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悪役令嬢が馬鹿王子に冤罪で婚約破棄されたから無実を証明してざまぁするやつ

「公爵令嬢という立場を笠に着てこの数ヶ月間、男爵令嬢に数々の嫌がらせを行ったことは聞いている! そのような者は第三王子である我の婚約者として相応しくない! よって婚約を破棄する!」

 今日は王国の王侯貴族の子は必ず通わなければならない名誉ある学園の卒業式。この王国では学園の卒業をもって成人と認められ、多くの貴族は今日という日を境に婚約から正式に婚姻となります。

 そんな重要な式典にて私の婚約者(元、になるのでしょうか?)である第三王子殿下は何を仰っているのでしょうか?


「彼女は王族に名を連ねることになる者として、ここ半年ほど王宮にて特別な教育を受けていたのだ。学園に顔を出すのも久方ぶりな彼女には、入れ違いとなる時期に編入してきたそこの男爵令嬢に嫌がらせをすることなどできはしない。婚約者でありながらその程度の事も知らぬのか」

 私の疑問に答えるかのように第三王子殿下に反論したのは、王太子であられる愛しの第一王子殿下。

「その嫌がらせとやらも我の手の者達の報告によりそこの男爵令嬢の自作自演であると調べがついている。このような愚行を犯すとは、我が弟ながら不甲斐ない限りだ。此度の愚行、除籍も免れぬものと知れ!」

 何やら私が状況を理解しようとしている間に話が次々進んでいるようです。


 もう第三王子殿下への言葉はないのか、愛しの第一王子殿下は私の下へ歩み寄ると片膝をついて私の手を取りました。

「愛しき人よ。貴女が弟の婚約者となる以前より我が心は貴女のもの。どうか我が妃となってはもらえないだろうか」

「私でよろしければ喜んでお受け致しますわ、愛しの第一王子殿下」


     ~HAPPY END~













「茶番はそれまでにしてもらおう」

 この声は国王陛下?

「貴様に次期国王としての器があるか否か、しかと見定めさせてもらった。国王の名の下に宣言する! 一つ、本日をもって王太子の座は第二王子に移し、第一王子は廃嫡とする! 一つ、第一王子は西方辺境伯令嬢の下に婿入りとし、明日をもって正式に婚姻を結ぶものとする! 一つ、第三王子と公爵令嬢もまた予定通り明日をもって正式に婚姻を結ぶものとする!」

 愛しの第一王子殿下と結ばれるものと思いましたのに、夜会で『売れ残り』と呼ばれる西方辺境伯令嬢と正式に婚姻を……?

「陛下! 何故、何故そのような……!?」

 王太子の座から降ろされた愛しの第一王子殿下が国王陛下に尋ねます。急な事ですので無理もありません。私も驚きのあまり言葉が出ないだけでお尋ねしたい気持ちではあります。


「このような者を王太子としていたとは、国王として不甲斐ない限りである」

 国王陛下は小さくため息をついてから全てをお話しになられました。


「元より此度の一件は貴様の次期国王としての器を見定めるためのもの。第三王子は余の命で動いていたにすぎぬ。そして貴様に次期国王としての器はないという結論に至った。故の廃嫡である」

「我の何が至らぬと仰るのですか!?」

「政務に関しては優秀であった。だが貴様は成人を迎えてなお妃を迎える事なく、跡継ぎを成す事なく今に至る。これは血統を重んじる王族としてあるまじき事である」

「た、確かにその点は重々承知しております。ですから此度公爵令嬢を――!」

「――貴様は公爵家の生まれである王妃の子であるため血が濃くなりすぎる公爵令嬢との婚姻は認められぬと再三具申を棄却してきたはずだが?」

 私の知らぬところでそのような事が。

「にも関わらず公爵令嬢に執着し続け他の婚約者候補を拒絶し続けたためにどれだけの家との関係が悪くなったと思っておる。先の西方辺境伯令嬢は『万が一にも候補者が絶えぬよう』と独り身のまま報われるとも限らぬ王妃教育を受けておったのだぞ」

 あの『売れ残り』令嬢様にそんな裏話がおありとは……!


「そして此度の一件だが、よもや忘れた訳ではあるまい。貴様は先ほど確かに第三王子にこう告げていたな。『その嫌がらせとやらも我の手の者達の報告によりそこの男爵令嬢の自作自演であると調べがついている』と。調べがついていたのであれば、何故先んじて第三王子に証拠と共に事実を告げるなり男爵令嬢の身柄を拘束するなり手を打たなかった?」

「それは……」

「大方先の茶番の通り、第三王子の失脚により婚約者不在となった公爵令嬢を己がものとすべくあえて伏せていたのであろう。継承権の低い第三王子とはいえ王族が不祥事を起こせば求心力が落ち、国政に大いに影響が出るにも関わらず。ただ己が欲のままに」

「そ、それは今の状況も同じではありませんか!?」

「問題ない。都合のよい事に今年は学園創立百周年となる記念すべき年。事前に『今年は盛大に祝うべく明日改めて重大な発表と共に式典を開く』と他国や対立派閥の関係者には伝えている。本日この場にいる者達であれば影響は最小限で済む」

 久方ぶりすぎて今まで失念しておりましたが、言われてみれば確かに見かけない方や見知らぬ方がいるように思えます。不自然に少なくならないよう卒業生に扮した方がいらっしゃるのでしょう。




 その後もう少しだけ騒動はありましたが、とにかくこうして私は愛しの第一王子殿下と結ばれる事はなく第三王子殿下の妃となりました。

よく考えなくても王侯貴族なのに婚約者不在のまま他人の婚約者を狙ってる奴ってヒーロー役としてかなりヤバくね? いわゆる『バカ王子』ポジションの奴がやらかさなかったら暗殺とかしてでも奪おうとしそうな執着っぷりじゃね?

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