深まる謎
今回は菊池くん目線です‼︎
ピーンポーン
玄関の呼び鈴がなり、俺は急いでトーストを口にくわえて外に出た。そこには2人の少女が立っていた。雨柄 刹那と捺末 湯子 だった。
「おはよう、菊池くん」
「……おはよう」
一体いつの間にこんな風になったんだろう? 俺はそう思いながら朝ごはんを食べ始めた。今日のトーストはプレーンだ。ジャムを付けとけばよかったな と思いながらムシャムシャと食べていると、俺の右隣から何やら視線を感じた。チラッと横目で見ると、そこには目をキラキラと輝かせながら俺の朝食を狙う悪魔がいた。心なしか、口から滝のようにヨダレを垂らしているように見えた。
「……食う?」
「食う‼︎」
食べ物が絡むと、彼女は人が変わる。犬みたいだと俺は思いながら仕方がなく、トーストを半分に千切り、食いしん坊な刹那に渡した。いや、ひったくられた。そして、一口でパンを完食してしまうイギリス少女を俺は唖然として見つめる。そして物足りなかったのか、再び俺に視線を戻した。
「……もう無いんだけど…」
すると、少女の顔がシュンとなった。そして訴えるかのように、彼女の腹の虫が グルルルルゥゥーと唸る。
「まったく…… ちゃんと朝ごはん食べたの?」
刹那に世話を焼いている捺末がお母さんのように聞いた。
「うん。朝ごはんはジャムパン、チョコパン、メロンパンを食べたんだけど、お腹空いちゃった……」
いくらなんでも食べすぎだろ⁉︎ っと俺は心の中で突っ込んだ。すると、右に入る刹那とバッチリ目が会った。彼女はニヤリと笑い、目の前にあるコンビニを顎で指して俺を無言で見た。俺は命令通り、コンビニに入ると、適当に安い食べ物を買い、刹那に渡した。
「わお‼︎ ロールパンだ‼︎」
と、子供のようにはしゃぐ刹那を俺は出来る限りスルーして捺末に話しかけた。
「俺、もしかしてパシリ?」
「パシリ以外に菊池の役目は無いよ」
2人そろってひどくね……? 俺は心の中で 大きなため息をついた。今日は放課後、『エターナルラビリンス』で作戦会議をする予定になっている。この名前を声に出していうのは少々……いや、結構恥ずかしい。出来る限り俺は『永遠の迷宮』と言って通したいのだが、それもそれで恥ずかしい。今日の放課後について色々と考えていると、
「じゃあ、私今日こそは本屋に行くね‼︎」
と、刹那の声を聞いて、俺は彼女が本屋に向かって走って行くのを捺末と一緒に見送った。
「ねぇ」
秋葉でのデジャブのように、俺は捺末に声をかけられた。
「え、な、何?」
「あんたが 雨柄 について知ってる事、全部教えて」
急に彼女は何を言ってるんだろう?俺は疑問になった。捺末は刹那と幼稚園の年少の頃からの幼なじみだそうだ。その彼女よりも、俺が雨柄についてよく知っているわけがない。俺は怯えながら彼女に聞いた。
「ど、どうしたの…… 急に?」
「いいから。答えて」
どうしよう…? 俺は頭をかかえた。絶対何か良からぬことを企んでいるということは分かったが、それは刹那にとっては裏切りなのか? それともセーフなのか? そんな考えが俺の頭をよぎった。……捺末が敵なわけない。そう信じたいが、昨日俺は運悪く、見てしまったのだ。鋭い狂気に満ちた刹那の目が、湯子を睨み、彼女の耳に何かを囁くところを。ここでウジウジしていても意味はない。俺はそう思い、勇気を出して聞いてみた。
「り、理由。理由を……教えて」
「…理由?」
俺は捺末に冷たい目で睨まれた。刹那ほどの圧力や恐怖は無いが、逆らったらダメだという事だけはその目つきで察した。
「あんたさー、おかしいと思わないの?」
おかしい……? 一体何が?
「え……?」
俺はキョトンとした。おかしいって、刹那がか?確かに昔とは違って笑みが不気味になったが…… などと俺は深く考え始めた。
「家族をイギリスにおいて自分だけ帰って来るなんておかしくない?」
俺はの頭はポケーっとなったが、確かに一理ある。すると捺末が痺れを切らした。
「彼女の家族の名前をあげてみて」
俺は言われるがままに従い、名前を挙げ始めた。
「えーっと、雨柄の母さん、父さん、刹那に」
そこで俺はハッとした。そうだ、刹那は確か…… あ‼︎ 思い出した‼︎
「確か刹那は」
俺が言いかけた途端……
ビビビビビビビビビビビビビビビビビビッッ‼︎
突然、周囲に防犯ブザーが鳴り響いた。
「チッ…雨柄のやつ…盗み聞きなんて悪趣味な事してるわね」
と、捺末がボソリと声を潜めて呟いた。そう、捺末の目の前に立っていたのは、さっき本屋に行ったはずの刹那が笑わずに立っていた。防犯ブザーの音が鳴り止んだと思いきや、今度は捺末に向かって刹那は足蹴りを決めようとした。捺末は一瞬何が起こったのか分からず、その場に立ちすくんでいた。俺はとっさに大声で
「やめろ‼︎」
と叫んでしまった。
5年前
「おい、●●」
「どうしたの、菊池くん?」
「おい、俺たちの事も忘れんじゃねーよ」
「ごめんね、佐藤くん。あと、井上くんも。それで、3人揃って何の用?」
「あー、*と●●って△△なのに▶︎▶︎が▶︎▶︎だよな?」
「うん? そうだけど、それがどうかしたの?」
「バカだなー。つまりお前らは、△△じゃないって事だよ。と言うことは、◆◆でも無い。*は本当はお前の事『必要として』なければ、『△△でも◆◆』としても思っていないんじゃ無いか?」
「……」
「●●◉?●●◉‼︎ ……菊池くん、佐藤くん、井上くん、全員で●●◉をイジメないで‼︎」
そうだ、あの時確か…
「……湯子、あんた次にまた余計な事を言ったら……寸止めじゃ済まないからね」
「ひっ……」
そこには湯子の顔スレスレの所で刹那の足が止まっていた。そして彼女はゆっくりと足を下ろして捺末を睨みつけた。そしてケータイに何やらメッセージを送ると去っていった。
ピロン と捺末のケータイにメールが届き、中を見た瞬間、彼女の顔が真っ青になった。
「どうした?」
俺がケータイの中を覗こうとすると、電源を切られた。一瞬しか内容が見れなかった。余程見られてはまずいものだったのかもしれない。しかし、俺はその一瞬で十分だった。刹那からのメールには、赤い絵文字で
「警告したよ」
との一言だった。しかし、俺は何か引っかかるところがあった。それは、彼女のユーザーネームだ。俺の持ってる刹那のユーザーネームは『ANUSTES』なのに、湯子のには『MEG』と書かれていたのだったから。
なんとなんと‼︎こんな私の作品を読んでくださった方がいました‼︎ ありがとうございます‼︎
今回は湯子ちゃんのお陰で雨柄ちゃんの秘密にまた一つ近づいて来た菊池くん‼︎ 危うく雨柄ちゃんから顔面キックを食らいそうになっていた湯子ちゃんだったけど…… 無事で何より、ですねw
次回は湯子ちゃん目線で書きたいと思います‼︎