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氷河期ダンジョン  作者: 賽子ちい華
第二部 ――覆った世界――
33/51

新しい住処1


 バティスタ領の騒乱の後、俺は子供たちを連れて、スターリン領に移った。


 今まで住んでいたスラムの家とはガラリと変わり、大きな屋敷に住まわせてもらう生活。


 昨日に、ガムから話し合いがしたいと言われ、朝から、その屋敷の一室でメンバーを待っていたら、暑苦しい相手にからまれる。


「助けてくれよ〜、ゼノ〜。

 お前、オレのこと好きだろぉお?」


 わけのわからないことを言いながら、抱きついてくる裸同然の娘。



「ゼノさん嫌がってるじゃない!

 それにゼノさんが、お姉さんを好きなわけないじゃない!」


「オッパイ! オッパイ! 大きい!」



 その暑苦しい娘を俺から引き離そうと、小さな女の子と男の子が、奮闘してくれた。



 胸と尻だけを、紫色の布で隠した破廉恥な格好。――そんな姿で抱きついてくるのは、紺色のふわふわツインテール娘、マリーだ。


 マリーが俺に助けを求めているのは、このスターリン領に、隣の領地が攻めてこようと準備している……そういう噂があるから。


 ガムの言う話し合いというのも、まあ、それについてだろう。


 この屋敷の主人――スターリン領の領主になろうというマリーにとっては、重要な話だった。



 はっきり言って、「バカ」であるコイツに、領主が務まるとは思えないのだが……



 そのマリーの太ももを、金色の髪の少女が引っ張っている。


 それと、黒髪の少年が、マリーの大きな胸にしがみつき、喜んでいた。


 リリスと、チェッチェ。


 ティクトに言わせれば、俺は幼児誘拐の常習犯らしいが、確かにそうで……最近、俺が連れてきてしまった二人だ。


 ほかの子たちはラナと一緒に、別の部屋にいるのだが、なぜだか二人は俺についてきた。



 話し合いの間、この二人はおとなしくしてくれるだろうか? ――特にチェッチェ。


 まあ、俺自身も、あまり話に興味は無いのだが……

 

 この領は、領主であるスターリンが圧政を敷いていたが、俺が殺したので、今は領民たちが、革命軍と協力して治めている。


 今後は、マリーを領主として、ここを治めていくつもりだそうだ。


 ――だが、国はここの統治を認めない。


 隣のカミュ領に命じて、戦争の準備をしているらしく、緊張状態らしい……



 確かに、子供たちを、危険に晒すわけにはいかない。


 だが、戦争をどうこうするよりも、別の場所に移る選択の方が、俺には現実的だった。





 ――しばらくして、四人の女が現れる。



「――ずいぶんと賑やかだねぇ。」


 そう言って、部屋に入ってきたのは、背の低い女――ガムは相変わらず、山のような髪型に、かんざしという髪飾りを沢山つけている。



「君は、子供といる時が一番幸せそうだね。」


 ミリアンはそう言って、優しくこちらに微笑みをくれる。


 長い黒髪の美人だが、今日は女性らしい服装で、余計に美しさが際立っていた。



「ゼノ〜、久しぶり〜♪」


 チャラけた声で挨拶するのは、銀髪パーマの少年のような少女――情報屋のティクトだ。



「ゼノ殿、お元気そうでなによりだ。」


 そして、予想外の人物が……


 男物の騎士の制服に身を包む、金色のポニーテールをした貴族の娘、ローゼンも現れた。



 なかなかカラフルなメンツが集まった。


 あの騒乱以来の集まり――これまで彼女たちは、その処理に奮闘していた……らしい。


 ガムとミリアンは、ここやグラッツ領の統治安定と、アムス領主との交渉に奮闘。


 ローゼンたちセントールは、混乱を治めたバティスタ領を、そのまま統治するため動き、ティクトはそういった事を都合良く、王都側に、情報を流しに行っていた……らしかった。





「ミリアン、似合っているな――綺麗だ。」


 ――つい、口に出た。


 普段は、黒い甲冑とマントを羽織っているミリアンだったが、今日は普段着。


 質素だが、女性らしい亜麻色の布着を着けていて、その美しい曲線美が目を引いた。



「君は、女性を褒めるのが上手だね。」


「そうでもないさ。珍しかったんだよ、俺の周りには変な格好の女が多くてな。」



 ミリアンに答えるついでに、ほかの女たちに対して、嫌味を言ってみる。


 だけど、気づいて目を逸らしたのはガムだけで、ローゼンはキョトンとしているし、ティクトはわかってもむしろ、ニヤニヤと笑っている。


 マリーもチェッチェを抱いて微笑んで、自分には関係ないといった顔だ。


 しかし一人……


 俺が想定していなかった相手が、予想外の反応を見せる――


「女の子ばっかりが……いっぱい……」


 ――リリスが、ぼそりと呟く。


 見知らぬ人間の多さにリリスは、ボーっと立っていたのだが、そこから思わぬ行動に出たのだ!


「ねえ、ゼノさん、私、強くなったんだよ!

 見て、見て! パンチ、パンチ!」


 急に子供っぽく暴れ出す、リリス。


 得意のヒットアンドアウェイで、俺の足を殴っては離れ、遊んでくれとアピールだ。


 ――痛い!


 話し合いが始まろうというのに、それはないだろう、リリス!


 そんな子じゃないと思っていたが……


 叱ってやらねばと、俺は叫ぶ。



「リリス!」


「ゼノ、怒るんじゃないよ!」



 叱ろうとしたら、それを大声で止められた。

 ――ガムが、リリスをかばい叫んだのだ。


 俺もリリスも驚いて、ガムの方を見れば、ガムは静かに諭してくる。


「ゼノ、リリスちゃんを膝の上に座らせてあげなよ。その子はあんたが連れてきて、間もないんだろ? 淋しい――そういう年頃なんだよ。」


 ガムはそう言って、ウインク。

 リリスに、合図を送っている。


 正しい意見なのだろう……


 リリスもおとなしくなったので、俺はそれに従って椅子に腰掛け、リリスを膝へと促した。


 リリスは少し恥ずかしそうだったが、素直に座ると、足を揺らして嬉しそうにする。


 その可愛らしい仕草に、俺はさっきの怒りを忘れ、リリスを軽く抱きしめた。


「リリスちゃん……その男は地獄に落ちるやつだから、あんまり、のめり込むんじゃないよ……」


 嫌味混じりの言葉を、リリスに告げるガム。


 でも、俺は言い返さない。


 なぜなら、ガムの黒い瞳に、優しさと淋しさが見えたからだ。

 


「――で、何の用だ? 隣のカミュ領が攻めてくるってのは、マリーに聞いてはいるが……」


 話を進めようと聞いてみると、それにはまず、ミリアンが答える。


「彼女が、君の頼みならば聞いてくれると言っているのでね……」


 ミリアンが示した相手はローゼン。


 金の髪を垂らした美しい少女は、何も言わず、笑顔をこちらに向けている。



「ゼノ、ローゼン様に頼んでおくれよ!

 革命の、バックアップをして欲しいとさ。」


「革命?」



 ガムに言われて、俺は疑問を返した。


 革命などに興味がない俺に、そう言われても意味がわからないが、ガムは続けてくる。



「このスターリン領を治める後ろ盾とさ、小麦を私の商会にも流して欲しいんだよ。」


「何で、そんな必要があるんだ?」



 話が平行線になりそうなのを見兼ねてか?

 ティクトがフォローに入る。


「ねえゼノぉ、ローゼン様たちがバティスタ領を治められるんだよ。

 ゼノは、やって欲しいことは無いの?」



 ――なるほど。


 大貴族セントールを巻き込みたいガムの思惑で、ローゼンを呼んだというわけか……


 だが確かに、バティスタ領をセントールが治めるのなら、俺からも願いたいことはある。



 少し考えて、俺はローゼンに頼み事をした。



「ローゼン、教会を守ってくれないか? それと、教会まで通いやすいようにして欲しい。」


「承知したよ、ゼノ殿。」



 ローゼンはすぐに、にこやかに、了承してくれる。――そこにガムが、さらなる注文を……



「ゼノ! 後ろ盾と小麦の件も頼んだよ!」


「後ろ盾と小麦?」


「アムスとはこれまで通りに、商売や通行ができるように交渉は成立したよ!

 後は、セントールが後ろ盾になってくれれば、ここが安全な場所になる!」



 なんとなく理解して、ローゼンに確認する。



「なあ、ローゼン。

 後ろ盾に関してはそんな話らしいが、そっちはそれで困ることはあるか?」


「さすが、ゼノ殿だ。こちらの事情を考慮いただけるのだね。

 そうだなぁ……、私はミリアン殿たちを危険だとは思っていないのだけれど……」



 ローゼンはミリアンの顔色をうかがうようにしながら、言葉を選んで返事を続ける。



「セントールは代々王都を守る、騎士の家系だ。だから、革命軍と組む、このスターリン領と手を組むことは難しい……

 もちろん――ゼノ殿が言うなら別だよ。」


「どこまでならできる?」


「アムス領とは、友好と不戦は結べるよ。

 ここと、元バティスタ領とは繋がっていないから、これで実質、こことも不戦には……」



 ローゼンは、歯切れの悪い返答だ。

 そこに、ガムがつっこんでくる。


「それは、王都から命が下れば、ここに攻める可能性もあるって意味だろう!」


 叫んだガムを見る、ローゼンの顔は暗かった。


 ローゼンを敵に回したくはないが、その場合は仕方ないか……


「ねえ、ゼノ様ぁ〜」


 そこでティクトが、俺に耳元で、静かにささやいてくる。



「セントールが戦わないって宣言するだけでぇ、王都は困っちゃうはずだよぉ。

 何かあったらさぁ、ほかの貴族や、自分の兵力をね、出さなきゃいけなくなるんだよぉ。」


「だから、どうした?」


「そしたらさぁ〜、いっぱい出てくるよね♪ 神具を持ったやつらがさぁ〜。貴族の神具、王都の神具が取り放題だね♪」



 俺は、ティクトの言葉に聞き入った。


 神具を奪うチャンスが増えるなら、そういう状況はぜひ欲しい――自然と体に力が入る。



「ゼノさん!!」


 そこで急に、リリスが叫んだ!


 どうやら、俺はティクトの言葉に興奮してしまい、リリスを力一杯に、抱きしめてしまったらしい。


 苦しくかったのだろう……


 膝から飛びのいたリリスの顔を見れば、耳まで真っ赤になっていた。



「リリス、すまない。」


「だ、大丈夫……ちょっと……お水、飲んでくるね……」



 金の髪の少女は、小さく答える。


 そして、苦しそうな赤い顔のまま、駆け出しては一度コケて、部屋から出ていったのだ。



「――地獄に落ちろ、『バカ』」


 ――ガムの嫌味だ。


 リリスへの、俺の所業に対してだろう。


 初対面ながらも、ガムはリリスのことが気に入っているようだ……



 ――さらに、交渉を進めていく。



「ローゼン、魔徒に備えるという理由で、他の領とは戦わないと、宣言してくれないか?」


「ゼノ殿、承知したよ。

 それなら納得を得やすいと思う。でも無理な条件でも、ゼノ殿が言うなら従うよ。」



 ローゼンは微笑み、それにも了承。


 だが、ガムは嫌そうな顔で、もう一つの要求を伝えてくる。



「小麦をこちらにも流すように頼んで!」


「なぜだ?」


「セントールは安く小麦をカストロ領や王都に流しているんだよ。それをさ、高く吊り上げて、カストロや王都は、儲けているんだよ!」


「だから、それが、なぜ今関係ある?」



 質問を重ねれば、ガムは一度言葉を失い、観念したように答え始めた。



「革命のためだよ……

 食料の供給を抑えれば、民衆の不満を一気に高めたり、味方にできたりできる。

 ゼノ、あんただって国のやり方には不満があるだろ?

 セントールからの小麦の流れは重要で、それを少しでも押さえておきたいんだよ。」



 ガムは小難しい話を、なんとなく伝えてくるけれど、そこには嘘が感じられる。


 だから、本音を引き出すように、俺は強めの言葉を返してみる。



「俺は革命になんて興味はないぞ!」


「――『バカ』っ! あんたのためだろ!」


「は〜い、ガムさんストップ、ストップ♪」



 ガムがやっとまともに話そうとしたところ、ティクトが、ガムの口を後ろから押さえた。


 ガムは、話すのをやめてしまい、代わりにティクトが話し出す。



「うん。ゼノはどうしたいの?」


「どうしようもなにも……俺は革命にも興味ないし、小麦は困らないだけあればいい。

 ――ローゼン、別に小麦の話はいいよ。」


「承知した、ゼノ殿。

 でもゼノ殿――ゼノ殿が言うなら、もちろん私やセントールは従うから……」



 ローゼンは、そう答える。


 ――だけど、さっきから引っかかる。

 今度はその部分を聞いてみた。



「なぜ、『俺の言うこと』なら従うんだ?」


「え? だってゼノ殿、あなたの言葉だから。」


「いや、意味がわからん。」



 そこには、ミリアンが口を挟む。


「ゼノ、セントールやそこに集まった者たちは、再び魔神と戦う――そう志を持つ者たちだ。

 君が神具を集めるのならば……」


 ――そういうことか。

 なら、そのことについても話しておくか……



「ローゼン、お前を信用していないわけじゃないが、そのうちに『契約』してもらうからな。」


「ゼノ殿、契約とは?」



 話すも、ローゼンは契約の意味をわからない様子……


 俺は、魔神と戦うために神具を集めている。


 だが、「契約の刻印」を修得したため、俺自身は神具を使えない。


 そのことを、ローゼンは知らないのだ。



 自分が戦わないくせに、他人を戦わせる。――それが俺のやっていることだ。


 それを知れば、この少女は幻滅するかもしれないが……純粋な緑の瞳を見ながら、自分の卑怯さに躊躇を覚えた時、誘惑の声がする。



「ゼノ様〜、セントールには、九つの神具とその使い手が集まっているよ。

 ゼノ様ならぜ〜んぶ、手に入れるよね♪」



 ティクトの言葉が、俺を押した。


 その誘惑は自分の卑怯さを忘れさせ、強く、誓いを言わせたのだ!



「ローゼン! お前の神具も、セントールにある全ての神具も……お前たち全てを俺は頂く!

 そのための『契約』をしてもらうからな!」



 立ち上がってローゼンの前に立ち、俺はそう宣言をした。


 ローゼンはしばらく言葉を失ったが、笑顔に戻って、返事をしてくる。



「私と――『契りを交わす』ということですね!

 こ……これは父上や皆に報告せねば!

 さっきの件も含めて、報告を急がねば!」



 ――ローゼンはなぜか、嬉しそうな顔。


 魔神と戦わされるのにこの笑顔とは、さすが英雄の家系と言うべきか……


「ゼノ殿、私は今すぐ失礼する!」


 ローゼンは笑顔でそう言うと、急ぎ足で部屋から出ていったのだ。





 ローゼンとの交渉は、それなりの結果を得た……そう思ったが、ガムは嫌味を放ってくる。


「――マジで地獄に落ちろ、『バカ』!」


 ――まただ。


 今日のガムはとにかく、俺が気に入らないらしい……


 俺はもう一度、椅子に腰掛けた。


 ガムは睨むが、ミリアンは微笑んで、話し合いに一定の評価をしてくれる。



「君は交渉で、平和的に物事を進めるね。」


「ミリアン、騙されるんじゃないよ!」



 だが、ガムは変わらず機嫌が悪い。――そこに、ラナがやってきた。



「チェッチェ寝てるの? 預かろうか?」


「おう! 頼んだぜ!」



 スヤスヤと眠る、黒髪の子を抱いたマリー。――その子供をラナは受け取り、抱きしめる。


 その様子を見ながら、ガムがミリアンに質問をした。



「『呪いの娘』の話を聞いたことあるかい?」


「ああ、『赤い髪の娘』のあの話かい?」



 ――なんの話だ?


 そこに、ティクトが割り込んでくる。



「ああ、それ! 私も聞いてるよ♪

 セントールなんかに避難した『東の地』から来た人たちが、話していたんだよね――ふふ♪」


「どんな話なんだ?」


「君は知らないんだね、ゼノ……」



 ミリアンはそう言って、俺の知らない、不思議な話を語り出した。



「――東の地で流れていた、噂話だよ。

 滅んだ土地の生き残りや、潰れた盗賊団の生き残り……革命軍の残兵なんかが語るんだ。

 赤い髪の少女を見た。その子が魔徒や魔獣、そして『死神』を連れてきて、全てを皆殺しにしたのだとね……」


 ミリアンは、ラナを見てフォローを入れる。


「話す者たちは仲間を殺られ、本人も相当な目にあっていた様子……精神を病んでいた。

 嘘は言ってないと思うけど、信憑性は……

 それに、もちろんね……赤い髪は珍しいけれど、彼女とはなんの関係もないはずだよ。」


 ミリアンは、そう言ってくれた。


 なのにそこで、ガムが、とんでもないことを言い出したのだ!


「その子のことだよ、ミリアン!」


 ――その言葉には、怒りが湧いた!!



「ガム! お前、機嫌が悪いからとラナを巻き込むなよ! ――ラナは何も悪くない!」


「あんたが言うなぁああ!!」



 俺は怒り、椅子から立ち上がる――!!


 ……ろうとしたが、逆にガムが、座る俺に飛び乗ってきて、俺の首を絞めてきた!!



「ラナちゃんは何も悪くないよ!

 あんただよ、あんた! あんたのせいだろ!」


「ガム、どうしたんだ!?」



 なぜかキレているガムに、それを止めようとするミリアン。


 ティクトは嬉しそうに笑い、止めもしない!――その上、ガムを止めようとしてくれているミリアンに、変な質問を投げかける。



「キャハハハ! ねえ、ミリアンさん?

 革命家なら、世界で一番戦力を握っているのが誰だか、ちゃんと知ってるかな?」


「ティクト、今それどころじゃ!?」


「ミリアン! あんたはこいつに騙されてるから、私を止めようとするんだよ!

 ――ティクトの質問に答えてみな!」



 三人の女が俺を取り囲み、言い争っている。


 ――俺は首を絞められ、聞くしかない!



「えぇと……恥ずかしながら、私は無知だ。

 先ほど、セントールに九つの神具があると聞いて驚いたくらいだよ。単独なら王都を上回って、セントールが一番じゃないのかい?」


「そうだね〜」



 ティクトは含みを持たせつつ話しながら、今度は俺へと質問してくる。


「ねえ、神具を集めるゼノ様〜?

 神具を一番持ってる領はどこでしょ〜う?」


 ガムが少しだけ首を絞める力を緩めた。――俺は苦しいながら、答えを返す。


「くっ……、なんなんだ!?

 ブブカ領には今、十の神具がある! なら、ブブカだろ――それより助けろ!」


 がしりと、ミリアンに両肩を掴まれた。


 唯一の味方だったはずの彼女から、急に怒気が溢れるのを感じる!


 俺は息を呑んで、彼女を見た……驚いた顔のミリアンは、責めるように尋ねてくる!



「君なのか!!」


「そうだよミリアン! 騙されるな!

 こいつは、『バカ』なんだよ!」



 ――なぜ?


 なぜ、俺が責められているんだ!?



「君は、ブブカと繋がっているのか!?」


「ああ、そうだ! 俺の冒険者カードもブブカのものだし、集めた神具もブブカに預けてある!」


「君は、どうやって神具を集めている!?」


「お前だって、知っているだろう?

 迷宮から取ってきたり、持っているやつから奪ったりだよ!」


「君は東の地で、何人殺した!?」


「憶えてない!」



 答えるとミリアンは手を離し、少し離れて呆然と立つ。


 今度はガムが、首を絞めつつ責め立てる!



「だから、あんただろ!

 赤い髪のラナちゃんが悪いんじゃない!

 ラナちゃん連れて、行くとこ行くとこぶっ潰した、あんたが原因の噂話じゃないか!」



 ――そういうことか!?



「え? じゃあヤバくね?

 オレんとこに呪いの子がいるってことは、この土地も、ゼノが滅ぼしちまうってことか!?」


「もうスターリンは、こいつに殺されただろう!」


「あ、ホントだあ!」



 間近くで、ガムとマリーが騒ぐ!

 離れたところで、ミリアンが尋ねる。



「き、君は、革命には興味がないと……」


「なんだよ……興味はないぜ?」


「ブブカ領に、十本預けていると言ったな……」


「ああ……?」


「ここにいる三人と、外にいる『あの男』……バティスタの持っていた鎖の神具……ブブカに十、セントールに九……君はあの、大きな盾を持つ、マルスという男とも仲がいいようだったね……」


「ああ……だが例え、ローゼンやマルスと手を組めたとしても、全ての神具までは、まだ半分だ!」


「まだ……半分……? 君はこの先も、これまでのように神具を集めるつもりなのか……?」


「そうだよ! 俺にはそれしかできない!」



 俺の答えを聞いて、ミリアンは自身の顔を手で押さえた。


 何か愕然としている様子のミリアンに、膝の上からガムが叫ぶ。



「ミリアン! 必ず私たちで革命を成し遂げて、世界の支配を手にするんだよ!

 そうしないと魔神が世界を滅ぼす前に、この『バカ』が、世界を滅ぼしちまう!」


「キャハハハハハ!!

 ゼノ様は、誰にも止められないよ!!」



 ミリアンは顔を伏せ、ガムは怒り、ティクトは笑っている。


 理由がわからない俺は、キョトンとしているマリーと同じく「バカ」なのだろうか?



 彼女たちは、仲間のように感じていたが、決して完全な、協力者とはいかないようだ……





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