クラスメイト達が異世界に勇者召喚されたけど1人だけ最強チート能力は貰いながらも取り残されるやつ
やれやれ、いきなり教室の床に輝く妙な紋様が浮かんだかと思ったら次の瞬間には教室にいた奴が俺を除いて全員消えちまいやがった。きっと異世界に勇者召喚でもされたんだろう。いわゆる主人公席と呼ばれる窓側最後尾の席にいた俺はどうやら範囲外にいたってことらしい。やれやれまったくやれやれだ。
そして他の奴らが消えたのと同時に妙な感じもしている。何だか体の奥底から力が湧いてくる感じがするし、その力をどう扱えばいいのかも歩いたり呼吸したりするくらい自然なレベルで分かってしまう。どうやら召喚特典であるはずのチート能力を俺も手に入れたってことらしい。こんな強大すぎる力を平和な日本でいつ使えっていうんだ。やれやれまったくやれやれだ。
そして勇者召喚という名の集団失踪事件から1年半が過ぎた。平和な日本じゃチート能力を使う機会はなかったけど、何故か勝手に強化や進化を続けているせいで今では俺の戦闘力は53万だ。一般人はたったの5しかないから俺がどれだけ強すぎるのかが分かる。だから俺の力をばれないように加減して生活するのが大変だ。やれやれまったくやれやれだ。
そんな俺も今日から高2になる。ラノベなんかならここから物語が始まるのかもしれないが、やれやれ面倒事は勘弁して欲しいものだ。やれやれまったくやれやれだ。
けど俺のそんな願いは叶わないらしい。今日から1年間過ごす教室の自分の席に座り、何となく窓の外を見た時にそれを理解させられた。空には割れたような孔、そしてその孔からはドラゴンと呼ぶべき爬虫類系の巨大な怪物が這い出てきていた。その怪物が雄叫びを上げたことで他の奴らもその存在に気付いたようだ。
やれやれ、どうやらついに俺のチート能力を解禁する時が来ちまったらしい。俺のチート能力の前ではドラゴンもただのトカゲと変わらないだろう。目立つのは柄じゃないんだが、ああもうるさくされては面倒だ。やれやれまったくやれやれだ。
とりあえず飛行スキルで近付いて挨拶代わりにワンパンかますか――
〔落ち着くのです人の子よ。我は地球の神。あなた達に外界からの侵略者達と戦う力を授けましょう〕
突然そんな声が脳内に響いたかと思いきや、あの勇者召喚という名の集団失踪事件の時に見たものと似て非なる、輝く妙な紋様が教室の床どころか地平線の果てまで広がっていた。俺の千里眼スキルでも端が見えないとは何て大きさだ。
まぁいい。今さらいらないだろうけど力を貰えるなら貰っておいて損はないだろうからな。今以上に強くなってどうしろって言うんだ。やれやれまったくやれやれだ。
〔おや? 1人だけ既にどこぞの世界の下級神に力を授けられているせいで上手く我が力を授けられなかったようですが、まぁ良いでしょう。さぁ人の子よ、その力をもって戦うのです〕
……やれやれ、どうやらこんな時に主人公特有の状態異常:難聴にかかっちまっらしい。何か不安になるようなことを言われた気がするけど気のせいに違いない。やれやれまったくやれやれだ。
『俺の戦闘力は1億2000万だってよ! この強さならあのドラゴンっぽい化物が相手でも楽勝だぜ!』
『油断しちゃ駄目だよ! 僕の戦闘力は8000万だけど解析能力持ちだから分かるんだ! あのドラゴンの戦闘力は1億3500万だから1人じゃ危ない! 力を合わせるんだ!』
『ならここは戦闘力1億5200万の私が先陣を切るわ! サポートよろしく!』
……はぁ?
『うわぁーっ!? 1年半ぶりに日本に帰ってきたと思ったらこっちにもモンスターがいるなんて!? どうなってるんだいったい!?』
『この1年半で1000にも満たなかった戦闘力を2000万近くまで上げてようやく戦闘力5000万の魔王を倒したってのに、戦闘力3980万のゴブリンってどういうことだよ!?』
『落ち着くんだ皆! 嘆いている場合じゃない! 幸いゴブリンは3体だ、平均戦闘力4500万の魔王軍四天王が四人同時に攻めてきた時に比べればどうってことないだろう? 僕達の連携を見せてやるんだ!』
『……そうだな。よし、やってやるぜ!』
はぁ?
『うわっゴキ出た!? でも戦闘力9600万の今の俺なら……って嘘だろゴキの方が俺より戦闘力高いの!? どこの星テラフォーミングしてきたんだよ!?』
『いっけーポチ! 戦闘力1億8100万のパワーを見せてやれー!』
俺の戦闘力、低すぎ?
こうして地球最弱の存在として命の危機に怯えながら静かに生き延びようとする俺の悲しい物語が幕を開けた。
なお1年半ちゃんと修行していれば戦闘力6000万くらいにはなれたもよう。