34話 2人へのプレゼント
次話予告間違えてました。申し訳ありません。
―――28階層 「ロアの宿」
「師匠ーー!! 明日一緒に帰りましょうよ〜!!」
ロアの宿に戻ると、サイモンがすっかり酔っ払っていて、そう言って絡んで来た。
ルシファーとアシュリーはあからさまに嫌な顔をしているが、時計を確認するとまだ午前10時頃だった。カタルからノアまでは順調に行けば、丸一日程度で帰る事ができるはずだ。
ルシファーに朝焼けを見せるつもりなので、今から出発しても、えらく中途半端な時間にノアに着いてしまう事になるな……と考え、出発を午前5時にする事に決めた。
「ルシファー、アシュリー。1日くらいゆっくりしてから帰ろか?」
「……? ルーク様がよろしいのでしたら……」
「僕はマスターと居られるならどこでもいいよ〜!」
ルシファーは俺の言葉に何か違和感を持ったようだが、アシュリーには何も気づかれていないみたいだ。
(ルシファーは勘がいいからな……。できれば内緒にして、びっくりさせたいんだけど……)
「あっ!! プレゼント見に行こう!! 俺の防具も用意したんだ! 何かすごく雰囲気のある鎧なんだよ!?」
「ふふっ。……そ、それは楽しみです!! ルーク様の鎧姿。考えただけで……」
ルシファーはすっかり興味がそっちに移ったようで目を細めながら頬を染めているので、とりあえず一安心だ。
「僕のネックレス! 僕のネックレス!」
アシュリーはぴょんぴょんと跳ねながら、無邪気に笑顔を作っている。
俺もアシュリーにつられるように笑い、サイモンに声をかける。
「サイモン、俺達は明日の午前5時に出発する事にするよ!」
「わかりました! 俺達もそれくらいに出発する事にします! じゃあ、待ってるので、あとで一緒に飲みましょうよ!」
「わかった。後で少し顔を出すよ!」
「楽しみです!!」
サイモンは「待ってますね〜!!」と手を振りながら自室へと帰って行った。相変わらず、人懐っこいヤツだなと思いながらそれを見送る。
ロアナにもう一泊する事を伝えると、
「好きなだけ居たらいいわ」
と快く迎えてくれた。
「今回は払いますよ!!」
と俺が強く言うと、
「ふふ。ありがとうございます。ルークさん」
と店主としての言葉遣いで綺麗に微笑んでくれた。
案内された部屋には、もうすでに俺が買い出しをした荷物が運び込まれていた。
(流石だなぁ〜……)
と感心していると、部屋に入るなりアシュリーが抱きついて来る。
「マスター!! ネックレス!!」
「アシュリー!! 早くルーク様から離れなさい!!」
「いやだ!! 大体、ルシファーはマスターを独占しすぎだよ!!」
「……!! 何を!! 私がどれだけ我慢していると思ってるの!! アシュリーが居なければ、すぐにでもルーク様にこの身を捧げ……」
ルシファーはそこまで言うと顔を真っ赤に染め、潤んだ金色の瞳で俺を見つめた。
俺は「やれやれ、また始まった……」と思っていたので、不意打ちのルシファーの真っ直ぐな瞳に、心臓が痛いほど高鳴ってしまう。
「むぅー……。マスター!! 僕を見て!!」
アシュリーはそう言って俺の顔に手を伸ばした。至近距離での上目遣い。次は心臓がキュンとしてしまう。
(2人とも俺を殺すつもりなのかも知れない……)
顔の熱が尋常ではない事になってしまっている。頭の中に心臓があるのか? と思うほどバクバクと鼓膜に直接、鼓動が響く。
「ごめん。2人とも可愛いすぎて、もう俺、心臓が痛いよ……」
俺が顔を真っ赤にしながらそう言うと、ルシファーは更に顔を赤らめ、アシュリーもボッと顔を赤くした。
俺は少しよろけながら、荷物から2人へのプレゼントを取り出し、
「俺に付いてきてくれてありがと!! ノアに帰ったら2人にもちゃんとお金を渡すからね?」
とプレゼントを手渡した。
2人はうるうると瞳に涙を浮かべ、
「……ルーク様……一生大切にします」
「マスター!! 僕……僕……」
とまだ開けてもいないのに感極まっている2人に俺は少し苦笑してしまった。
「気に入ってくれるかわかんないけど、開けてみて?」
俺は少し心配になりながら言うと、2人は「そんな事はあり得ない!」と少し怒りながらも包みを開けた。
取り出したプレゼントに感嘆の声をあげ、ポロポロと涙を流す2人を見ながら、これまでの2人の孤独を考えさせられる。
(きっと『人間』では考えられない苦悩があったのだろう……。少しでも2人のために何かできればいいな)
と強く思った。
「ルーク様。本当に素敵な物を頂いて……私、とても幸福です……」
「マスター!! 僕、誰かにプレゼントを貰ったの初めてだよ……。とっても嬉しい!!」
2人の涙は一向に止まる気配がない。
「喜んでくれてとっても嬉しい……。2人とも俺と居てくれて本当にありがとね? ルシファーと出会わなければ俺は死んでただろうし、アシュリーが側に居てくれないと俺はこんなに笑顔になれなかったと思う」
2人は俺の言葉に涙を加速させてしまったので、俺は2人の頭に手を伸ばし、そっと撫でた。
「2人とも俺にとって、かけがえのない存在だし、2人のおかげでまた『夢』を目指せるよ! これからもよろしくね?」
「……マスターの『夢』?」
「ふふっ。一つは、マインとルーナ……俺の父さんと母さんと同じ『Sランク』冒険者になる事。もう一つはこの『ノアの大迷宮』を制覇して『夢の果て』を手に入れる事だよ?」
「ルーク様なら絶対に大丈夫です。間違いありません!! 私に出来る事は何でもします……」
「そうさ!! マスターならきっと『夢』を叶えられる!! 僕だって、マスターのためならどんな事だってできるんだからね!?」
涙を流しながらも2人の顔はとても晴れやかな笑顔だ。
「おいで? ルシファー」
俺はルシファーから金色の石が埋め込まれている髪留めを受け取り、綺麗な黄色の髪に触れ、それを着けてあげた。
「アシュリーも」
アシュリーにも赤色の石が付いたネックレスをつけてあげる。
2人とも頬を染め、少し濡れた瞳で俺を見つめる。
「ふふっ。とってもよく似合ってるよ?」
俺がそう言うと2人は俺に飛びついて来たので、俺は体勢を崩し、そのまま倒れ込んでしまう。
「ルーク様……。私、幸せすぎて少し怖いです。少しの間、こうさせて下さい……」
「マスター……。僕も何だか怖くなっちゃった。ちょっとだけ……」
俺はそんな2人の頭に手を回し、安心させるために、少しギュッと力を込めた。
「よしよし……」
と言いながら頭を撫でていると扉が開く音が聞こえてそちらに視線を向けると、目を見開いているロアナの姿があった。
「食事を、……!!ふふっ。お邪魔だったようね?」
ロアナはそう言って口に手を当てて笑った。
「食事!! ルシファー! アシュリー! ご、ご飯だって!!」
状況を理解した俺は慌てて声を上げたが、2人は俺に回している腕にギュッと力を込めた。
冷静になってしまった俺は2人の感触と甘い香りに頭がクラッとすると、脳内で煩悩と理性が壮絶な戦いを始めた。
次話「アンの決断 ①」です。
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