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氷河期ダンジョン  作者: 賽子ちい華
第二部 ――覆った世界――
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迷宮の覇者1


 夜も深いというのに、ギルドの周りには兵士が数名――気にせずに中に入れば、今度は偵察が動きを見せる。


「警戒されているようだな、ゼノ。

 仲間への連絡に……行ったかな?」


 サンゲンが、俺を見つけて声をかけてきた。


 二名の偵察がいたが、ともに外へと出て行った……どうやら仲間を、呼びに行ったらしい。



「潜れそうかな?」


「問題無いと思うぞ。さっき『お前の仲間』が来て、ギルドマスターと話をしていた。銀の髪をした、男のような格好の、あの娘だ。」


「ティクトが?」



 俺にはティクトが何をしに来たのかは、わからない。


 とりあえず、サンゲンと二人受付に――


「とっ、特級冒険者二人のパーティー……」


 受付の女性は判断に迷い、ギルドマスターの方を見て判断を委ねている……


「はい、ようこそ。特級のお二人に注意事項等の説明は必要ありませんね!」


 ――が、すぐに了承されたらしい。


 その後は、ポーション徴収のための契約を、ギルドマスターと結ぶ手続きだ。


 その時にギルドマスターの男が、俺に「かんざし」を、チラリと見せた。


 あいつら……


 どうやら女たちの手の中で、俺は、転がされているらしい。――根回しに感謝と感心をしつつも、彼女たちの腹は読めない。


 しかし、俺は素直にそれに乗り、迷宮へと潜るしか、選択肢はなかった――






 サンゲンと二人のパーティーだ。地下九十九階にでも、すぐに到達できるだろう。


 だけど、この迷宮に潜るのには、ただ潜るだけではない……幾つかの目的がある。



「どうした? こんな所で立ち止まって?」


 ――サンゲンが、聞いてくる。


 地下二十三階へと降りた階段のすぐ下で、俺は止まって、振り向いた。


 上にあるエネルギーを感じれば、何名かの冒険者が下へ……こちらに向かって降りてくるのを、感じ取れる。


「ゾロ目の階の下でやる事といったら、昔から一緒じゃないのか?」


 冗談半分で聞いてみたが、サンゲンはわからないという様子だ。


 見れば思い出すだろうと、答えは言わずに待っていれば、階段から一人の男が降りてきた。


「お前だな、カミュ様を襲ったのは!

 カミュ領最強のこの俺……がっ! げふ!」


 俺は男に回し蹴りを決め、手刀で武器を落とさせた……その後は、ひたすら顔を平手で殴る。



「なっ!? ぎゃっ! や、やめ――」


「おい、ポーションを寄こせ。」



 サンゲンと違い男の方は、迷宮の名物を知っていたらしい。


 素直にポーションを差し出して、上の階へと去っていった――





「ごめんなさい! 殺されないでください!」


 次に来たヤツにも、その次に来たヤツにも、俺は同じように対応をする。


 そんな俺に、サンゲンは尋ねてくる。



「ゼノ、さっきから弱い者イジメなんぞして、どうしたんじゃ?」


「コイツらは俺を追って、我先にと入ってきた。単独なり少人数でな。このままさらに追ってくれば、迷宮で迷って、魔獣にやられて死ぬぞ。」



 そう答えれば、サンゲンは納得した様子。


 巨体で、筋肉ムキムキのスキンヘッドが、ニヤリと口角を上げて言葉を返す。



「なるほど!

 ここで先輩冒険者から、若者に、冒険の厳しさを教えてやろうと言うんだな!」


「いやあああああああ!!!!!!」


「助けてくれえぇええええ!!!!!!」



 その放たれる言葉だけで、やって来た冒険者たちは逃げていく。


 フィリアを仲間にするのなら、彼女の仲間から被害を出したくは無い。


 それにポーションは欲しいし、戦争回避のために、彼らの戦意や戦力は削っておきたい。


 そんな考えからの行動だったが、黒マントの男と、厳ついスキンヘッド――


 かなりヤバイ輩に見えた、ことだろう……





 十数組からポーションを奪ったところで、フィリアが走ってくるのを感じ取る。



「次のやつは中々骨があるのぉ……

 魔獣を瞬殺しながら走ってきとる。」


「あの子が俺の『お目当て』だよ。

 魔神と戦う契約は交わしてある。後は、ここの神具を、あの子に手にしてもらうんだ。」



 ――フィリアの声が、聞こえてきた。


 地下二十二階で、俺たちが「いじめた」ために、上に逃げた、仲間たちの介抱や、指示を行なっている様子だった。



「フィリア、終わったらついて来い!」


「ゼノ、そこにいるんですか!?」



 そう、声だけで会話をしていたら、サンゲンが聞いてくる。



「女か?」


「そうだけど……」


「若い女か?」


「ああ、可愛い二十歳くらいの娘だ――げふ!」



 ――答える途中に、腹に衝撃が走る!


 サンゲンが、俺の腹に拳を入れてきたのだ!



「な、何を……」


「先輩冒険者から、若者に、冒険の厳しさを教えてやろうと思ってなっ!!」



 ――それは、何の冗談かはわからない!


 だが、いざ自分がやられてみると、それは、とても恐いものだった。


 迷宮名物「洗礼」の恐ろしさを、俺は初めて、思い知ったのだ……





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