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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幸せな者達の悲運物語

作者: まんどりる


 ああ何という悲運。



 晃博(あきひろ)里見(さとみ)は7年前、同じ高校のクラスメートとして知り合い、すぐに意気投合し友達同士となる。

 そして高校二年の春には二人は恋人の間柄となっていた。告白は里見の方から。ほかの友達数人と遊びに行ったあとの、二人きりの帰り道での告白だった。

 当時16歳だった二人は、高校生活という青春のほぼ全てをお互いに捧げた。彼らは朝も昼も夜もずっと相手のことを想っていた。それは周りの人間からすれば少々疎ましく思われていたかもしれなかったが、それでも彼らは本気で幸せだった。


 里見は晃博のそばにいれさえすれば他には何もいらないと思った。晃博は里見のことを一生命を懸けて幸せにすると心に誓った。二人の愛情はやがて恋人以上のものになり、いずれ二人は高校を卒業したら、結婚しようと考え始めていた。


 しかし愛というのは時に運命によって切り裂かれるもので、過去一度二人は大喧嘩を経験したことがあった。

 それは二人が大学一年生の時。里見の飼っていた小鳥のピーコと遊んでやろうと晃博が鳥かごを開けると、空いていた窓からピーコが飛び立ち、その後帰ってこなかった。

 晃博は必死に謝ったが、里見は顔も見たくないといい、二人は一ヶ月以上会わなかった。

 二ヶ月後には晃博がアルバイトで貯めたお金で買ったハムスターを里見にプレゼントした事で、二人の仲は再び結び直される。

 最縁してすぐの晃博の誕生日には、私も怒りすぎたと里見から手作りのリストバンドをプレゼントした。

 一度断絶されたものが修復されるとき、それは断絶される前よりも硬く強いものになるのだ。


 それからの二人の愛は急速に成長した。長い大学生活を終え、お互い別々の会社に就職した二人はようやく、4年前に果たせなかった結婚を成し遂げた。二人はすでに22歳。


 恋人から夫婦となった二人の間には既に一つの新しい命が生まれようとしていた。

 そして結婚式を計画。二人は式場や衣装選びをしていた。出会って7年のときが流れようと、二人は二人でいるのが幸せでならなかった。

 結婚式当日には二人は親族や友人よりも一足先に前日の夜から式場近くのホテルに停泊していた。美しい森林に囲まれた式場を遠目に見ながら、二人は心も身体も愛し合った。


 そしてその翌日。結婚式当日の午前7時。式場に向かうためタクシーの移動。二人は道中、運転手の不注意によるタクシーと対向車のトラックの衝突事故に遭う。

 トラックとタクシーの運転手はエアバッグのお陰で大怪我は負ったとのの一命はとりとめた。

 しかし後部座席のエアバッグが故障しており、衝撃により頭から全身の骨を砕かれた二人はその後近くの大学病院に救急搬送される。

 そして式当日の午前11時28分。晃博と里見は二度と戻らない人となった。



 ああ何という悲運。

 人はどれほど幸せなときであっても、運命には抗えないのである。


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