虎の威を借る小物
ちょっだけ、ロックとレビアがバイク旅をしている一場面。少し先のmtoWに入れようかともね。
「おおっ アレがそうじゃの」
「ねえレビアさんや、後ろで飛び跳ねないでくれませんかねぇー」
わしは走行中のバイクの後部座席に立って前方を指さすロリばばあに言った。
「ああっレディに対してよからぬ事を考えてるなっ。口に出したらどうなるか解っておるのじゃろうのっ」
「はいはい、解ってますよ」
「はいは一回じゃ」
「解ってる」
「ん。ならよいのじゃ」
「ねえ、レビアさんや。その語尾って、またナナ○姉えの秘蔵書からですかね」
「違うのじゃ。違うのじゃ。わらわは昔から変わらぬのじゃ」
後ろでシートの上に立つレビアは尚もジャンプを繰り返すので、ハンドルを広めに握り直して耐えた。
瘴気が感じられ樹の精霊がざわめく大きな森に隣接する。
「ヴァジュラ隊に要請。一キュウコ下から、ワリトッコはツーマンセルで森を囲み先行調査。トッコはその後方支援。続いてサンコ、ゴコ。ナナコは周辺を囲んだままで中継と警戒に当たってくれ」
一呼吸入れる。
「キュウコレイはサテライトに近辺の情報を照会。キュウコとナナコレイは情報を纏めて白曼荼羅へ投射。ゴコレイはレビアの警護に当たってくれ」
自分もついて行きたそうにムッとするレビアにここでお茶しながら待ってるように言ってわしは森の中へと足を踏み入れた。
集まってきた情報からは突出した異常個体もいないが、中規模のゴブリンの集落が一つあるだけだった。
近くの見回りをしているらしいゴブリンへ導いてもらう。
接近してから認識阻害を解き姿を現せると・・・・・友好的に集落に案内してもらえることになった。傷とか残ってないよ。ちゃんと回復させたからね。体はだけど。心もなんら支障はないよなと聞いても『なにもない』と返事が返ってきたしね。たださ、武器とかへし折れちゃってるのは不幸な事故があっただけだよ。うん、ノープロブレム。
集落の入口でちょっとした誤解でけが人が出たけど、心の大きなわしは回復する親切さをアピールしたのさ。
広場に行くと集落の総出なのか武装したゴブリン達が遠巻きにわしを取り囲んだ。中にドワーフとかオークが混じってる。
長い杖を突く老いたゴブリンの個体が出てきた。他のゴブリンより少しだけ体格が大きく魔力も多そうだ。
「あんたが族長か」
「いかにも、オレが族長だ。ヒトよ、ナニしに来た」
「樹の精霊が騒いでいたからな」
「オマエごときが」
「で、何があったんだ」
「ヒトよ、なれなれしいぞ。」
「はあーーー?」
「オレはかの英雄〝鉄騎の雷電〟と兄弟分だぞ」
「なんだとぉ」
「噂に聞いておろう。昇竜炎のゲハルトだ」
「知らねえな。しかしそのミミの形はゲンジ翁の縁者筋だろ」
「ふんっオレの二つ名は知らないようだが、じじぃの名前は知っていたようだな」
「しわが深くて隠れてるがそのこめかみの傷は『脱糞ロケットのハゲ』だな」
「違う。もう一度言うぞ。〝鉄騎の雷電〟と兄弟分の昇竜炎のゲハルトだ。闘って負傷させたこともあるのだぞ」
杖をわしに向けて魔法を今にも撃つ構えを見せた。
ぷちっ。
「あいかわらずたなっ!」
「っ、痛てデェーー」
自称長老の顔面を片手で掴むとミシッと何かが壊れかけている感触を覚えた。まぁナニをしているかよーく解ってんだけどね。
殺気を込めた目でにらむと一度は下げていたが取り囲んでいた男達が武器をさっと上げてわしを狙うように構えなおした。
「殺る気なら遠慮はしないぞ」
「ふん、ヒトごときに・・・・」
「ところでハゲの幼なじみだったビビは息災か?」
「えっ、どおしてビビを知っている」
わしはアイアンクローを掛けているのとは反対の手を上に向け指先から放電して次に備えた。
睨みをきかせていると脇を若いゴブリンに支えられて男達を割って老婆が近づいて来る。見ると片足の膝下が無く、瞳も濁っている。
喉から出る声は耳障りなしわがれた音だった。しかし心が懐かしいと感じる。
「お懐かしゅうごさいます。今生の別れと思っておりました間際にこうしてお会いできるとは」
「おっ・・・、ビビアンか。その姿はどおしたんだ」
わしはビビアンから、詳しく話を聞くことにした。
◇
ゲハがわしと兄弟分というのはホラで、この世界に来て間もない頃ゲハの祖父ゲンジに世話になっり、その九男でゲハの父ヨシツネと兄弟分だった。結婚し立てだが、出産から物心つくまでが早いゴブリンで滞在していると懐かれてしまったガキの一体。ペット感覚だったよな。
ゲハと闘って負傷したことは無く、まだゲハがガキだった時分寝ぼけたゲハがわしの指先を雌の乳首と勘違いして甘噛みしてきたから電撃を見舞ってやったときに反動でガリッと強めに噛まれて歯形が残った程度のことだ。このとき脱糞しながら一メートル以上飛び上がったから『脱糞ロケットのハゲ』と同年代の者達にからかわれていた。
ビビアンはゲハと幼なじみで子供の頃からお互いを憎からず思っていたが、ずっとどちらも言い出せずにいたようだ。わしが群を離れてから番いとなったようだ。
この集落はゲンジの死後、ゲハの父ヨシツネはゲンジの三男ヨリトモに濡れ衣を着せられて討たれ、ゲハとビビが親しい仲間と群から落ち延びて作った。今ではゲハとビビの子供はもとより孫~玄孫までいる。がんばったんだねぇ。
風の噂でゲンジの群を引き継いだヨリトモは兄弟達をあの手この手で討った後、あつさり嫁の群に吸収されたそうで、最近名を上げ群の二番手であるアシカガ氏族で族長のタカウジが頭角を現しているとか。まぁこの話はヨシモトとかナオトラとか出してくると長くなるのでやめにしてと。
瘴気が漂うのは少し離れたところの自然洞窟から最近になって流れてきているのだ。
普通の自然洞窟は瘴気の発生源にはならないが、深層に瘴気が溜まると洞窟がダンジョン化することがあるというのでビビが手下を連れて、深層を目指していると瘴気で凶暴化した魔物に襲われ手下を逃がすために殿となって闘ったが辛勝で足を失った。かろうじて脱出するも吸い込んでしまった瘴気により体は蝕まれていき視力を失ってしまった。
◆
「レビアーーーー! エリクサー持ってきて」
知性もありコミュニケーション能力を持つ種族はエルフ、ドワーフ、ゴブリン、オークであろうとも〝人間〟のひとつとして捉えるのが「聖女教会」で、ヒトを◎人として以外を亜人として蔑む選民思想の顕著なのが「聖者教会」をはじめとしたおおくの既存教団。
人間ってコミュニケーションする人のことですからね。
とするとヒキゴモリ気味のσ(^^;)って・・・・あははは、考えないことが仕様。
〝◎人〟を〝批人〟としようか適当な当て字に、苦慮してます。