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2週間の夏休み  作者: 蓮実 よる
2/16

学校に行こう

今回は菊池くん目線です‼︎

「行ってきまーぁ……」

トーストを食べながら学校に行こうと思い、俺は玄関を開けた。しかし、俺は酷く後悔した。ドアの前に笑顔で立っている少女…… その子は俺が小学3年生の時にいじめてた 雨柄 刹那 。前は静かに本を読んでいる子だった。しかし、今では真逆の性格になってしまった。もしいじめていなかったら、変わらなかったんだろう……

あの時の少女はもういない。今いるのは、ニコニコと意味ありげに笑う少女だけだった。

「おはよう、菊池くん」

「……おはよう」

俺はモゴモゴと言った。いじめてた子になんて言えばいいのか、どう向き合えばいいのか、分からない…… 昨日のことや、なぜ日本に帰ってきたのか、聞きたい事が山ほどある。が、俺が一番気になっていたのは、なぜ家を知っているのか、だった。

「驚いた?」

ニヤニヤ笑いながら雨柄は固まっている俺に聞いた。

「驚いたけど…… なんで」

なぜ俺の家を知っているのかと質問しようとしたが、彼女の方が早かった。まるで俺が思ってる事が分かっていたかのように。

「君のお母さんと私のおばあちゃん、仲がいいから住所教えてもらっちゃった」

……なぜだ母さん…

「ついでに君が学校に行く時間も教えてくれたからすれ違いにならなかったんだよ」

出来ればすれ違いになればよかった!

と、心の中で叫んだ。別に彼女が嫌いなわけでも、俺に裏と表があるわけではない。ただ… こいつの前に現れたら嫌な記憶を思い出させてしまう。出来れば刹那から避けたい。それをする事で少しでも罪を滅ぼせたら、などと、卑怯な事を考えをしてしまう。何をしても、時間は戻せない… 起きた事はどうにもならない。俺は…

「菊池くん、話聞いてる?」

俺は現実に引き戻された。刹那は腰に手を当てて怒ってる表情をする。昨日と似た髪型、カラフルな服。学校にいたら浮きそうだなと思いながら俺は謝った。

「ごめん、聞いてなかった。もう一回言ってくれる?」

彼女は少し呆れた顔をしたが、もう一度話をしてくれた。変な笑みを浮かべる刹那はきっと、俺への復讐などを考えているんだろう。重い罰を受ける覚悟ならとっくに出来ていた。しかし、彼女が言ったことは、俺の想像の斜め上に行った。

「今から秋葉に行きたいんだけど、道案内してくれる?」

「……は?」

バカなのか?オタクか?いや、オタクは見逃せても、え、バカじゃねーの? 平日の朝 7:00 に学生が秋葉行く事はほとんどない。いや、あってどうする。それに行ったとしても、日本に昨日来たばっかりの少女を適当にポイっと秋葉に置いて学校に行けるほど俺は鬼じゃないしバカじゃない。もし出来たとしても、俺が気が気じゃないわ‼︎ 恐怖で授業どころじゃない‼︎ 刹那が俺の事を許すよりも悪化させてどうする⁈

俺が頭の中でパニックになっていると、彼女はまた喋り始めた。

「ほら、早く行くよ。私クレープ食べたい」

あ……行くの決定されてたのですね…… って、え゛⁈ 俺も行くのかよ⁈

などと頭の中でノリツッコミを入れてみたが、おふざけをやっている場合ではない。いや、むしろなんで俺はいじめてた子のノリツッコミしてんだよ? なんか俺反省してないみたいじゃねーか⁉︎


「悪いけど、今は秋葉に行けない。学校が終わったら案内するから待ってください。」


「悪いけど、今は秋葉に行けない。学校が終わったら案内するから待ってください。」


「悪いけど、今は秋葉に行けない。学校が終わったら案内するから待ってください。」


頭の中で何度も同じセリフを暗唱し、伝えようとしたが……

「……あのー…俺今から学校……」

頭の中で暗唱したセリフは何処へやら……

学校だったらしょうがない。後で行こう、などのような少々慈悲のあるセリフを刹那から期待していた。きっと、不気味の笑顔になっても、昔の優しい心は残っているだろう。そう願っていたが……

「関係ない」

見事に打ち砕かれた。まあ、いじめてたから当然の報いか…… しかも笑顔で威圧する彼女は怖すぎる…… 俺は震え上がった。本当に、いじめなければよかった…… 後悔のエンドレスループに入っている俺に、刹那は秋葉よりもすごい爆発発言をした。

「しょうがない… じゃあ今日は菊池くんの学校に行くよ」

……はい?

いやいやいやいや、聞き間違いだ‼︎ きっと‼︎ 絶対‼︎ 間違えない‼︎ しかし、念には念を。俺はもう一度聞いてみた。

「……も、もう一回、ゆっくり言ってくれる…?」

「?いいよ。今日、菊池くんの学校に行くよ」

ガッコウニイクヨ……? 学校ニ行くヨ……? …………学校に行くよ…… って、

「はぁぁぁぁ⁈ 俺の学校に来るってどう言う事だよ⁈ 頭ぶっ飛んでんだろ⁈ そんな簡単に学校に行けるわけないだろ⁉︎」

気づいたら大声で俺は叫んでいた。そして刹那の発言についツッコンでしまった。5年前、刹那が日本を出て行ってから、根暗で静かで、地味な、隠キャとして生きていこうと決めていたのに…やってしまった… もう暗い、おどおどした自分をやめて、いじめていた彼女と普通に接したい… だけど、迷惑にならないだろうか…? 俺なんかがそんな事をしてもいいのだろうか…? 様々な疑問が頭に浮かぶ。ふと少女の方に目を向けると、彼女はニコニコしながら見ていた。

ナニコノコ、コワイ。( ゜д゜)

さっきまで考えていた考えや疑問が吹っ飛び、逆に恐怖に陥った。彼女の笑顔を見た時、本能で分かった。久しぶりに会った時から薄々気付いてはいたけど、この子はヤバイ。なぜか分からないが、「逃げろ、嫌な予感がする」と俺の脳は悲鳴をあげていた。そしてその勘は秒で的中した。

「実は、菊池くんの通ってる学校の理事長ってあの小学校の時と同じ理事長なんだよね〜。転職したんだって。」

「ほぉ…… ってだからなんで知ってるんだよ⁈」

「菊池くんのお母さん」

\(^o^)/ おかん…… それ、違法だぞ。ってか、なんで教えてんだよ……

イヒヒ と悪魔のように笑う少女と一緒に、俺は重い足取りで駅に向かった。駅に向かう途中、俺は普通に刹那と接してみようと思ったりしたかもれない。

……

「菊池くんさ、変わったよね。」

駅に着くまで何も言わなかった刹那が、切符を買いながら話しかけて来た。突然のあまり、俺はビクッと肩を震わせる。そして考えた。違う、変わったのは……

「お前の方だよ。性格も服装も。小3の時にほとんど必要とされてなかったのに、よく頑張って立ち直っ…」

気付いたら声に出して喋っていた。急いで口を手で押さえて、パッと彼女の方をみた。別にバカにしようとしたわけではない。いじめようとしたわけでもない。褒めようとしただけだった。イジメられても負けずに自分を変えた事を。しかし、言い方を間違えた。俺はたった今彼女の中の禁句を言ってしまった。『必要とされてない』と。



5年前

小学校にて


「おい雨柄ぁ」

「…どうしたの、菊池くん?」

「先生がさっき職員室で言ってたぞ。『雨柄さんがイジメられる理由は彼女にも非があるから』だってよ。」

「うん…」

「お前、先生にも必要とされてないんだな。あはははっ‼︎ バーカ。」

「……うん」

「お前に居場所なんてないんだよ」

「……」

「誰にも必要とされてないバカだな、お前」

「……ぅ…うぅ…」

「泣けばなんとかなるわけじゃねーんだよ。ってか、お前『必要とされてない』って言ったら毎回泣くよな。」

「……うぅ……」



5年前、俺は放課後図書館で本を1人で読んでいる刹那を毎日のように泣かせていた。彼女の恐怖は『必要とされなくなること』だ。それを俺は利用してイジメた。そしてたった今、その禁句を再び言ってしまった。聞かれただろうか?気分悪くしてしまっただろうか? もし、二度と話しかけるなと言われたら?

…………俺はあの時彼女に聞こうとしてた事もなにも聞けずに、また振り出しに戻るのだろうか?…… 嫌だ…… それだけは嫌だ……

俺は両目をギュッとつぶった。

頼む… 振り出しに戻さないでくれ……

情けないが、涙が出そうだった。俺は心の中で強く願った。俺の恐怖を見透かしたように少女はニヤリと笑って、

「まぁね」

とだけ答えた。俺は急いで謝った。

「ごめん、今のは褒めようとしただけでお前をイジメようなんて…」

だが、俺の言葉は電車のアナウンスによって彼女には聞こえなくなったのだろう。顔をしかめていた。しかし、俺が言おうとしてる事を察した彼女は、

「大丈夫だよ。もう気にしてないから。」

と静かに言った。

……

「おー! ここが元いじめっ子の菊池くんの学校かぁ〜」

「……元いじめっ子は余計だって…」

「あ、そっか、今はいじめられっ子、だもんね」

「泣いていい?( ;∀;)」

「いいよ」

「ひどくね?」

たわいもない会話やジョークを駅を出てからしていると、いつのまにか学校に着いていた。その時には刹那への緊張感もゆっくりと解け始めていた。気付いたら自然と話が出来ていた。家族以外の誰かと自然に話すのは何年ぶりだろう…?そう考えていると刹那が喋り始めた。

「菊池くんはさっき私に喋った感じで人と交わればいいよ」

「…え?」

この子は何を言ってるんだ……? 俺がキョトンとしていたら、刹那は俺にニッコリと笑い、学校に入っていった。まるでイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべていた。

「そう言えば菊池くん、早くしないと遅刻だよ?」

「え……遅刻?」

スマホの時間を見ると同時に、授業の合図のベルが無慈悲に鳴った。

「あぁ゛‼︎」

俺は急いで走り出した。後ろで刹那の笑い声が聞こえる。教室に急いで走る俺に向かって大声で彼女が叫んだ。

「今日の放課後、秋葉に行こう‼︎ 私クレープ食べたい‼︎」

放課後なら……いいかな?


キャラクター紹介


雨柄 刹那 (あまつか せつな)

5年前イジメられていたが、雰囲気を変えて日本にイギリスから帰って来た。何かを隠している。


菊池 青葉 (きくち あおば)

5年前 雨柄をいじめていた。今ではイジメられている。彼も何かを隠している。


読んでくれてありがとうございました‼︎

次回は雨柄ちゃん目線で書こうと思います‼︎

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