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51話 てんやわんや



―――ノア 「月光の宴」


 俺の登場に「月光の宴」で酒を飲んでいた冒険者達は沸いた。


「生きてたのか!!」

「本当によかったぜ!!」

「俺たちの『希望』の帰還だー!!」

「どうやって帰ってきたんだよ!! 本当にすげぇぜ!!」


 などと、中には涙ぐんでいる冒険者の姿もあった。お酒の力もかなり含まれているとは思うが、純粋に嬉しかった。


 今までの扱いは決して気持ちのいいものではなかったので、あまりの変わりように苦笑してしまった。


 ターナや店員達はかなり心配してくれていたようで、俺が店に入りターナを支えていると、波のように押し寄せ、何人もの人が俺の帰還を喜んでくれた。



「ルーク様は私の事を忘れてしまっています!!」


「そうだよ!! マスターは僕のだー!!」


 2人の大声に、「ん?」と視線を向けると、フードを取っているルシファーとアシュリーに、店内は一斉に静まり返り、俺は頭を抱えた。


「お、俺はやっぱり、テメェが嫌いだ!!」

「ふざけんじゃねぇ!! ターナとラミルだけじゃ、テメェは足らねぇのか!!」

「……な、なんなんだよ。テメェは!!」

「この美女と美少女はなんだよ!! クソォオオ!!」


 しばしの静寂を破り、沸き立つ冒険者達は口調とは裏腹に、どこか嬉しそうだ。


「いやぁーーー!!」

「こんなの、勝てるわけないじゃん!!」

「ルークさん! こんなの、あんまりですよ!!」

「なんて人達を連れ帰って来てしまったのです!! 信じられません!!」


 悲鳴にも似た絶叫を響かせる女性達は全員が言葉通りの反応のようだ。


 2人はキョトンとして、引き攣った顔で俺を見つめるが、俺はそんな2人に深い深いため息を吐いた。


(もう!! 2人とも、自分たちの可愛さを少しは自覚して欲しい……)


 俺が心の中で懇願していると、ターナがふらつく足取りでやって来て、


「ル、ルークさん……。この方達は……?」


 と頭についた猫耳を「これでもか!」と垂れさせ、今にも涙が落ちそうな、うるうるの真紅の瞳で問いかけてきた。


(な、なに? なんかいつもと雰囲気が違うぞ?)


 と俺は首を傾げながらも、『ルシファーとアシュリーに変な虫がつかないように牽制するいい機会だ!』と判断する。



「この2人は『俺の』だから、何かしたら、本当に許さないからね?」



 俺はターナに言葉を返すというよりも、その場にいた冒険者達に向けて口を開いた。


「ハハハハッ!! お前、46階層の魔物に殺されかけたんだろ? そんなところから帰還したお前に誰が逆らうんだよ!!」

「そんなに慌てなくても、どうせ俺たちはそのべっぴんさん達に、相手にされねぇぜ!! ハハハハッ」

「ちょ、ちょっと待て!! ってことはターナとラミルは『空いた』んじゃねぇか!?」


 これ以上、驚く事はないと思っていたが、この反応には驚いた。俺の努力だけでなく、俺の力まで認めてくれている事に驚いたのだ。


 俺は呆気に取られながらも2人に視線を向けると、これ以上ないほど顔を真っ赤に染めた2人と目が合った。


 俺まで顔を真っ赤にしてしまうのには、充分な破壊力だ。


(ふ、2人とも可愛いすぎるぞ……)


 俺が心の中で悶絶していると、服の裾を引っ張られ、そちらに視線を向けると、顔を青くしているターナの姿があった。


「ル、ルークさん……」


「タ、ターナ? 顔が真っ青だよ!? 大丈夫!?」


 俺の言葉にターナはプルプルと震え出し、真紅の瞳になみなみと涙を溜めた。


「タ、ターナ?」


「……ターナも……」


「え? 声が小さくて聞こえないよ?」


「タ、ターナも『ルークさんの』にして下さい!!」


「え、えぇええ!!??」


 俺の絶叫が店内に響き渡ると、ルシファーとアシュリーの顔色が変わる。


「愚か者!! ルーク様は『私の』です!!」

「猫耳娘!! マスターは『僕の』だぞ!!」


「アシュリー! あなたは少し黙ってなさい!!」


「ルシファーこそ、少し黙りなよ!!」


 2人はまたケンカを始めてしまったが、俺はターナのうるうるの瞳から目が離せない。


 透き通るようなどこまでも紅い瞳。頭の猫耳はととても可愛らしい。メイドのような店の衣装も凄く似合ってるし、お尻から生えている尻尾も何か……凄くいい感じだ。


 とてもふくよかな胸も、ふっくらとしたお尻も……。


(い、今まで、『友達』としか、考えてなかったけど、ターナって実は物凄く、可愛いんじゃ……?)

 


 と俺がターナに見惚れていると、


「ルーク様!! だめです!! 私を見て下さい!!」


「マスター!! ダーーーメーーー!!」


 とルシファーは慌てて俺を自分の胸に引き寄せ視界を奪い、アシュリーは後ろから俺に飛びついた。おそらく世界で一番贅沢なサンドウィッチに俺の頭がクラクラしていると、


「ル、ルークさん!! ターナも忘れないで下さい!!」


 とターナが俺の足に縋るように飛びついてきた。ルシファーの胸に顔を埋め、アシュリーの吐息が耳元にかかり、ターナの頭が俺の腰の辺りにある。


(こ、これはヤバいぞ!! 本当にヤバい!!)


 思わず『反応』してしまいそうになる身体に唇を噛み締め、懸命に鞭を打っていると、


「な、なんて羨ましいやつだ……」

「……なんて可愛い3人組なんだ……」

「……ゆ、夢のような景色だ……」


 と冒険者達が顔を赤く染め始めたので、俺は大声をあげた。


「ルシファー!! アシュリー!! ターナ!! ちょっと、やめろ!! 本当に怒るぞ!!??」


 俺の雰囲気に焦ったのか、パッと離すルシファーとアシュリー。しかし未だターナは膝立ちで俺の腰にしがみついている。


「なっ! なんて豪胆な猫娘なんでしょう! ルーク様の『圧』に屈しないなんて……」


「なんて猫耳だ。マスターのオーラがわからないの!?」


 2人は驚愕したように声を上げると、真っ赤な顔のターナが膝立ちのまま、ゆっくりと下から俺を見つめた。


「ル、ルークさん。お、おっきい……」


 あまりの恥ずかしさに俺はそのまま後ろに倒れてしまいそうになったが、咄嗟にルシファーとアシュリーが支えてくれた。


 丸一日のダンジョンでの疲労が今やっと顔を出し、俺はそのまま意識を失ってしまった。



 その後、大爆笑している「月光の宴」の女亭主のクロエが奥の休憩室を貸してくれたらしい。ルシファーとアシュリーはターナに良からぬ事をさせまいと、ずっと俺に付きっきりだったそうだ。


 冒険者達は嫉妬からか、ぐちぐちと文句を言い続けていたらしいが、その顔は晴れやかな笑顔で、とても嬉しそうにしていたと後でターナが教えてくれた。



 俺はぐっすりと眠りながら、久しぶりに父さんと母さんの夢をみた。


「ルーク! 男は女を虜にしねぇといけねんだ。俺みたいにモッテモテになる秘訣を伝授してやろう!!」


 と父さんは得意げに笑顔を見せるが、母さんは呆れ果てた顔で、


「あら? 私からしかモテてなかったじゃない?」


「馬鹿野郎! それが全てだろ! ハハハハッ」


「ふふっ。それならいいんだけど! ルークは私に似て綺麗な顔だから、なんの心配もいらないわよ」


 と2人して笑っていた。あまりに懐かしい2人の姿に、夢の中で涙が流れてしまいそうになった。温かくて幸せそうな2人の笑顔はとても眩しかった。





次話「ローラの決意」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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