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72話 3人の懺悔



―――ノア 「冒険者ギルド ギルド長室」20:45



「私がルーナさんを殺したのです……」


 俺はローラの言葉に耳を疑っていた。


 俺の左側に座っていたアシュリーが立ち上がるのを制止しながら、先程の言葉を反芻する。


(『私がルーナさんを殺したのです』……?)


 とてもじゃないが、信じられない。


 つい先程、身を盾にして俺を守ってくれた人の言葉だとは到底思えなかったのだ。


「ローラさん。事と場合によってはあなたを許す事はできません……」


 ルシファーは瞳の色を変えながら、冷静を装っているが、見開かれた瞳には殺気が滲んでいる。


「ルシファー。大丈夫。しっかり話を聞こう……」


 俺は左手で鼻息の荒いアシュリーを諌めながら、右手でルシファーの手をとった。


「ルーク様……」

「マスター……」


 2人は少し落ち着いたようで一安心しながらも、俺は目の前に座っている美しいエルフの女性に視線を向ける。するとローラの後ろに、並んで立っていたロウとロイが口を開いた。


「ローラ。言葉が足りないぞ?」

「……きちんと伝えなければ意味はない」


 パッと視線を上げる俺にロウはふぅ〜っと息を吐き、言葉を紡ぐ。


「ルーク。……どこから話せばいいんだろうな……。まずはお前に謝らせてくれ。本当にすまなかった……。引退したはずのマインとルーナを呼び戻したのは俺なんだ……」


 ロウは深く頭を下げる。俺はまだ困惑している思考に鞭を打ち、ロウの言葉を咀嚼し、父さんの言葉を思い出した。


「……『俺のライバルが頭を下げやがった。仕方がねぇから、ちょっと助けてやってくる!! 良い子にしてろよ? ルーク』……。父さんはそう言って村を後にしました」


「……ハハッ。『ライバル』か……。あの馬鹿野郎が……」


 ロウはそう言って涙を流し、言葉を続ける。


「最高の冒険者マイン・ボナパルトの『ライバル』は俺だ……。今まで黙っていて、……ダンジョンに連れ出してしまって、本当にすまなかった! ルーク!!」



 ロウはボロボロと涙をながしながら、また頭をさげる。遠い昔にロウに会っていたかもしれない事に、軽い衝撃を受けながらも、それは父さんと母さんが決めた事であって、ロウの責任ではないと思った。


 でも、それっきり帰って来なかった両親を思えば、グッと押し黙ってしまう。


「ほ、本当に……すまなかった……」


 改めて謝罪をするロウにハッとして、慌てて口を開く。


「ロウさんのせいじゃないですよ!! 父さんも母さんも、嬉しそうにしていました!! あんな生き生きしてる父さんを見たのは初めてで、それは俺が『絶対に冒険者になろう!』って決意した瞬間でもあります!!」


「……。あの頃、俺達『獣ロ組』は48階層で停滞してたんだ。未踏の地に足を踏み込む事が楽しくて、あの頃の俺達は誰も知らない世界を切り拓く事が全てだった」


 ロウはジッと俺を見据える。涙を流しながらも、俺に懸命に伝えようとしてくれているのが、ひしひしと伝わってくる。


「『まだ先に進みたい』『この先の景色をみたい!』そんな感情ばかりで、完全に自分を見失ってたんだ。そんな時、思い出したんだ。俺達より『力』を持ってるマイン達『鬼姫きき』の存在を……」


 ロウの言葉に先程、自分がロウにかけて貰った言葉の重みを知る。ロウがいま冒険者を辞め、ギルドマスターの地位に就いている理由を察すると共に、先程、「自分を見失うな!」という言葉の重みを、いま改めて実感したのだ。


「すまない……。いくら謝罪しても許される物ではない。2人がこの世を去る『きっかけ』を作ったのはこの俺だ……」


「ロウ。やめなさい。全てを引き起こしたのは私よ……」


 ロウの言葉にローラが声を上げるが、すぐさま口を開いたのはロイだ。


「ルーク。私はお前の父親の犠牲の元、いまここに生きている……」


「ロイ先生……?」


「私達、ロウ、ローラ、ロアナはマインの『犠牲の元』いまこの場で息をしている」


 ロイの白藍しらあいの瞳から涙が流れる。そこに、俺に格闘術を叩き込んでくれたロイの姿はなかった。


 無表情ながら、瞬きをする事なく、ポロポロと涙を流すロイの姿に、先程のロウの懺悔と合わさって心臓をグッと掴まれる。


「ロウさん。ロイ先生。ローラさん……。俺は両親の最期について、何も知りません……。知っているのは『鬼姫』というパーティーを結成していた事と、50階層主に命を奪われたということだけです」


 俺がそう言って涙を流すと、ルシファーとアシュリーが俺の手を握ってくれる。それが心強くて俺は小さく笑みを溢し、言葉を続ける。


「だから、教えて下さい……。2人の最期を。大丈夫です! 俺にも、心から信頼できる『仲間』ができたんです!!」


 そう言って、2人の手をギュッと握った。2人の体温を感じながら、3人の顔を順に見渡す。


 3人は皆、涙を浮かべながらコクンと頷く。その顔はどこか嬉しそうで、少し悔しそうで、3人の顔が物語っている。


『2人に見せたかった……』


 きっとそう思ってる。3人が……、きっとロアナも含めた4人がそう思ってくれている。それが伝わってきた。



「私がお伝えします……」


 ローラの白緑の瞳には力……、いや、覚悟があった。




次話「『2人の死』 ①」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


 【ブックマーク】 【評価☆☆☆☆☆】


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この作品を【ブックマーク】してくれている方、わざわざ評価して頂いてた方、本当にありがとうございます!!


今の状況は↓こんな感じです。


ルークside →これから両親の「死」について聞く

カイルside →翌日キラと闘技場で闘う。ルークの生存を知ってイライラ。簡単に言えば「ざまぁ」待ち(笑)


わかりづらかった方すみません!

頑張りますので、今後ともよろしくです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前から気になってたけど、 ルークとルシファーの邂逅後に発生する 『洗濯』スキルの『洗剤(潜在)』覚醒についての「背景や理由」が不明なままです。 『両親の死』か『両親の出生』の秘密辺り…
[一言] まわりくどい。さらにカイル側に飛ぶんじゃないかという不安。 あるある言いたいRG見てる気分。
[一言] 横道にそれた話が多すぎて分かりにくい上に流れが遅い 番外編として作って、主人公の話に絞ってくれないかな
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