烈な蹴りを浴びせる。ロアナは短刀で反対側に切れ目を入れ、ロウが『雷斬』を振り抜く。




ガゥア! ガゥア! グルルルルルルルルルルッ!



 ケロベロスは2つの首が落とされ、距離を取ると威嚇するように唸り、


ダンッ!!


 と地面を踏み鳴らす。ズンっと空気が重くなり、階層全体に暗く重い空気に圧縮されて行く。地面に押さえつけられる6人。


「くっ、クソが! 階層全体かよ!!」


「か、『鑑定』……。くっ。クソがッ! 魔力量が少しずつ増えてやがる」


「最後の一つになってから、悪あがきかよ……」


「あああー……ぐうあああ」


 ロアナのうめき声に、ケロベロスが、動き始めたのを理解する。



「せ、『聖域展開』……」


 階層全体に光が舞うと、全員の身体が「ふっ」と軽くなる。ルーナと『聖域展開』。あるゆる事象に干渉し、自分の思い描く聖域を作り出すスキルの消費魔力が最も激しい結界である。



「ルーナ!! よくやった!!」


 マインはロアナを踏みつけているケロベロスの足に刀を振るうが、そのマインに合わせて「重力の顔」は大きく口を開ける。


「『時掛け』……」


 マインは足を切り落とし、ロアナを救出し、抱えたまま死地から退避する。


グワゥンッ! ガウ!!


 困惑したように未だ口開けていた「重力の顔」の顎をロイが蹴り上げ、ロウが『雷縛』で動きを封じる。


「「ローラ!!」」


 ロイとロウが叫ぶ前にはローラはすでに最大威力の『精霊砲スピリッツ・ノヴァ』を放っている。



 ローラの『精霊砲』は「重力の顔」を包み込むと、その場に留まり、風の刃で無数に切り刻み、全てを肉片とかす。



ドスンッ!!



 と大きな音を立てて倒れると、ケロベロスは巨大な魔石を残して黒い霧となって消えた。



 それに安堵したルーナとローラが魔力切れでバタンッと倒れる。ルーナの『聖域展開』、ローラの『精霊砲』は切り札であり、その代償は魔力切れによる行動不能を意味する。


「大丈夫か!!??」


 マインはロアナを抱えながら走り、ロウはその場に座り込みながら『鑑定』の連発による激痛に目を押さえる。


 ロイは足を引きずりながらも2人の元、いや、ルーナのところへと歩いていく。


「ルーナ!! ローラ!!」


 マインが心配そうに顔を覗き込むと、顔を歪めながらもニコッと笑みを作る2人。



 マインは負傷者にポーションを配り、苦戦しながらも全員に命がある事に安堵した。


「あの犬っころ。けっこう強かったな!」


 能天気なマインの発言に、ルーナとローラは「ふふっ」といつも通りの笑顔を浮かべ、


「どんな感覚してんだよ!!」

「私なんか死にかけたんだからね!!」

「マインが元気なのが気に食わない!」


 と『獣ロ組』はマインに文句を言ったが、ロウ、ロアナは安心したような笑顔で、ロイも無表情ながら、内心(みんなが無事でよかった)と安堵した。



 ロウは(28階層『カタル』までの帰路にはポーションが少し足らないかもな……)と思いながらも、未だ元気なマインの姿を心強く思いながらも勝利を噛み締めた。


「ルーナは俺がおぶってやるからな?」


「マインは元気なんだから、ずっと戦いなさい。私がルーナを連れていくから、安心なさい」


「いや、それが一番心配だ!!」


 マインとロイのやりとりに、皆が笑顔だ。少しの休息とケロベロスの魔石の回収を済ませると、ロウが口を開く。



「ノアに帰るか!!」


 6人は程よい疲労を抱えながらも、それに同意する。


「ああ。早くルークに会いてぇぜ!!」


「そうね。いいお土産話ができたわ!! きっと目をキラキラさせて聞いてくれる!!」


 とマインとルーナは遠くの村で元気にしているであろう息子を思った。



コツッコツッコツッコツッ。



 不意に響いた足音に、6人は一斉に振り返る。


 ローラとシルフの感知にも、獣人の危機察知にもかからないその女性は6人に『絶望』を持ってきた。



「あらあら。わらわのペットが死んじゃってるじゃないかい……。ふふっ。あんた達がやったのかい? ……あらあら。『面白い女』がいるじゃないかい」


 

 黒い長髪に銀色の瞳の美女は妖艶に微笑み、6人に問いかけた。




次話「『2人の死』 ③」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい [一言] 毎日投稿ありがとうございます!
[一言] 両親の死のエピソード、散々引き延ばしていて物語の重要なエピソードだと思っていたので、当然のようにロウかローラの語りから入るのかと思っていた。なので、番外編扱いかよと思わずつぶやいてしまった。…
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