表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/63

9


馬車は真っ直ぐブラウン家の屋敷に到着し、コニーは応接室に連れてこられた。


「私達、あなたが可愛くてどうしても甘やかしてしまうのよね。言いたくなくてごまかしているのに、無理矢理聞き出すのは可哀想になっちゃったり」

コニーの隣に腰かけたスザンナから唐突の親バカ発言だ。いや、兄と親友だから、シスコンとベストフレンドコンプレックス……略して、ベスフレコンだろうか?

「だから、つい絆されて話をうやむやにしないように、お互い注意しながらコニーの話を聞こうと思って」

余計な結託をしてくれた。大好きなクリスティアンとスザンナ二人がかりで来られたら、コニーの敗北は免れない。コニーもブラコンでベスフレコンなのだから。

コニー達の目の前にはお茶とお菓子が用意されているが、手をつける余裕はなさそうだ。

「この間から思っていたんだが、コニー。お前は未来が見えているんじゃないか?」

俯いてぼんやりお菓子を眺めているコニーに、向かいに座ったクリスティアンがずばり切り出した。コニーの奇怪な言動を見ていれば、そう予想されるのも仕方がない。

「コニー。私達を信じて、本当のことを言って。どんな話でも受け止めるから」

スザンナに懇願され、コニーは覚悟を決めて顔を上げた。

「実は私には多分前世の記憶があって、ここは多分乙女ゲームの世界なの!」

予想外の回答だったようで、クリスティアンとスザンナはきょとんと目を丸くしている。

「えっと……前世というと、あれかな?生まれる前に別の人として生きていたっていう……まあ、それはともかく……乙女ゲーム?」

首をかしげるクリスティアン達に、コニーはその概要を説明した。

「要するに恋愛に重きを置いて、主人公に成り代わって多数の分岐を選択できる物語なんだね」

「何だかその言い方は好きじゃありませんが、その通りです」

極端な表現をされ、コニーの気分は下降する。熱中しているものを冷静に分析したらダメだね。

「……ごめん、コニー」

「いえ、お兄様は悪くないです」

すぐにコニーの様子を察したクリスティアンが謝るが、悪気はないとわかっているので、コニーは首を横に振った。

「ともかく、コニーに前世の記憶があるということはわかったよ。そして、この先起こるかもしれないことが見えると……」

「多分?確証はないですけど……」

口ごもるコニーをクリスティアン達がじっと見つめてくる。コニーはその真っ直ぐ注がれる視線に耐えられず、おずおずと切り出した。

「だって、この世界の話のゲームの記憶がなくって……でも、こうなるかもしれないなと思ったら本当にそうなるから、はっきり覚えていないだけでやったことのあるゲームなんだと思います!麗しの王子殿下、美形な貴族令息達に学園。乙女ゲームの定番ですもの!」

こうして人に説明していると自信がなくなってきたコニーだったが、だんだんと自棄になって言い切った。

しんっとその場が静まり返る。クリスティアンとスザンナは戸惑いの表情を浮かべていた。しかし、少ししてきゅっと顔を引き締め、クリスティアンが口を開いた。

「コニー……もしまた何か見えたら教えてほしい。僕やアーヴィンの時みたいに、危険かもしれない状況に突っ込むのは辞めてくれ」

クリスティアンは不安そうにコニーを見ている。隣のスザンナも深く頷いている。二人共、コニーのことを心配しているのだ。

信じて、気遣ってくれる。コニーは嬉しかった。だから深く考えず、力一杯頷いた。

「わかりました!危なそうなことはお兄様にお知らせして、あとは乙女ゲームのイベントが起こりそうな時は傍観して楽しむようにします!」

「いや……うん。まあ、いいや」

クリスティアンは何か言いたそうだったが、コニーの笑顔に言葉を呑み込み、笑みを返した。



「クリスティアン様……コニーはああ言いますが、もしかしてあの子は……」

席を立ったスザンナは、クリスティアンと共に部屋の隅へ移動し、小声で話しかけた。

「それはわからない。一先ず、様子を見るしかないよ。必要であればフォローをしながらね」

クリスティアンは苦笑いでコニーに目をやる。

「家では僕が気にかけるようにするけど……学園でのコニーのことをお願いてもいいかな?」

「もちろんですわ」

等といった会話がなされているとは露知らず、コニーは打ち明けられたことにスッキリして、安心してティータイムを楽しむのだった。






その夜、コニーは乙女ゲームの状況を整理してみた。

まず、ここはおそらく学園中心の乙女ゲーム。ヒロインはアリサ・ピスフルでほぼ間違いないだろう。


彼女と接触のあった攻略対象と思わしき人物は四人。


まずは、第二王子のアーネスト。歳はヒロインの一つ上。見た感じ、クールな俺様という感じだが、実際に話したことがないのでわからない。婚約者のパトリシアとの関係が気になるところだ。


次に、王太子のエリオット。学園を卒業し、この国の成人になったばかりの十六歳。クリスティアンの友人で、コニーにも気さくに話しかけてくれて、完全無欠な王子様といったところだろうか。ヒロインが学園にいる状況でどう関わっていくのか楽しみだ。


ヒロインとクラスメイトで隣の席になったアーヴィン・ガーネット。本当はヤンデレにでもなりそうなタイプだったが、コニーが色々してしまったので、ちょっぴり人見知りでちょっぴり執着が強いくらいになった。まだヒロインと話した様子はないが、これからどうなっていくのだろうか。


そして、クリスティアン・ブラウン。先日学園を卒業して、父の後を継ぐべく、警察組織で下積みから始めている。何か事件があった時に関わってくるのだろうか。とにかく優しいので、大切な兄に傷ついてほしくないコニーは心配だ。


まだ他にも出てきそうな気がするが、コニーはとりあえずこの五人を注視しようと考え、明日からの学園生活を楽しみに眠りに着いたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ