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第七話

新たに更新したのが久しぶりに感じる。


 


「おいっ、美咲!大丈夫か!?」


 後ろから声を掛けられた。

 誰だろうかと座り込んだまま振り替えるとそこには、住宅街の方から音を聴いて駆けつけたのか息を切らして立っていた雅人だった。


「あっ……雅人。」

「何があったんだ!?デカイ音がしてだけど……ほら立てるか?」


 手を差し出して立つのを手伝ってくれた。まだ足が震えていてまるで産まれたばかりの子鹿の様だったが、なんとか立てた。次に雅人は唯にも同じ様に手を差し出すが唯は未だに腰が抜けたまま。このままでは通行の邪魔になるだろう、と言った雅人は唯を所謂お姫様抱っこをして、取り敢えず道の端の花壇の煉瓦の所に連れていきそこに下ろす。私も震える足を動かして移動する。


「……で、何があったんだ?」


 少し時間を置き私達が落ち着いてきたのを見計らって事情を聞いてきた。




 ***




「……そうか。」


 私は真理があの鉄骨の下敷きになったことを話した。ビー玉の事や白い少女の事は話してない。


「美咲、お前何か隠してるだろ。」

「っ!」

「この前も学校に用事があるみたいだったし、今は何か怯えてるみたいだし……特に東。」


 唯は分かりやすいよね……でもやっぱり雅人は勘が鋭すぎだ。……でも話したくない。


「……この頑固者が。何かあったら頼れよ、いいな?」

「……うん、ありがとう。」


 私の目を見て私が退かないのを知り、しょうがないとでも言うように溜め息を吐いて言う。


「ほら二人とも家まで送ってやる。」


 私と唯は座っていた煉瓦から腰をあげ先を歩き始めた雅人の後に続く。

 数歩歩いたところで雅人が急に振り返る。私達の方を見たと思ったけど雅人の視線は更に後ろを見ていた。


「……、行くぞ。」


 再び歩き出す雅人。少し雅人の行動が気になった私は雅人が見ていた後ろを見る。山積みとなった鉄骨、停まっているパトカーや救急車、消防車。それを囲むように集まる人。先ほどと変わらない光景。しかし、ふと一瞬白い影が見えた気がした。




 ***




 四日目、残り二日。

 真理のあの出来事があってから次の日。私は今日もめげずにオカ研の部室へ。唯は今日は来ない。体調が優れないらしい。


「最近は事故が多いわね、朝早くにもサイレンの音が遠くでしてたわ。」

「そう言えば昨日の鉄骨の事故!旦那がちょうど通りかかってた時に起きたらしくてね女子高生が巻き込まれてたって。それで……」


 家を出て歩く。道端で朝のゴミ捨てをし終えた奥様方が井戸端会議をしていた。聴こえてきた話題は昨日の商店街での事だった。

 私は聴きたくなかったので早足でその場を去る。


 歩いて、部室の前まで来た私はドアを開ける。


「……おはよ。」

「おはよう。……東さんは?」

「体調不良で家に居る。」

「そうだよな。昨日は……その……目の前で見たんだろう?」


 その言葉に私は頷く。そうか、と言って橋本はチョコレートの缶を開ける。私は体を乗り出して中身を見る。

 ……空っぽだった。

 

「昨日、岡村さんの電話があってから確認した。……結果はこの様さ。」

「本当に無いね。」


 ふぅ、と息を吐いて近くにあった椅子に座る。そういえば部室には私と橋本しか居ない。二人はどうしたのだろう?


「登は家に引きこもり始めて、中島さんは昨日連絡が来てバイトがあるって言ってたけど……なんか様子がおかしかった。」


 そう言えば昨日から様子がおかしかったな。そこの窓から遠くを見ていて。


「……二人、いや三人には後で電話で教えるけど、まず岡村さん。」


 新しい事でも分かったのかな?橋本の顔を見て話を促す。


「この地域()から出ない方がいい。」

「どうして?」

「今までの連続事故のあったであろう資料で事故原因を調べてみると街境での交通事故が一番多かったんだ。」

「……もしかして、ここから離れようとして?」

「恐らくね。」


 赤目のビー玉はこの地域でしか伝わってないものだから他の所に行けば助かると考えたのだろう。でも駄目だったということ。他の所に逃げる事は出来そうにない。


「じゃあ、僕は三人に電話するから。」


 そう言って橋本は携帯で電話をかけ始めた。


 暫くして――


「……駄目だ。出ない。」


 橋本は携帯を耳から離して画面を見て呟く。相手は中島。


「バイト中で忙しいんじゃないの?」

「うーん、ちょっとだけ多めにかけたからその内ウザったくなって出るかと思ったんだけど……」


 ……そっと画面を覗いてみる。その履歴にはかけた回数が表示されており、その数二十回。……多すぎだろう。


「最後に留守電入れといたし……大丈夫かな……?」


 携帯を仕舞って一息吐く橋本。


「……じゃあ、もう帰るね。」

「途中まで一緒に行くよ。」


 一段落しこれ以上は何も情報はないみたいなので私は帰ることにした。……未だにひいばぁに話聞けてない。

 今日は遠山も居ないので橋本が途中まで一緒に帰ってくれるそうだ。心強いです。




 ***




 途中まで橋本と一緒に帰り、家にたどり着く。

 家には曾祖母以外出掛けているようでひいばぁに話を聞く絶好のチャンスだ。

 さっそくひいばぁが居る居間へ行く。ひいばぁはテレビを見ていた。


『……続けてニュースを御伝えします。本日未明○○市の交差点で原動付自転車とトラックの衝突事故が有りました。この事故で原動付自転車に乗っていた○○市出身の二十二歳の男性、中島大城さんが病院へ搬送されましたが先程死亡が確認されました。また、トラックに乗っていた運転手からは過度のアルコールが検出されており……』


 ……は?


 私は居間へ入った途端聴こえて来たニュースの内容に思わず立ち止まった。


「えっ?中島……?」


 テレビ画面に映し出された被害者や加害者の名前などのテロップを凝視する。出身地、年齢、名前そのどれもが私の知っている人物と一致していた。



 彼は、中島大城は交通事故で亡くなっていた。



『……そういえば最近○○市では今日を入れて四日間連続で事故が相次いで起きていますね。……瀬川さんははどう思われていますか?』

『そうですね。どの事故でも若者が亡くなっていますから大変嘆かわしいものであると思います。学生の皆様には夏休みも終わりが近づいていますが事故などには今後注意してもらいたいですね。』

『そうですね。……ここで事故現場に中継が繋がりました。』


 ニュースのキャスター達が会話をしていると事故現場の映像が映し出された。


『こちら、事故のあった交差点に来ています。亡くなられた中島さんは配達のアルバイトの仕事中にこの交差点を渡ろうとし……』


 事故現場は確かに街境にもなっている交差点で見通しはかなり良い。トラックの運転手が朝から酒を飲んでいたというのはアレだが、まあこれならただの不幸な事故だと思われる……が、私は見つけた。カメラに映る交差点の端、そこに赤いものがあったのを。


「赤いビー玉……」


 そう小さく呟やいた私の耳に、私と同じ様に小さく呟いた声が聴こえた。



「……また(・・)なのかい。まだ透子ちゃんは(・・・・・・・・)……。」



 え。透子(・・)ちゃん?倉元透子?……まさかっ!?


「ひいばぁ!何か知ってるの!?」


 突然叫んだ私にひいばぁは驚いたようで目をぱちくりさせてテレビから視線を外して私を見る。


「いきなりどうしたんだい、美咲?ビックリしたじゃないか。」

「あっ、ごめんなさい。」


 私は深呼吸して落ち着く。少し唐突過ぎた。まずは順番に。


「……その透子ちゃんってひいばぁの知り合い?」

「透子ちゃんは……そうさね親友だった子さ。」


 だった(・・・)。それは過去形であり……つまり、


「だった。ってことは……」

「あの子は死んでしまったよ、随分昔にね……。」

「そう……あの、透子ちゃんの名字はなんていうの?」


倉元(・・)倉元透子(・・・・)だよ。」


 やっぱりあの少女と同じ名前。赤目のビー玉の白い少女と。

 そして、私は聞いてみる。


「゛セッちゃん゛って……」

「ああ、懐かしい呼び名(・・・)だね……。今はもう、そう呼ぶ人が殆どいないね。」


 ごくりと唾を飲み込む。頭をフル回転させ、


「……゛ひいばぁのニックネーム゛?」

「そうだよ。」


 っ!

 その言葉を聞いた瞬間、前に橋本の話を聞いてた時にずっと引っ掛かってた事が分かった。


「岡村セツ(・・)だからセッちゃん(・・・・・)?」


 そして、私は再び深呼吸をして落ち着かせ、訊ねる。ひいばぁがセッちゃんなら、




「ひいばぁ……八十八年前の赤いビー玉が関わる話、知っていたら教えて。」




 ゛生き残る゛手懸かりは、曾祖母(岡村セツ)が知っている。




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