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お兄ちゃん属性ではありません

 滞在していた、コーベ領サンノミの街を囲む壁を外にして、次の町を目指す。


 因みに、「サンノミ」という地名に「ですよ」という意味で語尾に方言らしい「や」を付けて言う人ばかりなのは、土地柄なんだろう。出会う人はみんな「ここはなんていう所ですか」と男女関係なく聞くと「サンノミや」と答えてくれる。なかにはさらに「や」を付けたりするのが理解できない。今度何かを聞くときは女性限定にしよう。


 子供用の乗車用ヘルメットを渡されてきょとんとして見上げてくる子供が、使い方、つまり被り方を知らないのだと気付きカポッとかぶせて顎ひもを調整して締めた。

「バイクに乗るときの作法だ」

「・・・・さほう?」

 "なんとか道"とかではないが、"道"を往く"法"に基づいているから"道往法"・・・・こじつけでも低レベルだから"作法"としよう。うん、そうしよう。


 ひょいと持ち上げ「シートをまたいで」と指示を出しバイクの後部座席に乗せ、自分も乗ろうとしてから足を振り上げかけてこのままでは当たるなと。幼児虐待は避けなければ。


「今回は特別(・・)だぞ。次回から後ろだからな」

 こくんとうなずいたのでタンクとわしの間に来る位置、前にすーとずらしてハンドルのステー部分に捕まらせたが、難のある体勢だしハンドルを切ったりすると少し危なっかしいので、太さが1センチ以上はあるローブをステーの邪魔になりにくい位置に結わえ滑り止め代わりの結び目を数個つくり、簡易な手綱みたいにして握らせた。


「ちょっと伏せててね」

 体越しにハンドルを握り、振り上げた脚でキックペダルを踏み下ろした。

 このメーカーのはエンジンの掛かりが悪いのだが加護のおかげか独特の振動音とともに始動を始めた。


 両腕で左右を夾みカバーをする形で走り出した。


 路面とは裏腹に振動も風の影響もほとんど無い。

 土の司と風の司の加護をオンにしておいた。これまでバイクの醍醐味が失われるので、よほどの悪条件でなければ加護を使っていなかったんだ。


 前に載せるつもりもなかったので子供用のコーグルを用意していなかったから向かい風の影響を軽減させたのはよかったのだが、自分的にはラフに挑むときは、ビシバシ向かい風を斬って進みたかったな。

 後部に児載せ自転車のような安全ベルトとヘッドレスト付きの背もたれがついた椅子を取り付けるといいなとシルエットを想像した。なんか取り締まり対象みたいになっちまう。


 まぁ『尋ね人』の依頼主に会ってこの子を引き渡すまでだ。


 流れていく風景を楽しみながら、母子を追いかけた。

 渡しておくべきか迷っていたら渡し損ねていたのだ。


 すれ違う商隊、追越す旅人に奇異を見る視線を浴びながら、この世界では比較する音もない響で走ることしばし、それらしき後ろ姿の人物が音に気づいたのかこちらに振り向き手を振った。

 離れたあたりに疎らに人が居るようだ。フィナ情報で、あの協力者は、母親のファンクラブみたいなものの精鋭で、親衛隊だとか。どこのお姫さまだよっ。


 母親のフィメは挨拶以降はにこにことして黙ってしまった。

 所見は凛としてるのに喋ったりすると「「残念なポンコツだね」」とフィナと話してたのを根に持ってるみたいだ。

「どしたの」

 何の用だと開口一番、深くフードをかぶったフィナが言う。つれないなぁ。


 表情は見えないが、前の子供も会えて嬉しそうだ。


「ああ、方向がよく似ているし、これを渡しておこうと思ってな」

 わしはコップ入れぐらいの巾着を出した。

「ふむ、ん。なんなん?」

 中からチェーンのついた金属の茶こしボールに似たものを取り出して眼の前でぶらぶらさせてる。ボールの中には細かな模様が刻まれた魔石が入っている。

「何だと思う」

「ヒントは」

「バイクはナニで動くのかな」

「根性で押す」

「そだねー。じゃあ、がむばって根性で押してね」

 わしは巾着ごと奪い返して「じゃな」と母子を後にした。


 はずなんだか。


「誰ぁーれだ」

「ねぇ、お嬢ちゃん。走行中に運転者の目を塞ぐのは安全のためにやめてもらえませんかねぇ」

「大丈夫、先っちょだけだから」

「だぁーかーらー、ゴーグル外して直接眼球ぐりぐりしないでって。気持ち悪いでしょ」

「へーき、ワシ気持ち悪くない。どっちかっていうとカワユイよね」

 かわいいかかわいくないかで言えば、異論はございませんがね。だけどこれは違うでしょうよフィナさん。

「うん、カワイイ・・・・」

 これまで声を出さなかった少女がやっと声を出した。でも、早くコレをやめさせて。でないとアブナイがキケンなのですよ。

「ありがとー、レビアたんのほうがものすっごくカワユイよ」

「えへー、そんなこと無いよ。フィナちゃんだよ」

 突如始まったGT。名前を教えてもらえなかったレビアさんはおとなしくしてるけど、わしの眼球グリグリする力が上がってるみたいなんですけどー。


「あのー、フィナさん?」

「なにお兄ちゃん」

 帰ってきた言葉に背筋がぞっとした。


 お読みいただき、感謝します。


 リアルに妹がいると、"お兄ちゃん"がどんなにアレか。姉とか妹とかいない家庭がうらやましい。さぞかし平和なんだろうなと。わかんないだろーな。

 男兄弟はアシでもサイフでもありませんから。ましてや執事でもございません。

 ご友人からの電話に「お嬢様ー、お電話でございます」とやったのは反省してますから。許せ。いや許してください。


事務連絡:MHW HR14で足踏みしています。


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