表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷河期ダンジョン  作者: 賽子ちい華
第二部 ――覆った世界――
34/51

新しい住処2


 ――話し合いを終えた夜。


 屋敷の大きなテーブルで、来客二人を交えて食事を摂った。


 ここに来てから子供たちは、食事も――何もかもが楽しそうで、食事の後の団らんも、賑やかな雰囲気に溢れていた。



「マリーさん、今日はどんなルールで鬼ごっこします?」


「お姉ちゃん、わたし、隠れんぼがいい!」


「おお!? じゃあオレが、鬼ごっこと隠れんぼの合体した、面白い遊びを教えてやるぜ!」



 屋敷の主人マリーは、ガキ大将という感じで、一緒になって遊んでくれるので、子供たちは、とても懐いている。



「お姉さん、冒険の話、聞かせてください!」


「いいよ。じゃあ、私が初めて迷宮を攻略した日の話をしてあげよう。」


「え? この綺麗なお姉さん、冒険者なの!?」



 来客の一人ミリアンも、優しいお姉さんという雰囲気で、子供たちに囲まれていた。



 ――だが、一人。


 来客のもう一人、ガムだけは調子が悪いようで、入口側――テーブルの端に、ポツリと座って、なにか暗い雰囲気を出している。


 たぶん、生理だろう。


 朝の話し合いから、機嫌が悪かった。

 食事もほとんど食べなかったし……


 カラフルな髪に暑化粧のガムは、離れていても目立っているが、彼女に近づく者は、誰もいなかった……



「やっぱり、こんな大きなお屋敷に住めるなんて、ステキ!」


 女の子の一人がそう言えば、マリーは気前のいい言葉を返す。


「ずっと住んでていいんだぜ!

 ここは、オレとゼノの家だからな!」


 そんなマリーの言葉に、俺は返した。



「泊まらせてもらってるのは、ありがたい。でも、ここは俺の家じゃない――その内に、出て行くぞ。」


「ええぇ!? わたし、ここがいい!」


「ボクも、このお屋敷がいいよお!」


「なんでだよ? お前、オレのこと好きだろ?

 なら、ずっと一緒に住もうぜ!」


「地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ……」



 子供たちやマリーとの、賑やかな会話の隙間から、呪いの言葉が聞こえてくる。


 聞こえた方を見るが、その言葉を放ったガムが虚ろに下を向き、なんの反応も示さない。


 生理がきついのか?

 相当、イライラが溜まっているのか?


 とりあえず、こういう時はそっとしておくのが良いだろうと、俺は無視を決め込んだ。



「おねーさんじゃないよ!

 あたしがゼノさんのお嫁さんになって、どこか小さなおうちで、一緒に暮らすんだよ!」


「違う! わたしだよ!」


「違う、違う! アタシだよお!!」


「ゼノさんのお嫁さんは、私が……」



 女の子の一人がそんなことを言い出したら、ほかの女の子たちが争いだす。


 それに俺は、断りを入れた。



「俺は、誰もお嫁さんになんてできないよ。

 歳も離れているし、死ぬかも知れない……」


「やだぁあ! ゼノさん、死なないで!」


「ゼノがおじさんでも、お嫁さんになるぅ!」

 


 俺が死んだり、歳をとるくらいなら良いが……この子たちに、未来はあるのだろうか?


 そう思った俺は、雰囲気に合わない言葉を放ってしまう。


「みんな、とにかく生きてくれ……なんとか足掻いてみるが、何も変わらなくて、今より酷い時代が来るかも知れない……でも、生きてくれ。」


 ――つい、本気になった。


「みんないい子だから、生きていればきっと、素敵な相手に巡り合える!

 大切に想ってくれて、本気で守ってくれる……そんな人に出会えたら、その人のお嫁さんにしてもらうんだよ――」


 空気を読まない言葉だったが、子供たちはみんな、真剣な顔で聞いてくれた。


 そして、俺へと応援をくれるのだ。



「ゼノさん、魔神倒してね!」


「絶対、ゼノさんも勝って生き延びてね!」


「アタシが大人になるの見ててよ!」


「ゼノさん……私も……たたかう……」


「地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ! バカ……」



 そこに、ミリアンが声をかける。


「君は子供たちを、とても大切にしているんだね。――君が東の地で暴れていたというのも、赤い髪の……ラナさんを、守りたかったからだろう?」


 ――守りたかった?

 ミリアンの言葉には、違和感を覚えた。


 違うな……。

 あの頃の俺には、そんな余裕も無かった……


 俺は正直に、その頃の気持ちを話す。



「違うよ、ミリアン。守るなんて、いいもんじゃない。俺は俺自身のために、ラナを失いたくなくて、ただ、必死だったんだよ……」


「地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ、地獄に落ちろ! 死ね……」



 今度はマリーが、俺の顔を指でつつきながら、言ってくる。


「ケッ! お前、みんな大切なんじゃねーか。

 どうせミリアンも、大切だぁあとか思ってんだろ、浮気者!」


 その言葉もまた、違うと感じる。


 俺はミリアン……俺の「同類」への気持ちを、ひねくれた言葉で表現した。


「はっ! こいつのことは、お前やみんなと違って、俺は大切になんて思っちゃいないよ!」


 ――悪いが事実だ。


 俺はミリアンを見て、嫌味な笑みを浮かべながら、ハッキリと言ってやる。


「お前は、ほかとは違う――特別だ。

 俺が死んだ時は、次はお前が跡を継いで、そして死ね! 一緒に地獄に落ちるんだ!」


 ――俺の本気の嫌味。


 だけど、黒髪の美人は軽く流す。

 優しい微笑みで、返すのだ。


「ああ、構わないよ。

 ――地獄に落ちよう、君となら……」


「ああああぁぁああああああ!!!!

 死ねぇぇええ! 地獄に落ちろぉぉおお!」



 ――ガムが、激しい雄叫びを上げる!


 ついに、壊れたのか……叫びながら、椅子から転げ落ちたガムは、解けた長いカラフルな髪を振り回し出したのだ!


 崩れさった髪型の、異様な色をした髪には、かんざしという棘が沢山刺さっている……その姿は、異形の魔徒よりも恐ろしい。


 ――そんな怪物は、叫び出す!



「どれだけ罪を重ねるんだ! 大罪人がぁあ!

 だから、あんたと一緒にいるのは、嫌なんだよぉぉおお!!!!」


「こわいよお!」


「うわぁああああ!!!!」



 俺のこれまでの罪を問う、怪物。


 その出現に子供たちは、テーブルから飛び離れて、部屋の端まで逃げ、身を寄せる!


 チェッチェは黒い羽を生やして、部屋の中を飛び回って逃げていた!





 ――暴れ回る怪物が、落ち着いた頃。


 ラナだけが無表情で、彼女にゆっくりと近づいて、その背中を優しく撫でた。



「ガムさん、お風呂、一緒に入ろう。

 ここのお風呂大きいから、落ち着くよ。」


「ごめん、ラナちゃん……

 ――私、アイツを殺したい……」


「うん、気持ちはわかるけど、ダメ……」



 そんな会話をしながら、ラナは、カラフルな髪の怪物を、部屋から連れ出してくれた。


 大部屋には凍りついた雰囲気だけが残り、最近の楽しげな雰囲気は、――その夜、戻ってくることは無かったのだ……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ