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01 自称女神との遭遇①

初投稿です。拙い部分も多々あるかと思いますが、生温かい目で見て頂けるとうれしいです。

 9月。高校生の私にとって長いようで短い夏休みが終わり、2学期が始まってから1週間。

 私の所属する弓道部の練習が終わる頃には、もう日が沈み出す時間になっていた。


 先週までは夕方近くとなると、時代劇を見てまったり過ごしていたのに。

 勉強だ〜、委員会だ〜、部活だ〜、と学校が始まっただけでこうも忙しくなるとは。

 あ〜疲れた疲れた、早く帰ろ〜。帰って黄門様の活躍を拝見させて頂こうとこれからの予定を決めつつ、早足で下駄箱に向かう。

 セーラー服のスカートがめくれないギリギリのレベルで足を動かす。

 ここが共学である以上、どこに男子の目があるか分からない。はしたないマネ、ダメ絶対。


 下駄箱に付き、カバンを置き、靴を履き替え、カバンを持とうとしたが、どういう事だろう。

 さっきそこに置いたはずのカバンが無い。


 あれ?と思いつつ辺りを見渡してみるが何もない。

 下駄箱は?他の生徒は?そこに転がっていた上履きはどこにいったのだろうか?

 それどころか色も無い。真っ暗だ。

 秋の日は釣瓶落としと言うが、太陽が落ちたにしては早すぎる。


 落ち着いて、冷静に状況を把握しよう。


 手を上げてみる。うん、手が見える。

 良かった、突然視力を失ったわけではない。


 両腕を伸ばして辺りを探ってみる。何もないようだ。


 足の感触。こちらも何もない。

 床がない、という事は落ちているのだろうか?

 いや、加速感も風圧も感じないし、これは落ちているのではない。

 どうやら宙に浮いているようだ。


 よし分かった。これは夢だ。

 新学期が始まったばかりで頑張りすぎたものだから、疲労で寝てしまったんだな。

 おぉ、私よ、下駄箱で力尽きるとは情けない。


 とはいえ、そこまで頑張った覚えもなく、この程度で倒れるようなやわな鍛え方をしていない私としては、自分で出した結論にいまいち納得できない。

 しかしながら状況はどう考えても夢の中。

 諦めて、素直に認めよう。寝てしまったものは仕方ない。

 起きるまで寝よう。夢の中だけど。

 床はないけど気分的に横になって目を閉じた。


 が、眠れない。

 う〜ん、枕がないとダメか。

 しばらくは諦め悪く寝ようと努力し、じたばたしたものの、いつまで経っても眠れる気配がない。

 夢の中で寝るのは諦めて、夢から目覚める方向に努力しようかな、と思い始めた頃。


「勇者よ、勇者よ聞こえますか?」

 と、声が聞こえてきた。

 違います、人違いです。

 私の名前は龍宮(たつみや) 実音(みお)。勇者なんて名前ではありません。


「勇者よ、突然の事で驚いているでしょう、ですがこれは夢ではありません。」

 ほら、勇者呼ばれているわよ。早く返事してあげなさい。

 いや、さっき周りを見たけど誰もいなかったし、私か。私が呼ばれているのか。


 のそっと、嫌々起き上がっている気配を出しつつ身体を起こし、声のする方を見る。

 そこに見えたのは、


「私は女神。貴方がこれから召還される異世界を管理するものです」

 と言葉を続ける、センスのカケラもない格好をした女だった。


 なんだコレ。

 何でこんなのが女神を名乗っているのだろう。

 その女は、大仏様よりも巨大な身体で、裾が長く派手な色をした装飾過多なドレスを身につけ、その上から金や宝石のついたアクセサリーをこれでもかと盛り付けた、物欲の化身のような姿をしていた。

 頭の上にも金の塔みたいな巨大な冠が乗っているし、本当になんだコレ。


 困惑している私を他所に、自称女神が好き勝手話し出す。

 曰く、私は選ばれた特別な存在であるとの事。

 曰く、これから私が拉致される先の世界には魔物が存在し、私はその魔物共を殲滅するために呼び出されたとの事。

 曰く、私を召還したのは、女神を信奉する女神教という組織。その組織の指示に従い、教育を受け、戦闘技術を身につけろとの事。


 冗談ではない、何故見も知りもしない他人のために、命の奪い合いをしなければならないのだ。

 しかも無理矢理拉致された上でだ。

「イヤです、お断りです、辞退するので帰らせて下さい!」

 と声を張り上げ、全力で拒否の意思を示した。


 それに対し、「おぉ、貴方ならきっとそう言ってくれると思っていました。貴方の協力に感謝致します」等と、嬉しそうな顔をして言ってくる。

 ちょっと、リアクション間違ってるよ!


 その後は自称女神の自画自賛タイム。

「良いですか、この世界の管理者である私こそがこの世界で絶対の存在なのです。

 その私を信奉する女神教は、言うなれば正義の代弁者。

 女神教の導きに従う事、それすなわち女神の導きに従う事。

 貴方は従う事で正しい道を歩めるのです」

 などと胡散臭い事を言ってくる。大丈夫かこの女神?いや、こんなのに管理されている世界も大丈夫なのだろうか?


「だから、イヤだって言ってるの!人を拉致しておいて、勝手な事言わないで!」

「最後に、強大な魔物と戦う貴方に女神の祝福を授けます」

「無視!?」

 相手が女神とはいえ、あまりに失礼な対応に、つい突っ込みを入れてしまった。

 どうしてこうも会話が噛み合わないのだろうか?


「これから先、貴方が心から望んだものを、能力として与えましょう。

どんな能力だとしてもひとつだけです。よく考えて能力を選びなさい」

 帰りたい、帰りたい、戦いとは無関係に生きられる、いつもの日常に帰りたい。

 心から願ってみるが特にコレといって変わった感じはない。

 まさか、私が戦いを望んでいると言いたいの?心外だ。


「願った、願いましたよ!能力くださ〜い!」

 念のため、手を上げ、声に出して主張してみるが返事がない。

 どうやらただのシカトのようだ。


「望むのなら、海を裂き、山をも砕く力を授けましょう。

 或いは、思うがままに魔力を操り、世界の理を自由にできる力を授けましょう。

 世界最速の足、千里の先を見通す目、自由に空を羽ばたく翼。何であろうと構いません。

 全ては貴方の望みのままに」

 と言って微笑む。

 何だろう、女神と会話するには、それ専用の能力でも必要なのだろうか?


「貴方のこれからの旅路に幸あらん事を。

 さあ、それでは新たな世界への扉を開けましょう」

「こら〜!無視するな〜!この偽女神〜!!」

 あんまりな態度に我慢できず、つい乱暴な事を言ってしまう。

 これでも無視してくるんだから相当なもんだ。コイツ、私を何だと思っているのやら。


「せめて何か反応しなさいよ、いいの?そんな態度だと、私は魔物の味方をするわよ!」

 と言ってみるが、これでも反応がない。何やら腕を広げ、胸の前に光の塊を生み出している。

 脅迫には屈しないという事なのだろうか。くっ、これが神の対応というのか!


 この場に弓があれば、絶対に眉間を打ち抜いてやるのに!

 と思ったその時、左手に光が集まり、徐々に弓の形に伸びて行く。

 ぎょっとした私は「違う、これ違う、中止、キャンセル、ノーカン、考え直します」

 と必死に訴える。

 何とか光は散ってくれた。良かった、クーリングオフを受け付けてくれて本当に良かった。

 まだ私は、能力で家に帰る事を諦めていないのだ。


 そうこうする内に、自称女神の作る光は大きさと輝きを増し空間を埋め尽くさんばかりになっている。

 そして光に包まれた私は、あまりの眩しさに目を閉じ。


 次に目を開けた時、異世界に放り出されていた。


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