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エリオットはコニーの期待通り、今日あった出来事を話してくれた。


新入生と在校生、それぞれと踊ったエリオットは、それ以上のダンスを回避するため、中庭へと移動した。令嬢達も外までは追ってこなかったので、クリスティアンと休憩した後、アーネスト達主催者の面々に挨拶をして帰ろうかと思っていた。

そこへ、アリサがやって来た。ぼんやりしていて、足元もふらふらと覚束ないようなので、エリオットは声をかけることにした。

そして、何やら思い詰めた様子の彼女を励ますため、会場から漏れ聞こえる音楽でダンスを誘うことにした。

少し元気を取り戻したアリサを交歓会に戻すため、自身は挨拶のために会場へ向かおうとした時、アーネストがやって来たのだ。



思わぬところで三つ巴!……クリスティアンはほぼ参加してなかったけど。攻略対象達のブッキング!

コニーはその場に居合わせなかったことを後悔した。当事者になるのは嫌だけど、離れた所から見守りたかった。



──そんな大きく膨らんだコニーの妄想や期待とは裏腹に、その場は穏やかに収まったそうだ。

そして、エリオットはアーネストに断って、クリスティアンに付いてコニーの待つ休憩室に向かった。アリサはおそらく、アーネストが会場までエスコートしたのだろう。


変わっているところもあるが、それでもおおよそコニーの妄想通りだ。


一喜一憂して自分の話を聞くコニーに、エリオットは笑みをこぼした。ブラウン伯爵邸へ向かう馬車の中はほのぼのとしている。

「ところで、私のこれからの展開の予想はないかい?」

そんな空気をピリッと変えたのは、エリオットのこの一言だった。

なぜエリオットが、コニーの乙女ゲーム展開予想を知っているのか。その答えは一つしかない、とコニーは横に座っているクリスティアンを見た。

「警護の強化を進言するのに仕方なく……」

クリスティアンの言う理由はもっともだった。理由もなしにいきなり警護を強化してくださいは無理だとわかっている。とは言え、コニーのことを正直に話すことはないのではないか。他に理由を立てて、例えば……思いつかないけれども!コニーは突然の出来事に混乱していた。

「クリスは私にしか言っていないし、私は誰にも言っていない」

「ど……どこまでご存知で?」

前世とかゲームとかおかしなこと言う人と認定されたのではないかと、コニーは恐る恐るエリオットに尋ねた。コニーの脳裏に病院や人気のない邸で隔離される自分の姿がよぎる。

「どこまで?コニーが少し先の未来が見えるかもしれないって……」

何だかいい感じの表現がされているが、コニーは乙女ゲームの知識があって、先の展開が予想できるだけだ。コニーが再びクリスティアンの方を見ると、彼は苦笑いを浮かべていた。とりあえず、色々省略して、ぼやかした説明になったのだろう。エリオットの様子からは信じてるのか信じていないのか、真意はわからないが、態々コニーに話をふるということは、嫌悪はないのだろう。コニーはそう判断してエリオットに向き直る。

「ええっと……エリオット様のこれからの予想ですよね……」

「私だけに限らず、周囲で何か困ったことになりそうな展開はないか?」

エリオットに尋ねられて、コニーは頭を捻った。



会場の外でこっそりダンスを踊ったエリオットは、ヒロインのことを……。



「殿下。おそらく、妹は連想でその力を発揮するのかと」

妄想に入りかけたコニーの思考は、クリスティアンに引き戻された。コニーの肩には彼の手が置かれている。

「連想?」

「人物や関連する物を見ることで、その人物に起こり得ることを推測する──予見できるのではないかと思います」

「なるほど」

またかっこいい感じに解説されているが、乙女ゲームだったらこの人はこうなりそう!と妄想混じりに予想しているだけなんだけどなぁ……とコニーは無ず痒くなりながら二人の会話を聞いていた。

「じゃあ、コニーに王宮へ来てもらおう」

「……おぅふ」

コニーは吐き気を催した。まさかの王宮ご招待だ。

「このまま体調不良のご令嬢を連れ込むのはお互いに外聞が悪いから、後日改めて招待しよう。そこで色々見て、思いついたことを教えてほしい」

エリオットは思いの外、コニーの妄想に興味津々のようだ。しかし、後日であってもコニーが王宮に招待されるのは外聞が宜しくない。

「ただの友人の妹なのに、私だけがお招きいただいては、他の……エリオット様をお慕いする方々の不興を買ってしまいます」

貴族、特にご令嬢方の妬み程恐ろしいものはない。

前日まで親しく話していた友人が、好意を寄せていたイケメンの有力貴族と楽しくおしゃべりしただけで、次の日には無視に仲間外れ。「ほんと身の程知らずよね~」「前から傲慢だと思っていたのよ~」なんて陰口を叩かれてしまう。反発しようものなら、女性の連絡網はあっという間に情報を広め、その人は一気に社交界から爪弾きにあうだろう。

ちなみに全て乙女ゲームの知識と母からの淑女教育による推測だ。コニーの体験談ではない。

「そのことは私も考えた。だから、対策をして君を迎えると約束しよう」

エリオットはニコニコと楽しそうな笑顔で、コニーの手を取った。

「だから、私の招待を受けてくれないか?」

やっぱりエリオットは誘導が上手い。彼の言う対策が上手くいかなければ絶対に自分の損になる。コニーはそれをわかっていながらもエリオットのお願いを断ることができず、コクリと頷いてしまうのだった。


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