茜音の呟き
茜音は腰まで伸びてしまった赤髪を邪魔そうにたくし上げ、ゴムで雑な団子を作った。首周りの邪魔者を排除した達成感か、酒の入ったコップを大きく傾ける。
「っぷはー!いいねぇこの一杯のために私は生まれてきたようなもんだよ!」
まるで酒飲みのおっさんのようなことを言うが、茜音の豪快な飲みっぷりの犠牲になっているのは部下から送られたワンカップを山のように並べてやっと交換できるような高級酒だ。つまみもなく、礼儀もなく、ただ飲料水の延長上として飲まれていると知ったら部下は泣くことだろう。少なくとも飲まれている高級酒は号泣である。
「さぁ……さてさて」
首を回してパキポキと音を立てながら、茜音はパソコンと向かい合った。丁度その時、パソコンの画面の端が一通のメールが着信を知らせた。
軽く目を通すつもりでメールを開く。すると意外にも、なかなか有益な情報がそこには並んでいた。
一言でいうならば、名家神田の不祥事と、一台の親機の故障である。
「へぇ、これはこれは」
神田家といえば初めての仮想世界の戦争で勇将として活躍して以来、軍の中枢を任されて長い名家である。今までに目立った失敗もなくそろそろ軍のトップに手が届きそうだったというのに、ここて失敗とは。神田当主はなかなか運がない。
だがはっきり言ってそれはどうでもよかった。問題なのは親機の故障の方である。これについてはまだ半信半疑の状態のようだが、茜音は確実に故障したと分かっていた。
なにせ世界の科学を結集しても解明できないオーバーテクノロジーの塊。メンテナンスどころか触ることすら出来ない。それでは故障して当然というものだ。
恐らく日本政府はもうすぐ声明を出すだろう、と茜音は予想する。七人の天才、その技術を受け継ぐ彼らの子孫を何がなんでも探しだそうとするはずだ。あの小さな島国が頼れるのは今や加工貿易と戦争の収益だけなのだから。
「どうしようかな助けてあげようかな……。あっちには鳴もいるし、さすがに可哀相だしなぁ」
メールの内容から目を離し、完全なる上から目線で茜音は思案する。上から目線なのも当たり前だ。なにせ彼女は現在日本が募集しようとしている救世主だ。茜音が日本に来て親機を修理するといえば、日本は靴を舐めてでも懇願するだろう。
茜音はバトルログをこの世に生み出した七人の天才の内の一人、九条亜花音の孫娘。
九条茜音なのだから。
短いので今週は二話投稿




