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最強賢者が一〇〇〇年後の未来に転生したら魔法理論とか色々衰退しているやつ

テンプレ展開では


主人公様が目的のために自ら転生する。

 ↓

転生後の時代では魔法理論やら術者の実力やらが前世より劣っている。

 ↓

主人公様が神童・革命児として無双する。


となるけど、果たしてそう上手くいくかな?

 やれやれじゃ。

 最強の魔法使いを目指して努力した前世では周囲との実力差がありすぎて儂とまともに戦える相手がいなかったから全力で戦える強者を求めて転生したというのに、どうやら平和ボケでもしたのかこの時代の魔法は衰退しておるようじゃ。

 前世で『魔法理論を一〇〇〇年先の領域まで発展させた天才賢者』と呼ばれた儂の魔法理論どころか、前世の幼少期に学んだ拙い魔法理論にも劣るレベルの研究がこの時代の最先端とはあまりにも想定外じゃ。これでは前世以上に強者など期待できぬのぅ。


 現世は諦めてまた転生しようかとも思ったが、これではいつになれば全力で戦える強者と巡り合えるか分からぬ。むしろ今以上に衰退するやもしれぬ。それは考えたくもないのぅ。少なくとも前世の儂が転生する前のレベルにまでは魔法理論を発展させてやらねば、来世に期待もできぬわい。


 というわけで魔法理論を発表できる立場を得るために大陸最高峰の魔法学園の入学試験を受けに来たのじゃが、まさか仮にも大陸最高峰と言われておきながらここまでレベルが低いとは思わなかったのじゃ。

 一次試験の筆記は言うに及ばず、二次試験の実技でも儂にとっては児戯に等しい第八階位を披露しただけであれほど騒ぎになるとはのぅ。前世で儂が転生する前の時代であれば現世の儂と同い年の童でも第六階位の魔法を行使していたというのに、この時代では第三階位程度で天才と呼ばれてしまうとは。


 そしてそれ以上に驚かされたのは、大器晩成型で極めるのが難しいとは言え最強最高であるはずの黄金系統の魔力を持つ儂に対して試験管が『ハズレ系統の魔力持ちでなければ……』などと的外れな憐れみを抱いていたことじゃ。確かにこの時代のレベルでは黄金系統の魔力を極められる者など儂以外にいそうもないからハズレ扱いも無理はないのかもしれぬが、第八階位の魔法を扱える儂さえ憐れむとは妙な話じゃ。


 そして最終試験の受験生同士の実戦試験となった。相手はこの時代では最強最高と言われている虹系統の魔力の持ち主。確かに早熟で扱いやすい魔力ではあるが鍛えても第五階位の魔法までしか扱えない、前世では最低最弱という結論に達した魔力じゃ。弱い者いじめは気分が良いものではないが試験である以上は勝たねばならぬ。

 仕方なく試験開始と同時に第一〇階位の魔法を無詠唱で発動させる。これも前世では当たり前の技術じゃったがこの時代では扱う者を見たことがない高等技術となっておるようじゃ。ちょっとしたコツで魔力を身体に馴染ませれば誰でもできるのに嘆かわしい。


 儂が入学したらどのような魔法理論をどのような順番で発表していくのがよいか考えておると、試験相手の坊主がようやく短い詠唱を終えて魔法を発動させたところじゃった。しかしその魔力量からして第一階位程度。その程度では焼け石に水。どうにもならぬ。


 そのはずなのに、儂の第一〇階位の魔法が掻き乱されて無力化された。


 信じがたい光景に反応が遅れてしまい、避けはしたが相手の魔法攻撃が腕を掠める。勝敗は試験管の判定か戦闘不能か降参の三通りでありこの程度では負けにならぬとはいえ前世から数えても珍しい不覚。それが逆に儂の気を引き締める。

 しかし時既に遅く相手の攻撃が掠めた腕から魔力が暴走を始め、儂はわけの分からぬままに体内魔力の暴走により気を失い不合格となった。




 ――後に儂は知ることになる。


 現世において一〇〇年前のこと。一人の鬼才がそれまでの魔法理論を根底から破壊するような魔法を編み出した。その鬼才が最低最弱な虹系統の魔力でも強くなろうと足掻いて編み出したその魔法は、儂が発表した魔法理論の一つを基に考案したという。


 それは魔力系統と魔法使用とノイズに関する理論じゃった。魔力にはノイズと呼ばれる成分が含まれておりその量は魔力系統により決まる。虹系統の魔力にはノイズが多く黄金系統の魔力にはノイズが少ない。ノイズの少ない魔力は扱いが難しい。高階位の魔法はノイズが少ない魔力でなければ使えない。故に虹系統の魔力は早熟だが高階位の魔法が使えず黄金系統の魔力は晩成で高階位の魔法が使える。そんな理論じゃった。


 鬼才はその理論を基に考えた。自分の虹系統の魔力のノイズの影響を相手の魔力に与えて相手の魔法を乱すことはできないかと。そしてその試みは鬼才の想像を遥かに上回るレベルで成功した。儂が最終試験でそうされたように、高階位の魔法の優位性は消え去りさらに無詠唱ができるほど身体に魔力を馴染ませた者は体内魔力にまで影響が出てしまうほどに。


 鬼才の編み出した魔法は発想こそ異端だが技術としては誰でもできるものであり、儂が発展させた方向性での魔法に未来は無くなった。この時代の魔法理論は衰退したのではなく通行止めにより引き返して別の道を探さなければならなくなっただけじゃった。


 こうして前世で最強だった儂は現世で最弱となった。













 面白い! ならばノイズの影響を克服し返り咲くまでじゃ!

 求めていた形とは違うがこのノイズ魔法という強敵に打ち勝ってみせよう!

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