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氷河期ダンジョン  作者: 賽子ちい華
第二部 ――覆った世界――
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宣言2


 落ちかけた意識を呼び起こしたのは、男の叫ぶ声だった。


 必死に叫ぶその声は、朦朧とした俺の意識でも、何か異変が起きたことが理解できる。



「た、た、たす……たいへんだ!!」


「――どうしたんだ!?」


「兵士たちが、人を殺しまくってる!!」


「なっ……!? 何のために!?」


「どこの話だよ!?」


「まぁちぃいい!! 街全部だょおおお!」



 ――男たちのそんな会話を聞く。


 ここにはギルドに寝泊りするような、浮浪者のような冒険者しかいない。


 彼らは日々を生きているだけで、何か起こっても事前の情報など持ち合わせていない。


 俺もまた同じであり、彼らの言葉の端々から、なんとか状況を掴むしかなかった。



「最近、俺たちに配給が回って来ないのは、外から来た難民のせいだ!

 革命軍が紛って入ってきてるって噂もあるし、兵士たちはあいつらを、処分しだしたんじゃないのか?」


 ――嫌な言葉が耳に入った。


 その言葉に、俺はすぐに立ち上がる!


 難民が襲われているのなら子供たちが……、バティスタ領で知り合いだった人たちが危ない!


 怠い身体を起こし、ギルドを飛び出す。


 向かおうという方向にはオレンジの光が見えて、さっきの言葉が正解だと、不安な気持ちは確証へと、心の中で変化した……








「殺せ、殺せぇええええ!」


「一人も逃がすなぁああ!!」



 炎が見えるその現場では、逃げ出そうとする人々を、兵士たちが斬り殺す……そんな、クソみたいな光景が目に入る。



「よっしゃ! 三人目ぇ!」


「若い女はいねーのかよ? つまんねーなぁ。俺は女をやりてーなあ!」


「ぎゃはははっ! 女とやりてーの間違いだろ……うぎゃあああああ!!」



 彼らの背後から、俺は雷撃を当てる。


 何か遊びに夢中になっているような彼らは隙だらけで、十数名を一撃で制圧することに成功した。



「な、なんだおまえは!? あ、やめ……」


 雷撃で死んだ兵士はいなかった。


 だから、痺れている彼らの顔に、ナイフを一人づつ突き刺してゆく。



「やめてくれぇ! ぎゃ……あ。」


「たす……ギッ。」



 助けを求める声に、俺は一つも応えない。


 全員にトドメを刺した先に、知った顔の姿があったからだ。



「ゼノ? 来て、くれたのか……?」


 死んでいる人たちの中で……一人の男が、そう尋ねた。


 彼は自分の妻と子を守るように抱き抱え、何本もの剣で刺されながらも……それでも、今の今まで意識を保っていた。



「――エリクサーだ。飲めるかい?」


「お、俺じゃなく……こいつらに……」



 俺は彼にエリクサーを差し出したが、彼は、彼が抱き抱える二人に飲ませるように、頼んでくる。


 だけど俺は首を振り、その頼みには応えない。――だって、彼が大事に抱いている二人には、もうエリクサーは効かないからだ。


 彼はすると涙を流した。


 そして、疲れ切った顔で聞いてくる。



「エリクサー……、あと、何本ある?」


「――これだけだよ。」


「ゼノ……、俺はいいよ。」


「ポーションならまだいくつか……だけど、あんたの傷はエリクサーじゃないと……」


「――ゼノ、わかるだろう?

 俺は……もう、いいんだ。それは別の誰かに使ってやってくれ。」

 


 ――彼もまた、俺に対し首を振る。


 そして、潤んだ優しい瞳で俺を見つめて声を高めた。




 ――意志を宿した真っ直ぐな瞳――




「ゼノぉ、俺はいい! だから代わりに誰かを、救ってやってくれ!!」


 その言葉に押されるように、俺は炎の中へと進んでゆく。――背中に死にゆく彼を、置き去りにしたままで……






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