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102話 開戦

【コミカライズのご報告】


5月24日(火)に配信される、『どこでもヤングチャンピオン』6月号にて、篠田ますく先生作画の元、連載スタートします!


ご一読していただけると幸いです!



―――28階層 カタル




ガゥ、ガゥアッ、グゥウウ……



 目の前の獰猛な3つの頭にゴクリと息を飲む。話に聞いた通り、属性が違うように見えたが巻き散らかされるヨダレと、地面に転がっている冒険者達の死体に絶句したのだ。



「師匠!! 右から『炎』、『重力』、『氷』です!!横の2人! 化け物です!! た、頼みます! 俺達じゃ……」



 聞き覚えのある声にハッと視線を移すと、そこには疲弊しきった"サイモン"とクラップハンズのメンバー。


 一緒にお酒を飲んだエルフの"イル"は意識が無く、重症に見え、剣士の"ノイヤー"はボロボロの状態で俺を見つめて力なく微笑んだ。


「……ルークさん……、ハハッ、もう……大丈夫だ……」

「師匠……もう、『クラップ』は……出来ません」



ドサッ……



 意識を失ったノイヤーと倒れたサイモンに心臓がバクンッと脈打ち、大きく目を見開くが、



ドゴォーンッ!!



 カタルに響き渡る轟音に今もまだ戦闘中である事を理解する。視線の先にはロアナとロイの必死の形相。



(ロアナさん……。ロイ先生……)



 凄まじいスピードで戦闘をしている2人とケルベロスに、考える前に駆け出していた。



「ルシファーは息のある人達に回復! アシュリーは俺を援護しろ!」


「はい! ルーク様!」

「任せて! マスター!!」


 2人の声を聞きながら、少しゾクッとした物を感じて、初めて『ソイツら』を視認する。



 黒竜の翼に逆立った紫色の髪に黒々とした瞳に、鬼のような右腕と人間の腕の男と、両足は猛禽類濃い藍色の髪には角が生えている。顔の半分は無い剣士風の男。



(なんだ、この歪なヤツは……)



 大きく目を見開くと、ドッと周囲の空気が重くなり、



ゴォオオオオオオ!!



 巨大な炎が目の前に出現する。


 

「《魔法洗濯マジック・ウォッシュ》!! ロアナさん! ロイ先生!!」



ポワァア!!



 即座に反応し、重量を洗濯するが、触れられない炎はそのまま放たれる。



ゴォオオオオオオ!!!!



 駆け抜ける火炎の端からロアナとロイの姿が見え、ホッとすると同時に、2人と目があった。



「「ルーク!!!!」」



 2人はボロボロの装備ではあるけど、とりあえずまだ動けるだけの余力はあるようだ。


「すぐに援護に!! 今、行きます!!」


 まずはロアナとロイを助ける事に専念する事にした俺は、ケルベロスへの駆け出すが、視界の端で剣士風の男が動いたのが見えた。



(……今、お前に構ってる暇はない!!)



「《水玉洗濯ウォーター・ウォッシュ》 8連!」



 牽制で放った「水玉洗濯」に、



「《突風ブラスト》!!」


 

 今回のダンジョン攻略の前に買った魔導書。

 何度か試しておいた『風魔法』による加速を付与する。



ブォッ!!



 追い風に乗せた「水玉洗濯」はこれまでの比ではないスピードで剣士風の男に襲い掛かるが、全てを躱されながら、俺へと加速する。



「くっそ……!」



 足を止めるわけにはいかない。

 ロイとロアナは明らかに劣勢……。

 

 早くしないと……! 2人を失う……。



「アシュリー!!」



 俺は一言だけ叫び、剣士風の男を一切見ることをしない。



ガキンッ!!



 剣士風の男の剣はアシュリーに受け止められる音が響き渡るが、俺はケルベロスへと一気に加速した。




「……銀髪の男、ダメ……。お前、斬る……。」


「ハハッ……君に僕が斬れるかな? ちょっと、無理だと思うよ? 僕、いまマスターに頼まれちゃったからね!!」


 アシュリーの漆黒の瞳の中の瞳孔は竜のように縦長に変化した。




※※※※※



 アデウスの駒、ミュズウェルはギリッと一つ歯軋りをした。


(……あの豹人と狐人!! 何より、あそこの紫色の髪のガキだ! 『何か』してやがったな!?)


 ミュズウェルは、カタル襲撃にこれほど時間がかかるとは思っていなかった。




 憲兵団の屯所の配置のためにダンジョンを訪れていたロイとロアナの抵抗が時間を稼ぎ、ミュズウェル達をここで足止めする事になったのはAランクパーティー"クラップハンズ"の功績が大きかった。


 相手を前に、サイモンの『クラップ』は効力を遺憾無く発揮したのだ。的確な状況判断と現場の者達の指揮するサイモンは、手を叩くことで巻き戻される時間を有効に使い続けた。


(師匠ならどうする? 何を選択して、何を諦める?)



 サイモンの心の中にはルークの面影。

 一緒にノアへと帰還した時の戦闘が頭に焼き付いていた。



 (全てを救うような事はきっと自分には出来ない。

  でも、俺にできる事。ノアに"ミウ"が待ってる。

  死ぬわけにはいかない……!)



 サイモンは妹を思いながら、ルークの面影をなぞる。


 サイモンに絶対の信頼を寄せる、イルとノイヤーの未来を知っているかの戦闘に周囲は呼応し、ロイとロアナは即座に全権の指揮をサイモンに託した。



 サイモンは何度も"地獄"を見ながらも、心が折られないように必死だったが、『追放組』の到着に心から安堵し、その場に倒れたのだった。



(クソッ!! 計画は失敗だ! アデウス様に何と言えばいいのだ!)


 ミュズウェルの頭には『撤退』の2文字が過ぎる。目の前に現れた「アデウス様の獲物」であるルークに手を出す事は出来ない。


(ここは一度引いて、他の魔獣達と……)


 こんな失態をおかしてしまった事に頭が痛くなるが、



――あの者、アデウス様の……。銀髪、ダメ……。孤立させる。



 "バルノフ"の言葉と行動に光明をみる。



「あの赤髪……。そうだ……。アイツだけでも今のうちに殺しちまえば、アデウス様もお喜びになられるはずだ」



 ミュズウェルはバルノフと戦闘しているアシュリーに向かって超加速しようとしたが、繰り広げられるケルベロスと銀髪の男……、自分のご主人様の獲物の戦闘の始まりに、大きく目を見開き、絶句した。






〜コミカライズのご報告〜



5月24日(火)配信にて連載スタート!!


『どこでもヤングチャンピオン』6月号


作画は篠田ますく先生です。


この作品を支えて下さっている読者の皆様、本当に感謝申し上げます!! 今後ともよろしくお願い致します!

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