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氷河期ダンジョン  作者: 賽子ちい華
第一部 ――神具の強奪者――
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導く者たち1


 巨大な魔獣たちが隣を闊歩する。


 そんな迷宮を、彼らを刺激しないように、静かにゆっくりと……そして平然と、歩いてゆく。


 リリスは俺のマントを掴んで、不安そうに周りを見ながら、後ろをついて来てくれる。



「それでいいよ。俺の近くにいて、あまり物音を立てなければ、魔獣たちは襲ってこない。」



 安心させるように、そう話しかける。


 リリスは不安な顔で俺を見上げたが、少し微笑みかけると、唾を飲み、コクリと返事をしてくれた。



 地下五十五階、六十六階はポーションだけを回収――そして、目的であった地下七十七階へ。


 地下七十七階も、ほかのゾロ目の階と構造は変わらない……だけど一点だけ、ほかとは違う場所があった。


 分かれ道を右手に曲がった先。


 ほかの階なら試練を受ける広場になっているその場所に、大きな光のカーテンがあるのだ。


 不安がるリリスを引き連れて、俺はその光のカーテンを通り抜ける。




「――ゼノか。久しぶりだな。」



 カーテンの先は神術エネルギーに溢れ、白く、どこまでも広い空間があった。


 その「上空」から、野太い声が降り注ぐ。



「仲間連れとは珍しい。」



 話しかけてくる、男の声。


 リリスは俺にしがみついて、男の声がする上空を見上げた。


 俺もまた上空を見上げ、その声の主に挨拶をする。



「――久しぶりだな、神竜。」



 上空には白く輝く巨大な竜がいて、四本の大きな翼を広げ、白い空を飛んでいた。


 ――この地下七十七階の主、神竜である。



 俺は、その主に断りを入れる。



「エリクサーを貰っていくが、構わないか?」


「ハハハッ! 強盗が断りを入れるのか?

 構わんさ、とっとと持っていくがいい。」



 許可を得てから空間の中心へと歩く。


 リリスは俺のマントを掴んで、素直について来てくれた。


 この広大な空間で、真ん中と呼べるかはわからない……


 だが、目指したのは、白い空間の真ん中――そこに、ポツリとある台だった。


 その台には、緑の液体の入った小瓶が……エリクサーが安置されている。


 俺はそのエリクサーを掴んで、カバンの中にしまい込んだ。



「ありがとう、神竜。」


「ハハハッ! お前の礼は気持ち悪い。俺はただ、仕事をサボっているだけだ。

 ――ゼノ、神具は全て集まったか?」


「ぼちぼちだ。」


「なんだ……夢追い人は続けているのか。

 なら、攻略者は集まったのか?」


「全然だ。」


「はっ! 独りよがりのお前らしい。」


「別に他人を巻き込みたいわけじゃない。でも、少しは夢をみたっていいだろ?」


「本気じゃないアピールね。

 結果も出せず、儚い夢を追いかけて、いつまでも、独りよがりに足掻くがいいさ。

 ――ハハッハハハハハハハハッ!」



 上空からの神竜の言葉、笑い声。


 嫌味を言われ、俺は苦笑いをする。



「そういえばこのあいだ……久しぶりにお前以外のやつが、その扉から入ってきたな。」


「この迷宮の……カストロ領から?」


「人が名付けた土地の名など知らん。

 若い男だった――お前より強いな。」


「へえ……」



 おそらく神具を持ち出した、マルスという貴族の話だろう。


 あの髭の男と話した時に確認は取らなかったが、単独で潜って迷宮を攻略したということか?


 ならば、俺より強いのは間違いない。



「なんだゼノ、物思いにふけって……もしかして、神具をあの若い男に持っていかれたのか?」


「そうらしい……」


「ハハハハハハッ! 一人で頑張っているフリをして、他人に先を越される。なんとも滑稽でお前らしい! ハハハハハハッ!」



 この神竜の部屋へは、世界中のどの迷宮からも繋がっている。


 ただし、一つの迷宮で手に入るエリクサーは、生涯に一人、一つだけ。


 近いうちに別の入口から舞い戻り、また、この竜の嫌味を聞く羽目になるだろう……


 ――俺は、神竜に別れの挨拶をした。



「また、近いうちに来るよ。」


「ハハッ。お前の顔など見たくないわ!」



 別れの挨拶にも、嫌味で返す白い竜。


 苦笑いを浮かべるしか、俺には上空からの声に抗う術は無い。


 そんな挨拶を済ませ、リリスと共に広大な光の空間を後にする。


 光のカーテンを抜けて、十字路を真っ直ぐに行けば、やはり、ポーションの置かれた台と、地上へと続くオーロラの扉があった。


 エリクサーを少し消費した上に、ポーション四本を徴収されるか……


 しかも、この子を連れて行くなら、偵察たちがどう反応するか……?


 損では無いが、素直には喜びづらい――そんな、今回の迷宮探索の成果。


 それを確認しながら俺は光のカーテンを通り、地上へと戻ったのだ。






「――ゼノさん!」



 光のカーテンを抜けた先で、明るい女性の声した。


 俺の帰還を歓迎する、可愛らしい声だ。




『ギルドの建屋』


 内装は酒場のようだが、実は迷宮の地上一階に当たる。


 中央に、迷宮へと降る階段があるのだ。


 その階段の前に光のカーテンが出現し、そこから、迷宮からの帰還者は現れる。


 ――俺たちも、そんな感じなのだろう。




 帰還した俺たちは注目を浴びた。


 俺は周りの目を無視するように、可愛らい声の聞こえた右の方を向く。


 そこにはギルドの受付。ポニーテールの女性がいて、可愛い笑顔を向けてくれている。



 俺は彼女の元へと歩み寄る。


 カバンから小瓶を出しながら、彼女へと話しかけた。



「持ち帰ったポーションは七本……だから、四本をギルドに納めるよ。」


「な、七本! す、すごいです!

 わたし的新記録です。ゼノさん!」



 反応の可愛い彼女に、契約のポーションを渡す。


 その時当然に、俺の後ろにいる、金の髪の少女に彼女は気づいてしまった。


 彼女は俺越しに笑顔で、後ろのリリスに手を振っている。



「その子、どうしたんですか?」



 そして当然に、そう質問をしてくるのだ。


 俺は少し寂しげな微笑みを作ってから、それにはこう答えてみせた。



「さっき、もう一度迷宮に潜ったのは、この子の主人のアジールさんが、無理に迷宮の奥へ潜ると言い出したからなんだ。」


「そ、そうだったんですね。」


「俺はあの方と仲違いしてしまってね。でも、心配だったんで探しに行ったんだ。」


「ゼノさん、責任感ありますね。」


「………………。

 ……けど、アジールさんのパーティーは全滅してしまっていて、この子だけ生き残っていてね。」


「そうなんですね……大変だったんですね。」



 可愛い彼女は悲しそうな顔で、俺の話しに納得する。



「信用できる孤児院を知っているから、これから、そこに連れて行こうと思っている。」


「ゼノさん……。優しんですね。」



 彼女は涙を流し、話を受け入れてくれた。


 ――すごく良い子だな。この子……




 そんなやりとりで、俺はギルドとの契約を果たした――もう、ここに用は無い。



「また来てくださいね、ゼノさん!」



 明るい彼女に見送られながら、リリスを伴ってギルドをあとに……



 ただ、気になることが……


 彼女の他にあと二名。熱い視線を俺に送る者があったのだ……



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