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48話 ルシファーとアシュリーの憂慮



―――ノア 「月光の宴」への道中



 ルシファーは前を歩くルークの嬉しそうな表情に、緩む頬を抑える事ができなかった。


(ルーク様に舐めた口の聞き方をする事は、腹立たしいけど、この可愛らしい笑顔に免じて許してやろう)


 ルシファーはそんな事を考えながら、街の景色を堪能した。柔らかな風が頬を撫でる感覚、様々な匂いと街の声、乱立する建物に数千年ぶりに五感が刺激されている事が嬉しかった。


 そのどれもがルークに与えられた物だと思うと、心の中に渦巻く恋情に耐えられず、ルークを見つめながら頬を染める事しか出来なかった。


 激しい動悸に自然と胸に手を当てると、ふとダンジョンから出た時の違和感を思い出した。


「「あのエルフ……」」


 ルシファーは重なった声にパッと視線を向けると、漆黒の瞳をまんまるにしているアシュリーと目が合った。


「ルシファーも?」


 アシュリーの言葉の全てを理解した訳ではないが、アシュリーも「何か」を感じ取っていた事を理解する。


「……あのエルフが只者ではないのはわかってます」


「そっか。じゃあ僕とは違うね」


「どういう意味です?」


「あのエルフが持っていた武器は、マスターの父親、マインの武器だった……」


 ルシファーは目を見開き、情報を整理する。


 感知した魔力は『3つ』。一つはもちろん、エルフ本体の魔力。もう一つは風属性の塊のような魔力。もう一つは禍々しい闇の魔力。


(エルフ自体の魔力は、私やアシュリーに遠く及ばない。風属性の塊は『風の化身』……。おそらく精霊だろう。禍々しい闇の魔力は……ルーク様のお父様の『武器』?)


 武器そのものに魔力が宿る事はある。ルークの「神鎧しんがい」にも相当量の神聖魔力が付与されている。だが、あれほどまでに禍々しい闇の魔力を持つ「武器」は神によって造られたものではない。


「アシュリー。それはどのような武器です?」


「『刀』って呼ばれる極東の武器さ」


「……なぜそれをあのエルフが?」


「わからない。聞いたんだけど、『変な匂い』のヤツが連れてっちゃった……」


 アシュリーは口を尖らせ、拗ねたように呟く。


 ルシファーは楽しそうに冒険者達と話しているルークの姿に視線を移す。


(ルーク様のお父様の『形見』……。もし、それをあのエルフが奪っているのだとしたら、許さない。まだ情報が曖昧だけど、ルーク様の笑顔を奪おうとするなら容赦はしない)


 ルシファーはそう決意し、エルフの動向に気を配る事を決めた。



 

 何だか考え込み始めたルシファーにアシュリーは首を傾げていた。


(なんなのさ。黙りこくっちゃって!)


 アシュリーは心の中で呟き、自分からは情報を引き出し、黙ってしまったルシファーに口を尖らせた。


「ルシファー! 何か知ってるなら僕にも教えてよ!」


「あぁ。ごめんなさい。すっかり思考をまとめてしまっていたわ」


「もぉ! で、あのエルフは何者なの?」


「さぁ? そこまではわからないわ。ルーク様のお父様がお持ちになってた『刀』には特殊な能力が?」


 アシュリーはルシファーの言葉に、さらに口を尖らせる。


(また僕からだけ、情報を盗もうとしてるな!? 自分だけ、良いところをみせて、マスターから『よしよし』してもらおうとしてるんだ!!)


 アシュリーはそう確信しながらも、ルークの父親であるマインの言葉を思い返す。


(確か、『万物を斬り裂く、じゃじゃ馬だ!』って言ってたはず……)


 思い返したは良いが、あの頃の自分の精神状態はひどいものだったので確信はない。アシュリーは苦笑しながらも、それをやすやすとルシファーに教えるのは、なんだか負けな気がして、


「さぁ? それはわからないよ?」


 とイタズラな笑みを浮かべた。


 ルシファーはアシュリーの言葉に笑みを浮かべたが、全く目が笑っていない。ふぅーっと少し息を吐き、口を開いた。


「……いいでしょう。おそらくあのエルフは『風の精霊持ち』です。あのエルフからは3つの魔力を感知しました」


 ルシファーの言葉にアシュリーは思考を進める。


(なるほど、『変な匂い』がしたのは風の精霊か。もう一つは『マインの刀の匂い』で確定。残りはあのエルフ本体か……)


 刀の『匂い』につられて声をかけたアシュリーには、それが瞬時に理解できた。


(タネがわかれば、なんて事はない。なんであのエルフがマインの刀を持っていたのかはわからないけど、あの刀はマスターが持ってなくちゃダメなはずだ!)


 アシュリーは、次にあのエルフと会ったら、武力であの刀をルークに捧げようと考えたが、ルークはそんな事をしても喜んでくれない事にすぐ気が付き、どうすればいいのかわからず、顔を顰めた。


(とにかく、あのエルフは要注意だね。……とっても可愛かったし、おっぱいも凄かった……)


 アシュリーは二重の意味でエルフを警戒する事を決めていると、待ちきれないルシファーが口を開く。


「アシュリー、次はあなたの番です。あの『刀』には『闇の魔力』が付与されているのですか?」


「……『闇の魔力』? 何それ?」


「なっ! 『刀』について情報を渡しなさい!」


「僕も記憶が曖昧でよく覚えてないんだ〜!!」


「ふざけてないで、早く話しなさい!! ルーク様のご両親とお会いするなんて、とっても羨ましい事をした事をしたのが、あなたの数少ない長所の一つでしょう!? ちゃんと思い出しなさい!!」


「なにさ!! 僕はルシファーみたいに戦闘を禁止されてないんだよ! だいたい、ルシファーはマスターを独占しすぎなんだ!! マスターの命の恩人かも知らないけど、僕だってマスターの命の恩人になりたかったよ!!」


 2人の考察は「どちらがルークに相応しいか?」という、いつものケンカに移行してしまった。



 前を歩いていたルークは2人の様子に気づき、そっと声をかける。


「2人とも、どうしたの? 俺は『仲良しな2人が大好き』なんだけど……」


 ルークは何度も2人のケンカを止めているうちに、魔法の言葉を見つけていた。


「ア、アシュリーと仲良く話していただけです」

「そ、そうだよ? ケンカなんてしてないよ?」


 2人は即座にその魔法の言葉に反応し、手を繋いでみせると、ルークは「ふふっ」と一つ笑い、


「よしよし。良い子だね?」


 と2人の頭を撫でた。


 2人はルークの手の感触を身体に焼きつけながら、満足気に頬を染める。嬉しそうに笑みを浮かべ、


((これがあるから、『ケンカ』も悪くない……))


 と、心の中で呟いた。


 2人がケンカを自重しない原因が、少なからずルークの「よしよし」にある事を、ルーク本人はまるで気がついていなかった。




次話「アランの計略」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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この作品を【ブックマーク】してくれた方、わざわざ評価して頂いてた方、本当にありがとうございます! 


二章のプロット練りました! 頑張りますので、二章も最後までお付き合い、よろしくお願いします!!

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