大好きな貴女の、嫌いなところ
あなたの笑った顔が好き。
笑って、と俺が言うと、あなたは少し顔をしかめて、そしてぎこちなく笑みを浮かべる。
その笑顔がとても不格好で、だけどそんな顔も好き。
笑ってと言われたから、仕方なく笑う、そんな仕草すらも好きで好きでしょうがないんだ。
あなたの怒った顔が好き。
ねえ、知っていた? 俺がわざとあなたに怒られるようなことをしてるってこと。
複数の女の子たちと遊んでいるところを見かけて、あとで「いい加減に一人に絞ったら?」と少し怒ったように言うあなた。
あなたにそう言われたくて、たくさんの女の子と遊んでいるんだよ。
彼女たちには申し訳ないとは思っているけどね。
あなたの泣き顔が好き。
哀しい話の映画を観て、あなたはよく泣く。
自分の事じゃないのに、まるで自分のことのように泣くあなた。
その涙を拭ってあげるのが好きなんだ。あなたの涙を拭ってあげるのが昔から俺の役目。
あなたは俺より年上なのに、俺より泣き虫だから。
だけど知っているんだ。泣けない俺の替わりに泣いてくれているってこと。
そんなあなたが愛おしくて仕方ないんだ。
あなたの困った顔が好き。
「俺のこと好き?」って聞くと、困った顔をしてちょっと間をあけて「……好き」と小さく答えるあなた。
恥ずかしがっている姿も、小さく好きだというその声も、全部全部好きなんだ。
あなたを困らせたくて意地悪なことを言ってしまう俺は子供っぽいかな?
だけど、許してほしいんだ。あなたを俺でいっぱいにしたいから。
俺は、あなたが好き。大好きだ。
でも、そんなあなたにも唯一嫌いなところがある。
それはね、俺の前で泣くのを堪えるところ。俺に内緒で、泣いているところ。
知っているんだ。あなたがまだあの人のことが好きだってこと。
あの人を忘れられなくて、俺の知らないところで泣いていること。
お似合いの二人だった。二人の姿に憧れて、でも嫉妬していた。
だって俺はあなたが好きだったから。
だけど二人に幸せになってほしいとも思っていたんだよ。本当なんだ。
だから、二人が別れたと聞いた時は驚いたんだ。
あなたは笑って俺に教えてくれたけれど、涙の跡が残っていたことに気付いちゃったんだ。
そのことに、胸が痛くなった。
だけど、ね。
俺は浅ましいことに、別れたと聞いて心の奥で本当は喜んでいたんだ。
ねえ、俺って嫌なやつだね。二人に幸せになってほしいなんて願っていながら、別れたら喜ぶなんて、なんて嫌なやつなんだろう。
こんな俺だから、あなたは俺に振り向いてくれないんだろうね。
でも、いいんだ。
あなたの俺に対する“好き”が、弟を想うような思いと同じでも。
いつかその“好き”を俺と同じ“好き”にしてみせるよ。
俺の前で、あの人を想って泣いていいんだよ。
その涙を俺が拭いてあげる。そして、俺があなたを笑顔にさせてみせるよ。
だから、俺の前で無理して笑わないで。
無理して笑うあなたが嫌い。
無理して年上ぶって、泣くのを我慢するあなたが嫌い。
俺は頼りにならないかな? これでも、あなたに似合う男になろうと努力してるんだよ。
精一杯背伸びして、あなたを甘えさせてあげたいんだ。
女の子と遊ぶのもやめたよ。勉強も頑張っているよ。
あなたは俺の弾くバイオリンが好きだって言うから、だからバイオリンも頑張って練習しているんだ。
もっと上手に弾けるようになったらあなたに聴かせてあげたい。
俺の精一杯の“大好き”を込めて弾くから。
そうしたら、あなたの得意な歌を聞かせてね?
俺、あなたの歌も大好きなんだ。
ねえ、いつになったら俺を見てくれる?
いつもあなたの傍にいるよ。
あの人のことを忘れさせてみせるから、だからどうか、俺を見て。
そして、俺に言わせてください。
―――あなたを愛しています、と。