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103話 vs.ケルベロス

本日より、篠田ますく先生、作画の元、『どこでもヤングチャンピオン』6月号にて連載スタート!!



ーーーカタル



 ロイは常に身体能力を5倍に『倍化』して戦闘をし、ロアナは超スピードを生み出す『瞬歩』を連続して使用していた。


 2人の頭にあるのは、1つだけ。


(今は『獣ロ』も『鬼姫きき』もいない……。ケルベロス討伐は絶望的……)


 ケルベロスだけでも手がいっぱいなのに、得体の知れない者が2人。


 なんとかギリギリで冒険者達やカタルの住人を避難させる時間を稼げているのは、『クラップハンズ』のリーダー"サイモン・ベアルク"の力による物が大きいが、疲労は限界に見えた。





「ロイ! サイモン達を連れて離脱なさい! 逃げ回って時間を稼ぐわ!」



 ロイは、ロアナの言葉の意図はわかっている。


 それはきっと間違っていないし、スピード特化のロアナより、全身の力を向上させる自分の方が多くを救える事も理解している。



(……ロアナ、あなた……、まだルークに会えてない)



 自分達はルークに救われてしまった。やっと"過去"と折り合いをつけられたが、ロアナはまだルークに何も言えていない。


 かつて苦楽を共にした仲間の"諦め"をすんなりと受け入れる事はロイには出来ない。



「ロイ! 何を躊躇する事があるの! 早くしなさい!!」


「……ロアナ……! 私はロアナを死なせるわけにはいかない! ルークと……。ルークとちゃんと話ができるまで!!」


「……!!」


 ロアナの翡翠の瞳は揺れるがグッと唇を噛み締める。



「ルークのため……。サイモンはルークと仲良しなの。私はずっとダンジョンで見てきたの……!! もう、あの子から大切な人を奪うわけには行かない!!」


「あなたもルークの"大切な人"でしょう?」



 ロイの無表情ながら仄かに怒気を滲ませる綺麗な顔が、とても懐かしく感じながらも、ケルベロスからの攻撃を躱し続けるロアナ。



 頭の中にはルークの笑顔。



―――ロアナさん!



 ルーナによく似た笑顔。先を見据える紺碧の瞳がマインにそっくりなルークの瞳。


 最後に会いたい。ちゃんと自分の口で謝罪したい。



(でも、『カタル』は私の……、冒険者達の憩いの場でないといけないんだ……)



 ロアナは『瞬歩』による超加速で『重力の頭』を蹴り上げ、誘き寄せるように速度を緩めた。



「ロイ! 逃げ足は私の方が速いわよ?」



 ロアナは勝ち誇った笑みを浮かべ、ロイは少し瞳を潤ませた。



「ロアナ! 死んだら、殺、」



 そこまで言いかけて言葉を止めた。


 カタルの空気が一変した事に獣人ならではの第六感が反応し、それはロアナも同じである事を理解する。


 ロアナの涙が頬を濡らす。



「ロアナ! 一緒に時間を稼ぐ!」

「ええ! お願いするわ」


 お互いに言葉にする事はしなかった。


 『英雄』の到着は、安堵と万能感を与えてくれた。




※※※※※




ドゴォーン!!! ゴォオオオ! ピキピキッ!!



 3つの頭がそれぞれに意志を持ち連携している。

 グッと目を凝らし、ケルベロスの一挙手一投足を観察する。


 ロイとロアナの立ち位置、後方に転がる冒険者達。


 ケルベロスが俺の存在に気づき、どこか怯えているような感覚を感じる。



(……問題なのは、"アッチ"だな)




ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ



 超高速で入り乱れる剣士風の"異形"とアシュリー。


 意識をケルベロスに集中しながらも、『残りの1人』の動向に注視しつつ、小さく息を吐き、カタルの状況に神経を研ぎ澄ませる。



「《水玉洗濯ウォーター・ウォッシュ》……《火玉洗濯フレイム・ウォッシュ》……《突風ブラスト》……!!」


 持ちうる遠距離攻撃を24個ずつ創造し、ケルベロスの顔……、いや、跳躍して躱したところの4本の足を目掛けて一直線に飛ばす。



 ルシファーはだいたい救助を終えた。

 アシュリーはまだ笑顔で戦える余裕がある。

 サイモン達も起き上がって冒険者を扇動してる。


 ロイ先生とロアナさんは俺の邪魔にならないように、距離を取った。



シャキッ……



 村正宗を抜刀し魔力を込めると、ズズズッと"重み"が増したように感じる。



(行くぞ……!)



グジュッ、グジュッ……ブワッ!!



 俺の放った魔法が4本の足を吹き飛ばしたのを確認し、もう1段階ギアを入れる。


 問題ない……。次の攻撃は見えてる。



グゥウウウウウウアッ!!



「《魔法洗濯マジック・ウォッシュ》……」



 一瞬、肌に感じた《重力》をタイムラグなく処理して、グッと村正宗を握り込む、



キンキンキンキンキンッ……



 飛んでくる氷を叩き斬り、



ゴォオオオオオオ!!!!



 巨大な炎に村正宗の切先が触れた瞬間に、《洗濯》を済ませながら刀を振るう。



 巨大な炎を切り裂き、手の村正宗は光輝きながら巨大な斬撃を飛ばす。




グザンッ!!!!



 炎の頭を切り落とし、ドゴォーンッと大きな音を立てる。すると、ズズズッ……とケルベロスの魔力量が跳ね上がるのを肌で感じるが、もう遅い。




トンッ……



「《魔体洗濯デモン・ウォッシュ》……」




ブワァッ!!!!



 虹色の光の粒子がカタルに舞い、ケルベロスを包み込んでいく。足のないケルベロス……、重力の顔にははっきりと怯えが滲み黒い霧となって姿を消した。



(……ここにいるのか……? 本当に……?)


 ケルベロスを討伐し、アシュリーの援護に向かいながら、"あの女性ひと"の姿を探すが気配すらない。




ゴトンッ……




 鈍い音と共にカタルに落ちた歪な形をしたケルベロスの魔石など、見向きもせずにアシュリーに視線を移した。





〜コミカライズのご報告〜


本日、5月24日(火)の配信にて連載スタート致しました!!


『どこでもヤングチャンピオン』6月号

作画は篠田ますく先生です。


この作品を支えて下さっている読者の皆様、よろしければご一読のほど、心よりお願い申し上げます。


今後ともよろしくお願いします!

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