24話 初めてのお泊まり
―――28階層 「ロアの宿」
ロアナがいつの間にか去っている事に気づいたが、俺の無事をあんなにも喜んでくれると思っていなかっただけに、食事が更に美味しく感じた。
「……ルーク様……。この『お酒』と呼ばれる飲み物は……とっても美味です……。『人間』を見直しました……」
とろっとろにとろけているルシファーの破壊力は絶大だ。少しはだけた純白のワンピースから真っ白い綺麗な足が伸びている。
(見ちゃダメだ!)
といくら心の中で叫んでも、悲しいかな視線は美しい太ももに釘付けだ……。
煌びやかな店内……。ダンジョン内の暗がりではない場所で改めてルシファーの美しさを自覚する。凝視する事すら躊躇してしまう……。
「よ、よかったね。でも、お酒はほどほどにね? 慣れてないみたいだし……」
「ルーク様……。とても美しい私の……」
ルシファーはゆっくりと俺に近づき、俺の顔に手を置き、優しく撫でる。
「ちょ、ちょっと、ルシファー!?」
「……ルーク様……」
至近距離でポーッとしているルシファーに否応なしに心臓がバクバクと早鐘を鳴らす。
「マスター? 顔が真っ赤だよ〜……?! ふふふっ」
「ア、アシュリー!! 笑ってないでルシファーを……」
「ルーク様……? うっ……うぅー……」
ルシファーはぷくぅ〜っと頬を膨らませ、金色の瞳にうるうると涙を溜める。白い肌なので、顔が真っ赤になっているのがよくわかる。
(……こ、これは……かなり酔っ払ってるね……)
心の中で呟きながらも、肉のあぶらで妖しく光っているルシファーのぷっくりとした唇から視線を外せない……。
「ルーク様……。私が近くに来るのが嫌ですか……?」
「い、いや! そんな事、あるわけないでしょ? ルシファーちょっと飲み過ぎだよ!?」
「そんな事はありませんよ……? ふふふっ。ルーク様の甘い、いい香りを堪能したいだけです……」
ルシファーは嬉しそうにそう言って、抱きつくようにして俺の首筋に顔を埋める。
「ル、ルシファー!?」
肋骨の辺りにルシファーの柔らかい胸が押しつけられ、ルシファーの髪の香りが鼻腔を刺激する。
身体がゾクゾクッとして、熱くなってくる。
(ヤバい、ヤバい……!! ヤバい!!)
18歳の健全男子にはかなりの刺激であり、もちろん「そんな経験」はない俺は、ただただ固まる事しか出来ない……。
「ルーク様……」
ルシファーの吐息が首筋にかかる。さらに硬直してしまう俺は、助けを求めるように視線だけをアシュリーに向けるが、それは逆効果だったようだ。
「ふふふっ。マスター……。僕もマスターのいい匂いを嗅ぎたいよー……。ルシファーばっかりはズルい!!」
と少し頬を膨らませ、ふらふらとしながら俺の背後に周り、後ろから俺に抱きついた。
ルシファーとは違った、感触だが、アシュリーも胸がないわけではないんだ……と肩甲骨に当たる感触に神経を集中させた。
集中しないとわからないだけに、それを探ろうと脳がフル稼働してしまう……。
(俺は何て事を……)
と自分の性欲にアワアワしながらもそれを止めることは出来ない。サンドウィッチのようになってしまった俺はクラクラとする頭の中、
(あぁ……。こ、これは……生きててよかった……。)
などと、自分の「生」を堪能していると、扉の方から視線を感じ、ハッとそちらに視線を向けた。
すると、少し空いた扉から「ロアの宿」で働いている、女の子達に覗かれている状況だった事に気づいた。
「ルシファー!! アシュリー!! 見られてるよ!!」
「ふふっ。見せつけておけばいいのですよ? ルーク様……」
「そうだよ? あんな子達放っておけばいいんだよ、マスター……」
俺の声に扉から部屋になだれ込んで来た4人の女性従業員達はルシファーとアシュリーの言葉に顔を真っ赤に染める。
よく見ると、前に一緒に皿洗いした人や、買い出しに付き合ってあげた人、カイル達の横柄な態度を謝りに行った人達だ。
「も、申し訳ありません!!」
「ルークさん! その女性達は!?」
「ご無事で何よりです!!」
「…………」
4人ともが皆、違う反応を見せる。恥ずかしすぎて、顔が爆発してしまいそうになり、俺はそのまま後ろに倒れてしまったまま、意識を失った。
―――――
目を回して、突然倒れてしまったルークはアシュリーの膝に倒れ込み、ルシファーが押し倒した形になってしまった。
「ルーク様!!」
「マスター!?」
2人が「何かあったのでは!?」と、慌てた声を上げると、その場にいた従業員達も慌てて駆け寄って来た。
しかし、うわ言のように、
「ルシファー……、アシュリー……も、もう……」
と言っているのを確認して、みんなホッと胸を撫で下ろした。
「お邪魔してしまって申し訳ありません……」
「ロアナさんには言わないで下さい……」
「……ごめんなさい……」
「……お2人はルークさんの……?」
従業員達は謝罪しつつも、2人がルークにとってどんな存在なのか? が気になって仕方がない。と言った様子だ。
「ふふふっ。マスターは僕たちの……」
アシュリーは明言を避け、含みがあるように笑みを浮かべて対応していたが、ルシファーはお腹に『当たっている物』に気づき、それどころではなかった。
(こ、これがルーク様の……)
と心の中で呟きながら、すっかりお酒が抜けていくのを感じていた。先程とは違う「熱」が顔中に沸き上がり、ゴクリと唾を飲み込んでいると、「んー……?」と首を傾げているアシュリーと目が合った。
「ルシファー? 何……?」
「な、何でもないです!!」
アシュリーはルシファーの様子に「何か」があるのを理解する。酒でぼんやりする頭を可能な限り回転させ、一つの結論を導き出し、慌てて声を上げた。
「……!! だ、だめー!! は、早く、マスターから離れてよーー!!」
アシュリーはルシファーのワンピースを掴み、横に転がした。見た目からは想像が出来ない力に、なす術なくルシファーがどかされると、『それ』が姿を現した。
「「「「……………!!」」」」
2人の様子に首を傾げていた従業員の女性達も、ルシファーも、もちろん、アシュリーも、一様に『それ』に釘付けになり、絶句する。
誰も何も言葉を発する事ができず、各々がそれぞれの行動を取り始めた。
従業員達は顔を真っ赤にして、3組の寝室を準備し、出ている食事の後片付けにとりかかる。
ルシファーはさっとルークを抱き上げ、案内された寝室に優しくルークを寝かせる。アシュリーもルシファーに付き添い、ルシファーが何もしないように監視する。
この場にいる全女性の頭の中には一つの事しか浮かんでいなかった。
(あ、あんなの……。自分の身体大丈夫かしら……?)
経験のないルシファー、アシュリー、2人の従業員はまだわかるが、経験のあるもう2人の従業員も考えている事は同じだった。
初めてのお泊まりは「勝者 不在」で幕を下ろした。
次話「カイル一行の帰還 ①」です。
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