強き大魔王
我は大魔王である。
そんな我が勇者如きに負ける筈がなかろうと言うもの。
現に、勇者達は我に掠り傷一つしか傷つけられていないのだからな。
「くっ!俺達の全力を持ってしても掠り傷一つしか傷つけられないのか!」
ふっ。やっと気づいたか、数日も掛かるとは思っていなかったが、これで恐怖を刻めるな。
「フハハハハ、気づいた所で遅いぞ勇者達よ。ここは我の城だ。恐怖に駆られても逃げ出せないからな」
我は、恐怖を抱く声を心懸けながら、勇者達に語る。
「な、んだと……」
「……………」
「ブツブツブツブツ……」
「諦めては駄目です!」
勇者は恐怖の表情を、騎士は無言を貫き通しているが、兜の中は恐怖していることだろう。
女魔法使いは、恐怖から自身が信仰する神にでも祈ってるな。
しかし、聖職者は諦めが悪い。
ここまでの、圧倒的強者たる我の強さを前にひれ伏す所か、殺意満々な瞳を向けてくるとは、愚かとしか言い様が無いな。
「皆!離れて!」
「むっ!」
なんだこれは……魔力量が我に並ぶたど!
ちっ!魔力量から考えて強力な魔法である事は間違いない!ここはいったん離れるか。
我が魔法の射程距離から逃げようとした時、
「逃がさないわ!究極魔法%#&£●⊃↓⊃」
女魔法使いがどんな魔法を使ったのか我には分からなかった。
何故ならば、辺り一帯が光に覆われ、音が聴こえなくなったからだ。
それから暫しの間、我は意識を失った。
「うむ?……我は何をしていたのだ?………ッ!」
なんだこれは、我の王者として相応しい声では無いぞ!
まるで……くっ!
「(まるで幼い頃の我の声では無いかーー!)」
城全体に、可愛らしい男の子が響いた。
「ふふ…ふふふふふふふふ」
我の後ろから、悍ましい声が聞こえた。
我は慌てて振り替えったが、
「ひぃ!」
そこにいたのは先程、強大な魔法を放った女魔法使いだが、その瞳には我を獲物としてしか見ていなかった。
我は恐怖をした。
どんな怪物に会おうとも恐れた事すら無い我が、だ。
それ程までに、女魔法使いの瞳はどんな怪物よりも恐ろしかった。
「さぁ~、お姉さんと楽しみましょう~~」
瞳を爛々と輝さながら、ゆっくりと近づいて来る女魔法使い。
我は……我はその姿を見て、思い出した。
昔、母上に聞かされたおとぎ話を………






