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委員会活動が始業のギリギリまでかかったため、コニーがアーヴィンとゆっくり話を出来たのは昼休みになってからだった。


「コニーも早速委員会だったんだね。僕も昨日から早速雑用ばかりさせられてまいったよ……」

コニーはアーヴィンと中庭に出て昼食を取ることにした。食堂で食事が出来ない学生向けにお弁当が販売されているため、コニー達はそれを購入して来たのだ。

「生徒会のメンバーってどうなの?」

「会長のアーネスト殿下は、前からお会いすることがあったから気安い感じだね。その分遠慮なく頼み事をしてくるし、そもそも入りたくないのに無理矢理生徒会に入れるし……」

アーヴィンは不満をコニーにぶつける。早速こきつかわれてうんざりしているようだ。

きっと入学試験が首席で、公爵子息であるアーヴィンが有能な部下になると見ての勧誘だったのだろう。本人にやる気がないのであれば無理に引き入れるべきではなかったのではないかと思いつつ、自分が見たい今後の展開では彼は生徒会に入るべきだったので、コニーの心境は複雑だ。

「えーと……それで、一緒に入った……ピスフルさん?はどう?上手くやっていけそう?」

「それ!コニーが一緒だったら、僕もちゃんと」

「彼女は平民でしょう?王族や貴族ばかりの生徒会で大丈夫そう?」

アーヴィンの不満の矛先が自分へ向けられそうだったので、コニーは彼に最後まで言わせず、言葉を被せて問いかけた。今は乙女ゲームの進捗状況が気になるのだ。諸々の愚痴は後で聞いてあげるから、とコニーは心で思いながら、目で訴えかけた。それが通じたのかはわからないが、アーヴィンはムスッと不機嫌さを露にしながらも答える。

「彼女なら殿下とも上手くやってたよ。なんか入学初日に殿下が彼女を助けたらしくて、殿下から声をかけてたし」


なるほど、コニーが思っていたとおりの展開で話が進んでいたようだ。



『アーヴィン・ガーネットです。よろしくお願いします』

『アリサ・ピスフルです。どうぞ、よろしくお願いいたします』

生徒会に入ることとなり、ヒロインが生徒会室で挨拶をすると、じっと自分を見つめる視線に気がついた。

『お前は……』

ヒロインの前に昨日の王子様が歩み出る。

『また会ったな。まさか、ここで再会するとは思わなかったぞ』

ヒロインはその人物が生徒会長で、しかもこの国の王子だと知ってただただ驚く。アーネストはその反応が面白くて、彼女に興味を持った。新入り達に早速仕事を与えた際、ヒロインには自らの補佐を命じて周囲をざわつかせた。

ヒロインは困惑しつつも言われるがまま、懸命に業務をこなした。

アーネストはヒロインに興味を持ちつつ、いざ仕事を始めるとそれに集中し、気がつけば日が沈んでいた。生徒会室にはもう自分とヒロインしか残っていない。

『すまない!もうこんな時間か……家まで送ろう』

すっかり遅くなってしまったため、女性一人で帰らせるわけにはいかないと、アーネストは自身の馬車で送ろうとするが、ヒロインは……。

『いえいえ。お気になさらないでください、殿下。お仕事大変ですね。お疲れ様でした!』

ヒロインは逆にアーネストを気遣い、笑顔を見せたのだ。アーネストのヒロインへの好感度は急上昇した。

『……いや、夜道は危ない。送らせてくれ。それと……俺のことはアーネスト、と名前で呼んでほしい』

『そ……そんな、恐れ多い!』

『いいから』

『……ア……アーネスト、様』

アーネストは赤面して俯くヒロインが可愛く思えて、笑みを浮かべるのだった。



その笑みに乙女ゲームファンは思わず叫んで見悶えるのだ。

──何だ、その優しい笑みは!お前が可愛いわ!



脳内はうるさいコニーだが、アーヴィンにはお姉さんぶりたいので、澄ました顔で彼の話を聞いていないようで聞いていた。

アーヴィンが帰った後のことはわからないが、概ねコニーの妄想通りの展開だった。

そして、今朝の流れになるわけだが、あの髪飾りは遅くなったことに対する“お詫び”といったところだろうか。

「ちょっとした騒ぎになってたし、殿下と親しい副会長に聞いたら、女性のプレゼントは何がいいか王妃に聞いて渡されたものらしいよ」

それを聞いて、コニーはこう推測した。

王妃はおそらく、アーネストが好きな女性(間違いではないかもしれないが)へのプレゼントに悩んでいると思い、親切で髪飾りを渡したのだろう。多分、気が利かない息子が婚約者にプレゼントをしたいと言い出した時のために用意していたものではないだろうか。まさか婚約者ではない、出会ったばかりの平民の少女へのお詫びの品として使われることになるとは、王妃も思いもよらなかっただろう。アーネストはあまり女心を理解していないタイプっぽいとコニーは思った。

「こんなことになったら、パトリシア様の動向が気になるわね」



悪役令嬢のヒロインへの警告は最初はちょっとした嫌がらせから段々エスカレートしていくものだ。

足を引っ掛ける──これはコニーが阻止した。唐突な思いつきでやったものだろう。次に考えた上で行うなら……脅迫状とか?呼び出して厳しく注意する?



「コニー。何を考えているかわからないけど、首を突っ込むのは良くないよ」

コニーがぽつりと溢して考え込んでいると、アーヴィンが身を屈めて上目遣いで忠告してきた。

「コニーには関係ないんだし、人の問題に関わってもろくなことにならないよ」

アーヴィンは改善されたとはいえ、他人に対してシビアだ。基本的に自分と自分の大切な人以外どうでもいいと思っている。やっぱり乙女ゲームのヤンデレポジションか……。自分を案じてくれるアーヴィンの先行きが逆に心配になるコニーだった。




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