表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

11th Sword.

 

 ……翌日。


 こう見えても、私は一応高校生だ。

 山に囲われた田舎の、平穏で平凡な普通科の高等学校。


 そんな退屈という言葉がぴったりな場所の、教室という空間に、今私は居る。


「……風音(かざね)さんは『イレヴン』、まだやってないんだっけ?」


 私の前の席に座る女の子が話し掛けてくる。

 ……風音鈴(かざねすず)。それが私の名前。


「あー……、うんっ」


 こう返してはいるが、勿論嘘である。

 クラスでの会話のネタになると思い、VRゲーム、11th Sword(イレブンソード).。

 通称『イレヴン』を、こっそりと始めたまでは良かった。


 だけど、私は『イレヴン』をプレイしているという事を、クラスの誰にも話せない状況となってしまった。


 ……それはさておき、私は心の許せる友人になら、自分で言うのも何とも思わない位には承認欲求が強い方だ。


 褒めて貰えるのは嬉しい。認められるのが嬉しい。

 私という人間に、何かしらの価値を見出だして貰える事が、とっても嬉しい。


 だから私は、『イレヴン』で回復職(ヒーラー)となる事を選んだ。


「やろうよ、楽しいよ?」


「お金に余裕が出来たらね」


「まぁ、ハードは高いしねぇ。一緒に遊べるの、楽しみにしてるよ!」


「うん、ありがとう」


 こうして、なんとかこの場をやり過ごす事が出来た。

 私はこんな生活を続けて、そろそろ半年になる。


 ……『イレヴン』は、そのタイトルを表す十一本のレアな剣が存在し、それを求めて冒険するゲームとなっている。


 剣を求めるゲームなのだから、当然『イレヴン』では、剣士職が超が付く程に優遇されている。


『イレヴン』の運営が、剣士職でプレイする事を強く奨めている事もあり、『イレヴン』のゲーム内の職業比率は、剣士職が八割を占めていた。


 残りは私のような、役に立ちたがりなプレイヤーと、敢えて他の職業を自ら選ぶ物好きで二割が構成されている。


「……秋が近付いて陽が落ちるのが早くなって来た。部活が終わったら暗くなる前に速やかに、気をつけて帰るように」


 担任の一言で、今日も無事に、学校生活の一日が終わった。


「……あの、風音さん」


 ホームルームも終わり、学生鞄(スクバ)を手に取って席を立った私に、一人の男子から声が掛けられた。


「? えっと……、どうしたの? 都築(つづき)君」


 こうして話すのは、初めてになるんじゃないかな。

 確かフルネームは、都築柊(つづきしゅう)だったはず。


「今日、一緒に帰りませんか?」


「うん。私は良いけど」


 こうして私は、都築君と二人で学校を後にする事になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ