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100倍スキルでスローライフは無理でした  作者: ふれっく
第一章 銀髪の少女
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第二話 知らない場所でもボッチです

 何に対しても興味を持てず、自分自身の価値さえも分からない。所謂 クズ と呼ばれる存在の一人、それが俺月島裕斗(つきしまひろと)と言う人間だ。


 人間関係に馴染む事ができず、何時しか俺は部屋に引き篭るようになった。ネットサーフィンで一日を過ごし、気が向いたゲームに触れてみても長続きせず削除。

 そんな日々の中、ふと目に留まったのが [ Liberty(リバティ) hope(ホープ) online(オンライン) ] という オンラインゲームだった。世間では ( リバホプ ) と略して呼ばれている。

 それは俺にとって、今まで触れたゲームの中で一番面白いと思えるものだった。ちっぽけな存在でしかない俺でも、そのゲームの中でだけは何にでも挑戦したいと思えるほどに。


 リバホプの世界だけが、俺の存在意義だった。


 それ以来、起きている間は常にリバホプにログインし、ひたすらレベル上げや素材集めに時間を注いだ。時には、四日間ほど徹夜する事も珍しくはなかった。

 作業の様にも感じたが、少しずつ強くなっていく高揚感や強敵を倒した際の達成感が忘れられず、俺は常に上を目指していた。


 その甲斐あってか、気付けば俺はゲーム内でトップの存在となっていた。ステータスを測るランキング表では、全世界二位のプレイヤーの総合能力値が四十万ほどに対し、俺の数値は百万を超え、かなりの差を開けていた。

 優越感に浸る事もあったが、どんなものであれ努力の結果が認められたようで、ただ純粋に嬉しかった。


 そんな中、SNSや掲示板などで頻繁に見掛けるようになったのが"死神"と言うボスモンスターだ。

 少し前のアップデートで実装された期間限定クエストのボスなのだが、俺でさえ歯が立たなかった。


 巨大な鎌による範囲攻撃、低確率で出してくる即死スキル、しつこく重ね掛けてくる状態異常、HPの桁の多さ、更にはHPを減らせば自動回復をし始める始末だ。いくら技術や能力値で補おうとも、運悪く即死してしまっては意味が無い。

 何より致命的なのは、このゲーム内には即死耐性のあるアイテムが何一つ無いという事だ。

 ランキングの序列や能力値を計った上で実装したのであれば、ひょっとすると俺への挑戦か何かか? だとしても確実に能力の調整をミスっている、ゲームバランスの崩壊もいいところだ。


 だが、それでも俺は死神(ヤツ)を倒したかった。


 期間終了まで残り十三時間、新たに装備の強化や新調をしていては間に合わないだろう。挑むしかない、期間終了までひたすら挑み続けるしかない。

 食事も睡眠も、全て時間の無駄だ。


 勝機はある、────必ず俺が勝つ。


     ◆


「あれ……なんで外に居るんだ?」


 目を覚ました俺は、何処かも知らない草原で一人倒れていた。辺りに住宅などは無く、人の気配すら感じられない。

 記憶が正しければ、俺は部屋でゲームをしてたはずだったのだが……確か死神(あいつ)を倒し終えて、そのまま寝落ちしたんだっけ。


「だとしたら、夢……?」


 状況が上手く飲み込めないが、此処でいつまでも立ち尽くして居るわけにはいかない。

 とりあえず、先程から俺の背中を叩く何かを確認するべく振り返った。


「お、スライムか」


 そこに居たのは、ゲームなどでよく見掛けるスライムだった。俺を敵だと認識しているのか、地面を跳ねて何度もこちらに向かって頭突きを繰り返している。特に痛みはないが、見ていると可愛い。

 リバホプに居たスライムとは少し姿が違うようだが、愛嬌ある顔をしていて馴染みやすそうだ。


 ……………。


「え、スライム!?」


 ( ゲームのやり過ぎで、危うく現実との区別が付かなくなる所だった! 普通に考えておかしいだろこの状況!)


 混乱する中、急にぴたりとスライムの動きが止まった。……いや、大声を発した俺に警戒したのだろう。距離を空けたかと思えば、次は勢いよく俺に向かって飛んできた。


「いやまてストップ! それ多分死ぬってぇぇ!!」


 たかがスライム、そう思うだろう。しかし、いざ目の前にしてみれば怖い。それにゲームの中で戦っているのは俺ではなくアバターだ。ダメージを負っても、死亡しても、プレイヤーである俺たちには何も影響は無い。


 けど、もしこれが夢じゃなかったら……?


 俺は咄嗟に目の前まで迫ったスライムを右手で弾く……はずだったのだが。

 俺の手が当たった瞬間、スライムはまるで風船が割れるかのように破裂した。ちょっと叩いただけなのに。

 辺りを見回し、俺以外に誰も居ないと分かれば、ひとまず危険が去った事に安堵の息を吐いた。


「何なんだよ、一体……ん?」


 ここでようやく、俺は身体の異変に気付いた。


 ( なんか、俺の声変じゃないか? そういえば、いつもより目線が低いような…… )


 改めて自分の身体を確認すると、着ている服がいつもの部屋着では無い事が分かった。それともう一つわかったことがある。


「……な、なんか……胸デカくね?」


 見たところ少し膨らんでいる程度だなのが、男の胸板として見ると明らかに異常だ。


 ( まさか、さっきのスライムから毒でもくらったのか!? )


 青ざめた俺は咄嗟に自分の胸を何度か揉んでみた。


「うわっ、柔らかい……」


 手のひら全体に伝わる感触、癖になりそうな程の柔らかさ。まるでマシュマロのようだ……もみもみ。

 思えば、アレの感覚もない。男性特有の……股間についているアレの感覚が。まさかとは思うが……ひょっとして、この身体は女性のものなのでは?

 極めつけは今俺が身に付けている服だ。妙に見覚えがあると思っていたが、ゲーム内の自分のアバターに着せていたものと完全に同じものだった。


 (だから、多分、これってつまり……)


「……俺、アバターの身体になってる?」

稚拙な表現も多いと思いますが、少しでも「まあ、オモロいやん」と思って頂けると嬉しいです!


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