久しぶり
はじめまして、こんにちは。蓮実 よる です。
初投稿です。文章力が低く、誤字、脱字、語彙力不足が多いと思います。未熟者の作品ですが、頑張って書いていこうと思います。どうか温かい目で見守って下さい。
このお話は、実話を少々元にして作った恋物語です。楽しんでいただけたら幸いです。
ジリジリと、夏の日差しが容赦なく道路を照りつける。
「…あっつーい‼︎」
身長150cm前半といったところの少女が大声で叫ぶ。長く茶色い髪の毛は、綺麗なポニーテールに結ばれている。トマトのように真っ赤でプレーンなシャツに、膝まである水色の短パンを履いている少女がチェックのスーツケースに座りながらうなった。紫のサンダルで苛立たしげに地面を蹴り、右手を太陽にかざし青々とした空を見上げる。
「…ただいま。」
静かに少女は呟いた。
もう二度と日本に戻らない、そう決意してから5年。彼女は戻って来た。
「……とりあえず、おばあちゃんの家に行こう。荷物おろさないと…」
少女はスッと立ち上がり、空港の中にある駅に向かった。
……
3番線の電車が来るのを待っていると、中学生たちがワラワラと駅に入って来た。少女は中学生たちが来た瞬間、顔を曇らせた。小3の頃の苦い記憶を思い出すからだ。つらい記憶を思い出さないように首を横に何度も振っていると、後ろから聞き覚えのある脅しが聞こえた。
「おい菊池ぃ、お前ジュース買って来いよ。」
「え…でも……」
「10秒で買ってこい」
「……はい」
イジメだ。少女はすぐに気付いた。反射的に少女は2人の間に入った。
「やめなよ。それ、イジメだよ」
「なんだおまえは?どこの中学だよ?」
「イギリスの中学だけど、文句ある?」
「ふざけんなチビ」
心の中で少女は怯えていた。逃げ出したかった。しかし、一歩も引けなかった。“彼を助けないと”。そう強く感じたからでもあったし、誰も助けられない無力な自分が嫌だったからだ。
(まずい…どうにかしてこの状況から抜け出さないと…)
少女がそう思った矢先、
「まもなく、3番線の電車が参ります。黄色い線の…」
電車が来るアナウンスが流れた。
(チャンス‼︎)
少女はいじめられている菊池という少年の手をむんずと掴み、全速力で走り出した。後ろからいじめっ子の怒鳴り声が聞こえる。本当なら荷物を捨てて逃げた方が速いが、パニック状態でそこまで頭は回っていなかった。
3人の中学生が駅を走り回っている奇妙な鬼ごっこに巻き込まれないように、人々は無視をするのだった。いじめっ子が大柄だったため、人の間を縫って逃げる小柄な2人の後を目で追うのが精一杯だった。
……
3番線の電車が来ても、3人の中学生は止まらずに走り回った。そして電車のドアがギリギリ閉まりそうになると、少女はピョンと電車の中に飛び込んだ。菊池も後を追う。彼が乗った途端、電車のドアが静かに閉まった。2人が肩で呼吸をしていると、ドアの方で、バンッ っと何かがぶつかる音がした。まるでマンガのワンシーンように いじめっ子の顔が窓に張り付いていた。衝突したのだろう。顔が真っ赤に晴れ上がり、なんとも言えない無様な姿に少女は笑った。悔しそうに睨むいじめっ子をホームに置いたまま、電車はゆっくりと無慈悲に動き出すのであった。乗れなかったいじめっ子に少女は笑顔で別れの手を振っている。
……
「……助けてくれて、ありがとう」
少年は少女の顔を見ると、静かに呟いた。相当ひどいいじめにあっていたのか、目が少し潤んでいる。
「大したことはしていないよ」
少女は少年に言う。少女は優しそうに笑っているが、何かがおかしい。すると少女は優しい笑みをやめた。代わりにニヤリと不気味に微笑み、少年に言った。
「そういえば、5年ぶりだね。菊池 青葉 くん。」
「……え」
名前を呼ばれた少年の顔が強張り、顔がみるみると真っ青になっていく。それを楽しむかのように少女はしゃべり続ける。
「こんな所で会うなんて思わなかったよ。私の事覚えてる?」
震える声で少年は答えた。さっき走り回ったせいか、突然自分の名前を呼ばれた恐怖か、それとも両方なのか 分からない。しかし、彼の首から冷や汗が流れる。
「……雨柄…刹那」
絞り出すようにか細い声で彼は口を開いた。刹那と呼ばれた少女は一層不気味な笑みを浮かべる…… まるで口裂け女のように笑う少女に少年はゆっくり後ずさりする。しかし、足がすくんで動けない。大声を出そうとしたが、声が出ない。少女は悪魔のように目を光らせ、喋った言葉が少年を恐怖にまた震え上がらせた。
「へぇ〜、覚えててくれたんだ。じゃあ、私をいじめてたことも覚えてるはずだよね?」
「…あの時は、本当に悪かった。今更謝っても済むわけじゃないと思うけど、ごめん。日本を出て行くほど追い詰めてたなんて知らなかったんだ。それに……」
必死に抗議する青葉に刹那は冷たく言った。
「許さない」
「ごめんなさい、ごめんなさい… おまえをいじめた罪は一生消えないけど… 少しでも許してくれるんだったら、なんでもする。俺をいじめてもいいから」
「なんでもする」その言葉が聞きたかった。刹那は心の中で笑った。そしてゆっくりと青葉に目を向けた。まるで虫でも見るように…
「なんでも、ねぇ… 仕返しは確かにしたいけど、それをしたら私もあんたと同罪になる。だから、こうしましょう。今日から2週間、あんたは私に従えばいい。そうすれば許してあげる。」
青葉は瞳を輝かせてすぐに頷いた。
それが地獄の片道切符だとは知らずに…
読んでくださりありがとうございました。次回は菊池くん目線でストーリーを進めていこうと思います!