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ずるい人

作者: ぜらにうむ

「…ドキドキしすぎて、死んじゃいそう。」




蚊の鳴くような、小さな声が自分から出た。




私はいったい今までの人生の中で、何度男性と間近で見つめあってきたのだろう?


全く恥ずかしがる様子もない彼は、この行為に


“特別”


…を感じてくれてはいるのだろうか?




彼は私の頬を両手で包み込み、私の睫毛に親指でそっと触れた。




私の頬が熱く、ドキンドキンと胸が上下に動いているのがわかる。




息を吸うのさえ、精一杯だ。




しかし、私は彼に見つめられたまま石のように動けないでいる。




目だけが、彼から逃れようと必死に泳ぐ。どこか変な所はないだろうか?




こんなにまじまじと観察されてしまえば、きっと見て欲しくないような場所や、私でも気が付かない欠点があるはずだ。



そんな所まで、彼に見られたくない。




それを見られる事で、彼に幻滅されるのも嫌だ。




彼はそんな私の気持ちをわかった上で、こうしているのだ。



「全部見せて。」




…ずるい人だ。




彼は、自分の全てを見せてくれない。




なのに、私には全てを見せてくれと言う。




「僕から逃げないで。」




…ずるい人だ。




私はもうとっくにあなたからは逃げられない。




「すき。」




彼の高い鼻が、私のぺちゃんこな鼻にくっついた。




…ずるい人だ。




私の全てを手に入れたくせに。


それでも満足せずに、まだ新しい私を探し求めている。




「私も…す、」




“き”の言葉は、待ち望んだ彼の柔らかな唇に吸い込まれて、優しく消えていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  男性は幼い頃に大きな傷を負ったのでしょうか? [一言]  愛情が大きくなりすぎなければいいのですが・・・・・・。
2016/05/14 13:58 退会済み
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