43 急募!鳥と仲良くなる方法②
ブクマありがとうございます。
嬉しゅう御座います。
三顧の礼という言葉がある。
目上の者が、格下の者に対して、3度も出向いて頼み事をするのを指した言葉だ。
ぬし様はこの半島の支配者であり目上!戦闘力から見ても絶対目上!
ハーピーの方が格下!
それが3日間、毎日出向いて仲間になるようにお願いしているのだけれど…
ハーピー族、話 通 じ な い !
このハーピー族を罠に嵌めたという、当時の人族。
一体どんな話し方をしたのだろう。
天才だよ、絶対その人間天才だよ〜。
敵じゃなければ、今すぐ仲間に勧誘したいぐらいだよ〜。
今日もハーピー族との会話が成立しなかった事に、心折れかけている私。
ヒビならもう入っている、絶対。
「申し訳ありません、ぬし様。
3度もハーピー族に会いに行ってもらって、交渉失敗するなんて」
「気にするな実音よ、奴らが頭悪すぎなのじゃ。
どうする、もう諦めるかの?」
う〜ん、悩む。
このまま打開策が浮かばないまま突撃し続けても、時間の無駄だろうしなぁ。
何か良い手が思い浮かぶまで、ひとまず交渉は置いておこうかな。
「ぬし様、しばらく交渉はお休みします」
「分かったのじゃ。
実音、気に病む事はないぞよ」
ありがとう御座います、ぬし様。
よし、暗い気持ちを吹き飛ばそう。
そうだな〜、具体的には体を動かそう。
久しぶりに剣に打ち込むのもいいかもしれない。
それなら相手は…。
「野郎、ぶっ殺してやるゴブ〜!!」
私の前方から襲い掛かってくる竹槍ゴブリン100匹。
修行のし過ぎか、語尾が変な事になっているが気にしない。
腕の方がどれだけ上がったのか、さて、試させてもらいましょうか。
心配そうな顔でこっちを見ているリザードマンとケンタウロス達。ミノ助もいるよ。
大丈夫大丈夫。今の私にはとっておきの武器がある。
そう、樫王が厳選してくれた木材から削り出した、木刀がある!
「本気でかかってきなさい!」
八相に構えた状態から、ゴブリンに向かって駆け出す私。
血気盛んなゴブリンが突出している。
まだまだ修行が足りないようだ。
「隊列を乱さない!」
突出したゴブリンの竹槍を横に弾き、顔面に一撃。
後続の方によろけていったので、そのまま蹴りを叩き込んで押し込み、さらに隊列を乱す。
ここまで近づいてしまえばこっちのもの。
接近しすぎて竹槍を有効に使えないゴブリンの顔面に、体重を乗せた木刀の柄を叩き込む。
そのゴブリンを背面側の障害物、言うなれば盾として使い、正面のゴブリンの群に突貫。
とにかくすれ違うゴブリン達を叩きのめす。
木刀だけでなく、肘や膝も有効に使う。
気がついたら、ゴブリンの群を突破していた。半数ぐらい叩き伏せたかな?
くるり、と振り返ると腰が引けたゴブリンの姿が。
おかしい、血気溢れる戦闘機械に教育したはずなのに、この戦意の低さはどういう事だ!?
じり…、と足を前に出すと、その分後退するゴブリン達。
1歩、2歩、そのまま駆け出すと、我先にと潰走してしまった。
えぇい、情けない奴らめ、とにかく捕まえて、その性根を叩きのめしてやる!
ゴブリン達の背中を追いかけて駆け出した。
教育係はこの姿を見てどう思っているのか!
リザードマンの顔を確認してみる。
…何?
笑 っ て い る だ と!?
ぞくっ、と背筋に嫌な感覚が走った。
罠だ!
しかしどこから!?
落とし穴?違う、仕掛けている時間はなかった。
それなら罠はあそこだ、そう考え、さっき打ち倒したゴブリンの山に視線を向ける。
死んだふりから奇襲をかけるべく、飛び掛ってきたゴブリンを見つけた。
迎撃、まだ間に合う。
踏み込んでいた左足を軸にして、右側に1回転。
遠心力の乗った木刀で、奇襲ゴブリンを叩き落す!
地面に落ちたゴブリンの頭部にご褒美の一撃。
今のは、良い奇襲だった。褒めてつかわす。
顔をよく見てみると、以前も奇襲攻撃をしてきたゴブリン5号だった。
順調に長所が伸びているようだ。
さて、残りのゴブリンはと視線を向けると、奇襲攻撃で稼いだ時間で、陣形をしっかり組みなおしていた。
見事に鍛えられているようでほっとした。
最初から、これだけ綺麗な陣形を組めていれば、もっと評価は高かったけど、まあ良い。
次はどうやって崩してやろうかな?
「実音さん、お疲れ様でした」
家に帰ってお風呂に入る。
一緒に帰ってきた紫蘭と一緒の入浴だ。
「ゴブリン100人相手で、傷ひとつないなんて。
実音さん、すごい戦闘力ですね!」
「そんな事ないよ。
あのくらいなら、リザードマン族にもできるだろうしね」
ミノタウロスならもっと乱暴に勝てるだろうし、ケンタウロスも速度を活かして勝てるだろう。
私の戦闘力など、まあその程度。慢心してはいけない。
「でも実音さん、リザードマン相手に勝ってましたよね?」
「まあね」
あの後、表情で失敗した教官リザードマンを相手に試合をしてみた。
1本勝負でやってみたが、剣道のルール上では私の楽勝だったのだ。
どうも鱗の硬さに自信を持っているせいで、防御や回避がおろそかなようだ。
全力で面を打ち込んでみたが、傷ひとつ付かなかったので驚いた。
そのくせ、白目を剥いて倒れてしまったので、もっと驚いた。
衝撃は伝わるらしい。
リザードマン族に、鈍器には気をつけるように伝えておかなければ。
目を閉じ、先程の戦闘を思い起こしていると、紫蘭が額に触れてきた。
むぅ、眉間に皺が寄っていたかな。
「難しい顔していますよ。
どうしました?ハーピー族との交渉、うまくいかないんですか?」
「まあね、全然会話にならないのよ。
紫蘭、また私の代わりに交渉に行く?」
「い、いえ、いいです!
私も会話にならないでしょうし」
拒否されてしまった。
まあ本気じゃなかったからいいんだけどね。
「どうしたらハーピー族と話ができるのかなぁ…」
あ〜考え出したら、気分が落ち込んできた。
折角、体を動かして発散してきたというのに。
そう思っていたら、紫蘭に後ろから抱きつかれた。
待った、私にその気はないよ!?
「あんまり思い詰めても良い事はないですよ。
ここは皆と話をして、新しい作戦を考えましょう?
村長とか、ひょっとしたら良い知恵があるかもしれませんよ」
エルフ村の村長か〜。
そういえば、ちょっとご無沙汰だったかなぁ。
村長、年の功…樫王って樹齢何年だったかなぁ。
とりあえず最年長の知り合いに知恵を借りようかな。
え〜っと、え〜っと、あ。
いたよ最年長、この屋敷の同じ階に。
「女神様、ハーピー族と会話する方法知ってる?」
「えぇ、知ってるわよ」
にっこりと微笑む女神様。
そうだよ、こんな所に知識豊富な存在がいたのをすっかり忘れていたよ。
相談を持ちかけた時に見せたうれしそうな顔、罪悪感を刺激されて胸が痛かった。
「そうね〜、教えてあげても良いけれど」
ちらっ、と私が抱えている聖獣の卵に視線を向ける女神様。
結構ヒビが入ってるので、もうすぐ産まれそうだ。
「明日、教えてあげるわね」
何故かもったいぶる女神様だった。
2回目の槍衾崩しの時は、足元に転がっていた道具をうまく活用して突破したとか(例:盾、投擲武器)。




