38話 ノアの街へ
―――28階層
あれから、サイモン達とお酒を飲んだ。ルシファーとアシュリーは俺の後を追って、すぐに参加したが、何だか少し拗ねているようで宥めるのが大変だった。
サイモンのパーティーメンバーである「エルフのイル」と「剣士のノイヤー」は2人とも、とても気さくでいい人だった。
「ルークさんの事はサイモンからよく聞いています。その美しいお顔は、お噂以上です……」
とイルはお世辞を言ってくれたし、
「ルークさんは格闘術が優れているとお聞きしました! ぜひ俺にもご指南をお願いしたいです!!」
とノイヤーも俺に敬意を持って接してくれて、本当にいい人達だった。
サイモンも相変わらずで、「師匠はすごいんだ!」と俺のお人好しな所を自分の事のように自慢していて、少し恥ずかしかった。
ルシファーとアシュリーはイルに、何やら言っていたようだが、詳しくは何を話しているのかは、聞こえず、ダンジョンの中で、こんなに楽しい飲み会は初めてで俺は少し飲み過ぎてしまい、程よいアルコールを感じながら、自分のベッドにダイブし、そのまま眠ってしまった。
目を覚ますと、当たり前のように俺のベッドで眠っていたルシファーとアシュリーに「ふふっ」と笑みをこぼし、美しすぎるルシファーの寝顔と可愛すぎるアシュリーの寝顔に心臓をキュンとさせながら、昨日の武具屋に向かった。
(流石に、神様が造った鎧なんて貰えないよね?)
と「神鎧」を片手に武具屋の通りを歩いたが、昨日、店があった場所には何もなかった。
(あれ? 間違えたかな?)
俺は少し困惑しながらも、2、3回通りを歩いたが、明かりのついていない店は見つける事はできなかった。
(あのお店は? あの美人店員さんは誰だったんだろう……? 名前くらい聞いておけばよかったなぁ)
と仕方なく「神鎧」を持って「ロアの宿」へとかえると、
「ルーク様、どちらに行かれていたのです!!?」
「マスター!! どこに行ってたのさ!?」
と、2人は既に起きていて、俺が買ってきていた服を着ていて、しっかりと準備をしていた。
「この鎧を返しに行ってたんだけど、店がなくなってたよ……」
「なぜです!? それはもうルーク様のために造られた鎧にしか見えませんのに……」
「本当だよ! あんなにカッコよかったのに!」
「ハハッ。ありがとう。2人も新しい服とっても似合ってるよ?」
俺がそう言うと、2人とも顔を赤く染めていてとても可愛いかった。
時刻は午前4時を少し回った所。俺も神鎧を装備し、ロアナの元に向かった。
「ルーク……。本当にかっこよくなっちゃって」
「ふふっ。ロアナさん、からかわないでよ」
「からかってないわ……。約束覚えてるの?」
「はい! カタルに来たらちゃんと顔を出します!」
ロアナは優しく微笑んで、翡翠の瞳を少し潤ませた。俺が「ん?」と首を傾げると、
「待ってるわ……。頑張りなさいね? 2人ともルークを頼んだわよ?」
と俺の頭を撫でながら言ってくれた。
「何を当たり前の事を。あなたの出る幕はありません」
「僕はマスターの力になるんだ! 頼まれなくたってね?」
と2人は穏やかに笑いながら答えた。3人が仲良くなってくれてよかったと思いながら、
(ロアナさんは本当にお姉ちゃんみたいだな)
と応援してくれている人がいる事を有り難く思った。
本当にノアに帰るんだ! と思ったら何だか感慨深いものを感じた。
カイル達に「追放」され、ルシファーに救われ、アシュリーが見つけてくれて……。ロアナに支えられ……。とても、内容の濃い数日間だった。
宿の外には俺達を待っていたサイモン達の姿が見えた。
「師匠ぉおお!! 帰りましょう!!」
サイモンは手をブンブンと振り回し、イルとノイヤーは一礼した。俺は軽く手をあげてそれに応え、
「ロアナさん。行ってくるね?」
と声をかけると、
「行ってらっしゃい」
とロアナは綺麗に微笑んで見送ってくれた。
「待ったかな? ごめんね?」
「いえ! まだ時間じゃないですよ? 師匠!」
時刻は午前4時45分。順調にいけば、明日の朝にはノアに帰られるだろう。
(ルシファーは朝焼けを気に入ってくれるかな?)
と考えながら2人に声をかける。
「行こうか?」
俺達はノアの街へと出発した。
次話「師匠の力量」です。
【作者からのお願いと感謝】
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