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21話 『追放組』始動!!  VSオークロード



―――30階層 VS オークロード


 目の前に巨大なオークが聳えている。獰猛な牙に真っ赤な目。二足歩行の「ソレ」は3メートル程の大斧を持つ。


 30階層主のオークロード「A-」だ。


「立ってる、おっきい猪だ! 僕も実は戦った事ないんだー!」


「図体だけの『小物』です。ルーク様を威嚇するなど、数千年早いですわ……」


「ハハッ。それ俺もう死んでるじゃん!」


「ルーク様は死にません!!」

「マスターは死なないよ!!」


 2人同時に声を張り上げるが、俺は苦笑する事しか出来ない。


(2人には『寿命』の概念はないんだろうか……?)


 などと考えながら、苦い記憶を思い返す。


 初めてオークロードを討伐する時のこと……アラン、カイルの攻撃を掻い潜ったオークロードに対して、慌てたジャックが俺の背中を押して、危うく死にかけたという物だ……。


(確かあの時は、急に咆哮をあげるだけで攻撃して来ることがなかったから大丈夫だったけど……。でもまぁ……、ギガントミノタウロスに比べると……ちょっと見劣りしているな……)


 俺は心の中で苦笑する。


 ここに来るまでに、随分と自信を持てた。それは下層での戦闘での経験や、その他にもあらゆる要素があるとは思うが、それらをまとめると、「ルシファーのおかげ」と言うことになるだろう。


 ふぅ〜っと長い息を吐きながら、自分にスイッチを入れる。いくら自信を持っても、決して過信はしないよう、今一度、自分を戒める。


(勘違いするな……。自分が弱者である事を自覚しろ……。決して気を抜くな……集中しろ……。相手がゴブリンだとしても……)


 俺は自分で自分に呟きながら、大きく息を吸い口を開いた。


「ルシファー、明かり……」


「……は、はい! 『光焔セフィラム』」


 ルシファーは少しポーッとしてから、慌てたように光の焔を生成する。



グオオオオオオオ


 ルシファーの「光焔」に、オークロードも戦闘態勢に入ったようで、図太い咆哮をあげる。


(確か、地面を揺らす特殊スキルを持っていたはずだ……)


 冷静にオークロードを観察し、どんな機微にも反応できるように、脱力する。


「マスター? 僕は??」


 アシュリーは漆黒の瞳をキラッキラに輝かせる。


「アシュリーは俺のサポートを頼む。『万が一』があればよろしくな?」


 俺はアシュリーの頭を撫で、さらにオークロードに集中する。


(動きは無さそうだな……)


「『火玉洗濯フレイム・ウォッシュ』!!」


 俺は遠距離から魔法を放ち、オークロードの動きを促す。躱される事を前提とした魔法で、相手を揺さぶる。


「マスター!! とっても綺麗!! 本当にすごいよ!!」

「アシュリー!! ルーク様の邪魔しないの!!」


 2人の掛け合いは、すでに俺の耳には入って来ない。



グオオオオオ! ギヤアアグウウ!!



 咆哮を上げると同時にグッと足の筋肉が強張ったのを確認する。


(右か……)


 判断すると同時に右に駆け出す。10メートル程の巨体を揺らし、俺の「火玉洗濯」を予想通り右に躱すオークロード。


 予想通りの動きに俺は勝利を確信する。


(よし。このまま『魔体洗濯デモン・ウォッシュ』で……いや、『水玉洗濯ウォーター・ウォッシュ』で、ドロップアイテムを狙うか……?)


 戦闘に慣れて来た俺は「欲」をかく。


 この一瞬の「気の緩み」とも呼べる、脳の弛緩がオークロードに選択の余地を与えてしまう。


アアギヤアア!!


 オークロードの咆哮すると、突然地面が揺れ、俺は体勢を崩す。

 次の動きは「大斧を単純に右から左に振るうだけ」とわかっているのに、躱そうと足先に力を入れるが、揺れる地面に俺の足先は空を切る。


(チィッ! クソ!!)


 俺は心の中で叫びながら、大斧の軌道を確認する。


(……よし。上体を逸らして、後方退避。一度立て直す……)


 俺は瞬時に判断を決め、予測軌道に変化がないか? に対して全神経を集中する。


「『竜装ドラゴ・リプレイスメント』!!」


キンッ!


 甲高い音がダンジョン内に響いたかと思うと、俺の目の前に、アシュリーの綺麗な赤髪が踊っていた。


 腕に黒々とした竜の鱗を纏い、オークロードの大斧を受け止めている。


「……ん? ……アレレ?」


 アシュリーは驚いたように目を見開き声を上げるが、オークロードの動きが止まった瞬間に俺は前へと、加速する。


「『魔体洗濯デモン・ウォッシュ』!」


 虹色の粒子が辺りを包み込み、オークロードを包み込み、一斉に群がり溶け込み、パッと黒い霧となって姿を消した。


ボトッ。


 オークロードの魔石が地面に落ちる。


「やったぁーー!! どう? 少しは役に立てたかなぁ?」


 アシュリーは俺に満面の笑みを向ける。


「全く……。ルーク様が上体を逸らし、立て直そうとしていたのが見えなかったのですか? アシュリー……?」


「えぇっ!! 僕、邪魔しちゃったかな……?」


 呆れているルシファーと顔を青くするアシュリー。


「……そ、そんなわけないよ!! 何か、今のすごく連携取れてたよね?! ルシファーが視覚をサポートしてくれて、アシュリーが盾役として的確な判断だったよね!!??」


 俺は先程の戦闘が、長年苦楽を共にしたパーティーの連携のように感じ、自然と笑みが溢れてしまう。


「ルーク様……」

「マスター……」


 2人は頬をほんのりと染め、少し困ったように瞳を潤ませる。


「えっ……? 俺、なんか変な事言ったかな……?」


「い、いえ! ルーク様の嬉しそうな笑顔に心臓がキュンとしてしまいまして……」


「ぼ、僕も……。マスターの笑顔が……とっても綺麗だなって……」


「ふ、2人共、何言ってるんだよ!?」


 次は俺が頬を染める番のようだ……。一気に顔に熱が湧いて来るのを感じた。


「……あっ。そう言えば、アシュリーは何で驚いてたの?」


 恥ずかしくなりながらも、先程のアシュリーの言葉を思い出し、声をかけたが、アシュリーは「ん?」と首を傾げる。


(か、……可愛い……)


「……さっき、大斧を止めた時に……」


「あっ! アレはねぇ。相手が後ろに吹っ飛ぶかな? って思ってたんだけど、すぐ近くに居たからびっくりしちゃっただけだよ?」


「……?」


「マスターのオーラに『やられちゃってる』だけだから、気にしないで? まぁ、この辺りの魔物だと、竜の鱗は絶対に傷つかないから安心してね?」


「……ん? ……『やられちゃってる』?」


「えぇ!! 自覚ないの!!? 僕も一応、魔物だよ? マスターのオーラで弱体化してるに決まってるじゃん!?」


「えぇ!! そうなの!!? ル、ルシファーは知ってた!?」


「……ルーク様。『魔物が寄りつかない』事や『ルーク様のオーラはすごい』と、私は、何度も、何度も、何度も、お伝えしていますが……?」


 ルシファーは唇を尖らせ、少し拗ねているように見える。


(冗談だと思ってた……って言ったら、なんかヤバそうだ……)


 俺は心の中でそう呟きながら、


「そ、そうだったね!! ごめん……忘れちゃってた! さ、さぁ!! ここを超えたら、28階層の街まですぐだよ? 2人共、行こっか!!」


 とこれ以上ルシファーの顔を見れず、上層への階段を登った。


「ねぇねぇ、僕は役に立ちそう?」


 と元気ハツラツのアシュリーと、


「私は何度も言ってるのに……」


 と少し拗ねているルシファー。


 

 2人が俺の後について来てくれている足音が、階段によく響いた。俺はとても嬉しくなってしまい、緩む笑みを抑えられなかった。




次話「勃発! 女達の戦い……」です。


【作者からのお願いと感謝】


ほんの少しでも、「面白い!」もくしは「次、どうなんの?」はたまた「更新、頑張れよ!!」という優しい読者様。


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この作品を【ブックマーク】してくれた方、わざわざ評価して頂いてた方、本当にありがとうございます!  


ジャンル別トップ5まで後少し……! あと一息、頑張ってくれー!! 

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