希望は気ままな旅がしたいだけです
ほんわか暖かい日差しの下、その晴れやかな広野にバイクを駆る。
直接肌に風を感じてるわけじゃないが、フェイスガードやメッシュのシャツを通してさわやかな風の刺激が心地よい。
異世界と聞いていたが、見る限り日本と変わんない。しかしだ。どこにも電線もソーラーパネルもコンビニもない。道といえるモノすら有るのか疑わしいぞ。
ゴーグル内のレンズに周辺マップを映し出すと目的の方向を定めて、進行方向を補正する。
さてお取り寄せを少しだけ披露しておこう。
バイクはレトロな排ガス規制などが無かった時代の代物で、メーター周りもデジタルな液晶じゃなく実際に針が動くタイプだ。前後のフェンダーは白、タンクも白地にデカール、シートは青。タイヤのリムがマッドゴールドでサスカバーが黄色。ハンドルのグリップには白いカバーがついている。リアサスは初期のモノサス。エンジンは低速時のトルクを期待してこれもDOHCの250。そのうち125ぐらいのツーストもねだろうっと。
ウエアは環境に合わせたメッシュのシャツにメッシュのグローブを取り寄せた。攻撃的なツーリングの気分じゃなくて、ゆっくりと旅したい。ボッチ・・・もといソロ活動が基本だからだ。
この世界は出典の異なる作品を参考に継ぎ接ぎの状態で、旅へ出るに辺り、現在進行形で調整しているナナと名乗った存在からも、いくつか便宜をもらっている。
この世界で"六大精霊"どもは、相手の出典によって司るものも呼称も変わるという、なんともややこしい存在だ。"女神"だったり"精霊"だったり。『光・闇・火・風・水・土』が『聖・魔・熱量・空間・液状・固体』のセットになったりとかな。他にもイロイロ組み合わせがあるらしいが全部聞く耳を持たない。だからナニってんだ、わしはただの人間だぞ。
土の司から走行の足場を確保する、風の司からいつでもどこでも呼吸が可能、自分のスキルとしてアイテムボックスと別にマジックストレージとしてリュックなどだ。あと世界共通の通貨を路銀としてもらった。他には、『困らない程度のステータス』。特に魔力って夢があるよな。使い方はよく分かんないけど。
ソウソウ キュウユノモンダイ ・・・・・ 魔力を灌ぐと、ハイオクガソリンを生み出す触媒のような石をいくつかもらったので、給油所を探しにあっちこっちしないでよくなった。そもそも注油所なんて有るのか分からないがな。
草原だったり広野であったり、走破にまだ支障はない。
太陽の位置が変わらない気がする。そして遠目にチラチラと見える遠景は地平線じゃない。なんか蜃気楼みたいにクイッとせり上がって村とかが見えるがどおなってんだ。
おおそうだ、ナナと通話できるの忘れてた。
『あー。来来軒さんですか、三丁目の田中ですけどうちのはマダすかー』
『今でました』
『ホントに』
『たった今ですから』
『注文してなかったのに』
『はい出ました』
なるほど、わしを巻き込んだ事故を隠すために惑星の表面から内側に世界を再構築したのか。時間経過で明暗する太陽は絶えず頭上にある。時間がわかりにくいぞ。こりゃ陽の昇る方向"東"とか沈む"西"の扱いがどうなるんだ?
クズなゴミどもだ。
見えてきた進行方向にある村には、雑貨、宿、食事の出来るところはあるが冒険者ギルドはあるが登録が出来ないので、町とかのもう少し大きなギルドへ行く必要があるので時間はかかるが方向を変えた。
はっきりと視認できる距離まで村へ近づいていたので、そこから伸びるのが街への街道なのだろう。
人と出会わない道無き道をすすんでいたので、寂しいとかでなく方針転換だ。
作られた世界とはいっても山地とか起伏はあるようで、アップダウンの道とか樹を打ち払っただけの森の中を進む道だとか全体に人口が少ないのだろう。人と会わなすぎる。
厭てきた頃、広い別な街道と合流すると併せて道幅も大きくなった。どうやら大きな街と接続してるんだろう。
確かに旅人の姿を見つけたりした。護衛とかがついていないので、リスクは低いのだろう。
聞き慣れないだろうエキゾーストに驚く旅人を大きく緩いカーブで迂回したが、腰を抜かしていた。
『まいど、来来軒ですがどんぶり回収に行っても大丈夫ですか』
『ども、30分ほど待ってもらえれば洗って返せますが』
『洗わなくてイイですから、10分後ぐらいに取りに伺わせます』
『はーい、それじゃそーゆーことでよろしく』
緊急情報が伝えられた。
ここから10分ほど進んだ辺りで商隊が盗賊に襲われているので注意しろだ。
助けるにしろ、見捨てるにしろ、関わるのはどうかな。あっしには関わりのなんことでござんす。
遠目にチラッとだけ見て遠回りしよーっと。安全第一。触らぬ神に祟りなしって言うし・・・・・いや、あっちから来ちゃった場合はどうすんのよ。突然神とやらにコロされた σ(-_-;)
少し小高くなった坂の先、下り坂の底で幾つかの荷馬車と周囲で争う姿があるが多勢に無勢で押されている側が商隊なのだろう。ほぼ壊滅状態だな。急いでこなくて正解だったな。
後は見つからないように先へ進もう。大きく迂回することにする。
!
引き返そうとした頃、戦局も終わるタイミングで駆けつけるお節介者が一人いたようだ。
バカだねー。たった一人でって、なんかちっこいのも付いている。
女か・・・・・親子でバカか。コテンパンで済めばいいがな。
あっ、わしはもっとバカだ。エンジンを吹かして応援に行く加速する σ(^_^;)
お読みいただき、感謝します。
気になることがあっても、スルーですよ。いいですね。つっこんだらマケです。
あまり重要なとこじゃないなと思って死んじゃって、生き返った下りはまだ出す予定はありません。本人はナナに聞いて知っています。