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SSSランクパーティーを追放された錬金術師が最強最悪のダンジョンマスターになるやつ

「お前のような理屈っぽい奴はこのパーティーに合わん。抜けてくれ」

 殴るしか能のない脳筋の拳闘士であるリーダーがそう言った。

「正直、後ろから出される指示も戦いづらくて仕方なかったんだ」

 斬るしか能のない脳筋の剣士がそう続けた。

「これ以上足を引っ張られるのは迷惑なんですよね」

 攻撃魔法をぶっ放すしか能のない脳筋思考の魔法使いがそう締めくくった。




「ふざけんなよあいつら! 戦うしか能のないお前らの代わりに俺がどれだけ裏方仕事をこなしてきたか分かってないから追放とか馬鹿なマネができんだよ脳筋集団のくせに! 俺抜きでパーティー運営できるわけないんだよ脳筋なんだから! それに俺の強化ポーションの恩恵もすっかり忘れやがって! 泣いて土下座して謝ったって戻らないからなクソがっ!」

 追放から一週間後。俺は一人で森を歩いていた。俺が裏方をしたことでSSSランクにまで上り詰めたパーティーから追放されて、あの街の冒険者達の間で俺の評価は最底辺まで落ちた。そんな俺を新たに仲間に入れるような酔狂なパーティーなんてあるわけなく、一人でこんなところを散策する羽目になっている。

「何で俺がこんな目に……ん?」

 視線の先に美少女が仰向けで行き倒れているのが見えた。なんか縮尺がおかしい気もするけど、とりあえず近づいてみよう。




 あれから半年弱。脳筋パーティーにいた頃とは違い、俺は自分の力を十全に発揮できる最高の環境を満喫していた。

 あの時見つけた行き倒れ美少女はダンジョンフェアリーとかいう存在で、俺は彼女と契約してダンジョンを管理するダンジョンマスターになった。

 俺のダンジョンは従来のダンジョンとは違い、錬金術をフル活用して改造した攻略どころか脱出も不可能な超極悪難易度のダンジョンだ。毒ガスやレーザー光線や赤外線センサーや特殊合金ゴーレムや薬物強化スライムや核融合炉やレールガンや……とにかく俺レベルの錬金術師じゃなければ作れない発明の数々に守られている。

 この半年で古巣と同じSSSランクパーティーだって三つは全滅させた。それでも挑んでくる馬鹿がいるんだからダンジョンマスターも楽なもんだ。


「……ん? あいつら……」

 今度の生贄はまさかの古巣の連中だった。ちょうどいい。お前らが追放した俺の力を思い知らせてやろう。


『いやーようやく噂のダンジョンに来れる資金が溜まったな!』

 俺の錬金術で声を拾われてるとも知らずに能天気なリーダーが叫んでいる。いやあいつはいつでもこんなうるさい声量だったか。

『まさかあいつを追放してからの資金管理があんなに大変だとはな!』

 むしろそのまま解散すると思ってたんだけどな。脳筋のくせによく金の管理ができたもんだ。

『何言ってるんだリーダー! 気づいてしまえば簡単なことだったじゃないか!』

『そうだぜリーダー! 資金管理が大変なら、大変にならないくらい稼げばいいだけだったじゃないか!』

 そこでも脳筋なのかよお前らは!? あいつららしいっちゃらしいけど!


 落ち着け俺。あんな脳筋共に俺のダンジョンが攻略できるわけがない。

 ほらさっそく特殊合金ゴーレムのお出ましだ。

『むっ、攻撃が効かない!?』

『あいつを追放してから強化ポーションがない分パワーが落ちてるからな』

 自覚はあるのか。だからって情けをかける気はないけどな。

『だから気合と根性で二倍のパワーを出すまで! フンヌオラアッ!!』

 馬鹿な、あんなクソ精神論で俺のゴーレムが破壊されただとぉ!?


 いや次は大丈夫だ。薬物強化により戦闘能力はもちろん触れただけで各種状態異常を引き起こす改造スライムなら力技じゃどうにもならない。

『ぐぬおっ、何だこのスライムは!?』

『落ち着けぇい! 今こそ解き放つ時だ! 筋肉式健康法!!』

『ムンッ! よし回復したぜ!』

 何でだよ!?


 つ、次こそいける。レールガン!

『気合!!』


 レーザー光線!

『根性!!』


 核融合炉!

『筋肉!!』

 いやお前は魔法使いだろうが!


「ありえない……何なんだ、何なんだよあいつらは!?」

 俺のダンジョンが謎精神論だけでごり押された。意味が分からない。

『やはり我々には筋肉式ごり押し攻略法が合っているな!』

『細かい作戦は性に合わんからな!』

『彼に抜けてむらったのはお互いのためでしたな!』

 本当に、本当に俺はパーティーにいらなかったって事か……


「ってこんなん納得できるかボケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!」




 ダンジョンコアを破壊された俺のダンジョンは壊滅した。

筋肉最強ネタ。


ダンジョンは攻略されるためにある。

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