変ね。私
「何の用?」
私は目の前の男性プレイヤーに向けて、無愛想な言葉を飛ばした。
仮想世界とは言え、我ながらよくもまぁ、ここまで人に冷たく出来るものかと、一周回って褒めたくもなる程、自分自身に呆れながら。
「あ、あの……。僕とパーティを組んでくれませんか?」
「……はぁ?」
「ダメ、でしょうか?」
何言ってるの……と聞こうとしたけれど、よく見れば目の前のプレイヤーは初期装備。
誰かのサブキャラ……という線はないか。恐らくは、新参がたまたま目の前に居た私に声を掛けたという線が濃厚。
何故そんな結論に瞬時に至ったかなんていうのは簡単な事。
……『イレヴン』の世界で、私に近付こうなんていうプレイヤーは居ないから。
一応、確認はしておこうかな。
「私が他のプレイヤーに、何て呼ばれてるか知ってる?」
「い、いえ。ひょっとして有名なプレイヤーさんでした?」
有名も有名。超有名よ。
……悪い意味で、だけど。
「知らないならいい。私と一緒に居ない方がいいよ」
「どうしてですか?」
「私が変人だから」
……あまりこういった事を自ら口にして、わざわざ噂話のネタを作りにいくような愚かな人間では無いという自負はある。
けれど、せっかくの新参プレイヤーの『イレヴン』生活を、私とのプレイなんかで台無しにしても勿体無いというもの。
所詮はゲーム。ここで私が我慢すればいいだけ。
いいの、他できっちり発散するから。
「どこがですか?」
「あぁもう……。めんどくさいな君は! 私から離れて!」
「……お邪魔しちゃったみたいですね。すみませんでした。せめて、フレンドになってくれませんか?」
「わかったわかった。……私はカザネ。同じ名前のプレイヤーは居ない筈だから、適当に検索しておいて。それじゃあね」
私は名前も知らないプレイヤーに背を向けて、早足でエリスムの街を歩く。
……そういえば、他のプレイヤーに話し掛けられるなんていつ振りだろう。
人に避けられる内に、人を寄せ付けないように、息を吸うように人を避けるようになった。
「やっぱり、変ね。私」