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とぶ、変わる、世界。  作者: 河合
東京編
2/8

わーるどいずのっとわんだほー

 世界は小さくて狭い。それは僕が世界を知らないからなのか、それとも本当に小さいくて狭いのか。

個人的には後者のほうがいい。そのほうが安心するんだ、僕の知っていることだけが世界なんだって思えるから。

でもどこかで期待しているんだ、こんなにつまらなくて退屈なだけが世界じゃないってことを。世界はもっと輝いているんだってことを。


             ※        ※        ※


 朝の5時。眠い目をこすりながらカーテンを開ける。ガラス越しに見た外はまだ薄暗い。

当然ながら母さんはまだ寝ている。昨日も夜遅くに帰ってきたんだろう。仕事の都合仕方ないらしいけどそれももう慣れた。昔からそうだから。

だからご飯の支度は僕の仕事。これももう慣れた。

エプロンをつけながら朝の献立を考える。昨日は焼き魚だったから今日は目玉焼きにしよう。そんなことを考えながら手だけは動かしていく。

軽く熱したフライパンにたまごを割り、落とす。

「おっ。めずらしいな」

今日の卵は双子だ。なんだかいいことがありそうだ。いいことといっても具体的なことなんてわからない。いつもより世界がほんの少し面白ければそれは僕にとっていいことなんだ。

大きく変わるのは不安だから変わるのは少しだけでいい。ほんの少しだけ。

なんて考えているうちに卵が焼ける。僕は固め、母さんは半熟だ。

できた目玉焼きをお皿にのせ、ついでに刻んだキャベツとトマトも。その横に焼いた食パンも。

部屋中にパンの焼けたいい匂いが広がる。この狭いマンションの一室の中に匂いが広がるのは一瞬だ。

「あさ、ごはん?今日は、パン?」

パンの匂いにつられて出てくるゾンビ。もとい、母さん。

「おはよう、母さん。早く顔洗って椅子座ってご飯食べてよ。会社、遅れるよ。」

「ふぁーい」

そんな何語かもわからない返事をしながら母さんは洗面所に入っていく。これもいつものやり取り、いつもの通り。

 テレビをつけつつ席に着く。テレビの中ではいつものおっさんが話している。毎度思うのだがこのおっさんはセクハラしそうな顔をしている。そんな気がする。

「おっまたせー!さあさあ今日の朝ごはんはなっにかな~♪」

そんなことを言いながら、母さんは食卓に着く。

・・・毎朝思うけど、この人はテンションの上がり方がおかしい。なぜ顔を洗っただけでこんなにもテンションが変わるのだろうか。自分の母ながら不思議に思う。

「おお~、今日はパンに目玉焼きか~!しかも双子!なんかいいことありそうだわっ♪」

「一人で喋ってないで早く食べてよ。僕も学校あるんだから」

「はいは~い。それでは、いただきまーす!」

目玉焼きにかぶりつく。

「んん~!美味しわ!ちゃんと半熟!わかってるわねいつき~♪」

「当たり前でしょ。何年母さんの子供やってると思ってんのさ」

「そっかー♪あはははははっ♪」

「ほら、笑ってないで早く食べてよ」

「はいはーい」

ほんとにテンション高い・・・もう慣れたけど。

 

 キュッキュッと。よし、洗い物完了だ。

そろそろ学校に行く時間だ。いつもどおり。

「母さん!じゃあ僕は学校に行くから、会社行く時は戸締りちゃんとしておいてね!」

「はいはい、わかってるわよー」

「ちゃんとだからね!じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃ~い」

さて、行こうかな。今日も同じ一日の始まりだ。




朝はそんな事を思っていた。まさか今日が僕の世界が変わる始まりの日だなんてちっとも思わないで。


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