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64話 ルークとロウの戦いの裏で……



―――ノア 「冒険者ギルド 訓練場」



 ルシファーは凛々しく相手を見据えているルークをうっとりと眺めていた。


(あぁ。ルーク様……。どうすればこの気持ちを全て伝える事ができるのでしょうか?)


 止まる事を知らない愛慕に胸を焦がしていると、隣からアシュリーが声をかけて来た。


「ル、ルシファー? さ、さっきはありがとう……」


 ルシファーは何に対しての感謝の言葉かわからず、小さく首を傾げると、アシュリーは照れたように口を開いた。


「ぼ、僕のために怒ってくれて……。その、嬉しくて……」


 ルシファーの頭には先程のロウの言葉に自分が反発した事が蘇った。


「い、いいんです。アシュリーを傷つける事は間接的とは言え、ルーク様を傷つけたと同義。私はそれに腹を立てただけです!!」


「ふふっ。ルシファーは照れ屋さんだね? ……でも、僕……うれしかったよ」


 アシュリーの屈託のない笑顔にルシファーは頬を染める。


(……悔しいけど、可愛らしいわ……)


 心の中でそんな事を呟きながら、


「もっと、ルーク様に『仲間』として認めて貰っている事を自覚なさい! いつまで過去に囚われているのです?」


「そうだね……。ルシファーにならそう言われても納得だよ。マスター。カッコいいね……」


「何を当たり前の事を……」


 2人はルークの背を見つめた。さらさらの銀髪とバランスの取れた美しい、少し小さい後姿をただ見つめていた。


 周りの冒険者達の声など2人には届かなかった。


 2人はもう苛立たない。

 ルークの姿だけを見ていたら、誰が何を言おうと苛立つ事がない事に気づいたのだ。


 

 ロウの力量はなかなかのものだが、ルークに勝てるはずはないと信じて疑わない2人は、ほぼ同時に違和感を感知した。


 2人で顔を見合わせ、訓練場のある一点に視線を向ける。


「あのエルフ……。相変わらず、3つの魔力を混合させるおかしな体質だわ。まぁそれぞれ個体は違うのでしょうけど……」


「……何であのエルフがここにいるのさ!」


 2人はローラの姿を捉え、意図を探りに向かう。自分達がルークの勇姿を見るよりも、ルークを傷つく事がないようにする方が大事だと判断したのだ。




 ローラは目の前の状況に困惑していた。


 すっかり現役時代のように生き生きとしているロウと、少し苛立っているようなルークの姿に、


(な、なんでこんな事に……?)


 と絶句してしまったのだ。


 ロウの強さは疑いようがない。数多の死地をくぐり抜け、『鑑定』と獣人ならではの身体能力や雷系統の魔術を武器に、皆から羨望の眼差しを向けられていた事をローラはよく覚えている。


(彼も相当なオーラを放っているし、シルフが言うには相当な『力』の持ち主だと思うけど、もし、弱点があるなら、ロウの『鑑定』の餌食になりかねない……)


 ローラはルークの身を案じるが、それはシルフの言葉によってかき消されてしまう。


「ローラ! ローラ! 来たよ!! 来ちゃったよ! 怖いのが2人揃って!!」


 シルフの声に周囲を見渡すと、フードを深く被った2人が歩いて来るのが見えた。


(シルフ、私、もう逃げないから。ちゃんと話せばわかってくれるよ! 彼の仲間だもん!)


 ローラは心の中でシルフに声をかけるが、


「う、うん。で、でもいざとなったら……ねっ?」


(ダメよ。私の覚悟を無駄にしないで!)


「わ、わかったよ……」


 シルフの少し納得してなさそうな言葉にローラはハァっとため息を吐き、ゆっくりと歩いてくる2人を見据えた。



「はじめまして。あなたは何者なのです? 先日……と言うより今日の朝方にもお見かけしたと思いますが?」


 金髪を少し覗かせ、綺麗なぷっくりとした唇が動く。フードで、顔の大部分が隠されているが、口元だけで美人である事が伝わってくる。


「私は、ローラと申します」


「ローラ。なんで君がマインの刀を持っているの?」


 赤髪をチラつかせ、美少女は少し声を震わせる。


「ろ、ローラ!! 逃げよう!! 2人相手には出来ないよ!!」


 シルフは焦ったように声を上げるが、ローラはそれを無視し、2人に口を開く。


「私は『彼』の両親の仲間だった者です……」


 2人は大きく目を見開き、心底驚いた表情を作る。


「この『村正宗』を彼に渡し、『あの日』の事を彼に伝えるために、彼に会いに来ました……」


「そ、そうですか……。『あの日』という言葉はわかりかねますが、敵ではないと判断してよろしいのですか?」


「えぇ。もちろん。ただ、私の存在は彼を傷つけてしまうかもしれません」


「……それはルーク様がお決めになる事です。あなたが決める事ではありません」


「そうだよ。マインの刀をちゃんとマスターに返そうと思ってるなんてわからなかったよ。ごめんね? 威嚇しちゃって……」


 ローラは2人の言葉にルークへの信頼と忠誠、そしてとてつもない愛情を感じた。


「ぶはぁ〜〜〜。ヒヤヒヤしたよ〜!!」


 シルフは深く息を吐き出し、心の底から安堵したように小さな腕で額を拭った。


 ローラは心の中で「ふふっ」と笑い、ロウとルークの戦闘に視線を向けると、訓練場が光に包まれ、眩しすぎる光のドームに目を細めて呟いた。


「「「綺麗……」」」


 思わず重なった声に3人で顔を見合わせていると、


ドサッ。


 とロウが倒れる音が聞こえた。


「さすがはルーク様。一切の無駄がありません」


「さすがマスターだね! やっぱりマスターは『最強』だよ!!」


「アシュリー。当たり前の事を何度も何度も」


「なにさ!! 別に事実なんだからいいでしょ?!」


 ローラは言い合いを始めてしまった事に、また微笑みながら、


(何て羨ましいのかしら……)


 と素直に感情を表現している2人の様子に少し嫉妬した。



「「「「「「ルーク! ルーク! 」」」」」」


 いつの間にルークの名前の大合唱になってしまった冒険者達に、ローラが笑みをこぼしていると、


「ローラ!! おかしなヤツが混じってる!! 『殺すしかない!』って心で叫んでる!! かなりヤバい殺意だ!!」


 シルフの焦った声にローラは即座に動く。周囲に目を向ける事なく、ルークの元へと反射的に動いてしまった。


「えっ!!?? ローラ!!!!」


 シルフの慌てたように叫んだ声が耳に届く。思考を読めるシルフがローラに対して、こんなに慌てる事は数百年ぶりだ。


 それほどまでにローラの身体は勝手に動いた。



(彼はロウを両手で抱いてる! いま攻撃されればいくら、彼でも!!)


 ローラは心の中で叫びながら超加速する。


「ルシファー! アシュリー! 行くよ!」


 ルークが声を上げる。


 ローラはルークの後ろに迫る大斧を視界に捉え、目を見開きながら、(魔法を展開してる余裕はない!!)と判断する。


「ルーク様!!」

「マスターー!!」

「師匠!!!!」


 3人の声にルークはローラに対して戦闘体勢を取るが、ローラは慌てて叫ぶ。


「後ろです!!!!」


 ルークは大斧を視界に捉えるが、このままでは直撃は免れない。ローラはルークと大斧の間に慌てて飛び出す。


グザンッ!!


(熱い……)


 ローラは肩口からドクドクと流れる自分の血にそんな感想を抱きながら、倒れる。


「ローーーラーーーー!!!!!!」


 ローラの耳にはシルフの叫び声が聞こえた。


(……ローラ……?)


 ルークは目の前の状況に絶句しながらも、誰かの絶叫を反芻した。



次話「盾役 アラン・ドーソン ①」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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